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【物語は】ETERNAL FANTASIAU:2【続く】

1 : ◆LhXPPQ87OI :2006/11/18(土) 20:06:51
解き放たれた世界は、終わらない物語を紡ぐ

それは人と龍と獣の…果て無く続く闘争の叙情詩


【物語は】ETERNAL FANTASIAU避難所【続く】
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1162818589/ 
参加に関してはこちらで相談をお願いします。

2 : ◆LhXPPQ87OI :2006/11/18(土) 20:15:04
前スレ
【物語は】ETERNAL FANTASIA〜TRPSU【続く】
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1153141583/l50

参加におけるルールや、世界観の詳細はこちらにて確認して下さい。
TRPGまとめサイト
PC:http://verger.sakura.ne.jp/
携帯:http://verger.sakura.ne.jp/top/top.htm

3 : ◆LhXPPQ87OI :2006/11/18(土) 20:16:01
 【ETERNAL FANTASIAU ルール説明】

∇基本的な約束事∇
このスレッドは『リレー小説型なりきりスレッド』です。
自分のキャラだけではなく、他の人のキャラも自在に演出する事が可能です。
それ故にスレッドをよく読み、物語を把握する事が最も重要となりますので注意して下さい。
参加希望の人は本スレ全部(第一部過去ログ含む)に目を通して下さい。
また、全部読めとは言いませんが避難所も軽く読んでおく事も大切だと思います。
以上の約束事を、参加する上での最低条件とします。

∇基本用語∇
・PC…プレイヤーのメインとなるキャラです。トリップの使用が前提条件です。
・NPC…ST(後述)が管理するキャラです。当然、自由に演出する事が可能です。
・ST…物語の進行役となる人物です。NPCを管理したり、様々な演出を用意します。

∇スレッド基本ルール∇
『文の書き方は、なるべく一人称で書く(なりきりである為)』
『PCを死亡させるレスは禁止orスルー』
『PC(NPC)のイメージを、著しく壊す類のレスは禁止orスルー』
『変換受け有り』
『どう書いていいか判らなくなった場合、避難所にてしっかりと相談する』
『最低でも6日に1度はレスを投下する』
『長期間不在となる場合、避難所に事前連絡を徹底する』
『6日を過ぎても投下が無い場合、STによってキャラが管理される(一時的処置)』
『名無しさんの投下は最低3行以上の中〜長文のみ採用する(例外有)』
『避難所でのレスもPCになりきってレスをする(補足参照)』
『名無しによる設定の投下は、それぞれのテンプレを使用して簡潔に纏める』
以上の項目が、このスレッドの基本ルールとなります。必ず守って下さい。

∇ルールの補足∇
基本的にレスアンカーやシングルアンカーは必要ありません。
レスの投下に順番や連投の制限はありませんが、場面的に暗黙のターンが発生するでしょう。
その場合、STが避難所で各PCに相談する事があります。
PCの皆さんはなるべく相談に乗ってあげて下さい。スムーズな進行を維持する為です。
避難所でのレスですが、中の人として発言したい場合は〇〇の中の人と名前を書いて下さい。
名無しさんのネタ振りも、他のTRPGより制限が厳しくなっています。
これは今までの本スレから導き出した結論です。どうかご了承下さい。

4 : ◆LhXPPQ87OI :2006/11/18(土) 20:33:18
このスレッドでは一般の名無しさんからアイディアを広く募集中です。
こんなネタどうかな?って感じのアイディアを、以下テンプレに書いてご応募下さい。
応募宛先↓
【物語は】ETERNAL FANTASIAU避難所【続く】
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1162818589/l50
※応募の際には、名前欄に設定と書いて下さると助かります。

☆街テンプレ
街名:
所属国家:
人口:人
統治形態:
統治者:
軍の有無・規模:
文化水準:
宗教:
気候:
特産物:
街解説:

☆地域テンプレ
地名:
位置:
気候:
危険度:
出現モンスター:
地域解説:
 危険度の目安
A=マジでヤバイ!!
B=・・・・ヤバイ
C=危ないかもしれん
D=普通じゃね?
E=まだまだ余裕
F=安心と安全
+や-によってさらに細かい区分がある

☆モンスターテンプレ
名前:
分類:
危険度:
生息地:
攻撃力:
防御力:
敏捷力:
特殊能力:
モンスター解説:
 攻撃・防御・敏捷の目安
A=ありえNEEEEE!!!
B=やべえな…強い!!
C=うお!強ッ!?
D=普通だな
E=ちょろいなwww
F=うはww楽勝なんですけどwwww

☆文化テンプレ
名前:
分類:
解説:
 魔法、歴史、アイテム(遺産)、等の区分を明確にするために分類の項目を設けました。

5 :アビサル・カセドラル:2006/11/18(土) 21:34:57
レジスタンスの陣を蹂躙してよし、倒されても爆発してよし、の兵器を投入しておいて更に兵力を投下するとは正直思えない。
だけどそれだからこそやる、ともいえる。
だからソーニャさんたちは陣へと先行する。
私がここで術に失敗し、鋼鉄の蛇が爆発を起こせばレジスタンスの陣もろともソーニャさんも死ぬというのに・・・。

磁性反発によってはじき出され、青蛇琴に吸い込まれるように宙を浮く巨大な鋼鉄な蛇。
ぎしぎしと悲鳴を上げる体を無理やり抑えながら見る私にはとてつもなく遅く感じた。
遅々として進まないその空中浮遊もようやく終わりを告げ、青蛇琴に飲み込まれていく。
自分の全長と余り変わりないにもかかわらず、平然と飲み込んでいく姿は異様なものではなるが、心底ほっとした。
気が抜けたせいか、右腕の毛細血管が破裂し、その勢いで体制を崩してしまう。
術が解けてしまうがもうそれでもよかった。
既に目的は果たしたのだから。
空間に開いた穴は見る間に復元されふさがり、周囲と同じ空、夜闇、雪雲がひろがった。

「・・・っつ・・・やった・・・」
縦目仮面をはずして小さく息をついた。被っているときは知識継承使用が可能になる。それは全ての細胞が活性化することを意味する。
大きな術を行使し、衰弱した状態でこれ以上被っているのは危険だ。
大量の汗、衰弱した身体、右腕全体からくる痛み。
だが、まだ太極天球儀は展開したままだ。
「指は動く・・・大丈夫・・・まだ我は動ける・・・。ソーニャさんを助けて、褒めてもらって・・・一杯お肉を食べるんだ・・。」
足下の雪に赤い点を滴らせながら私は陣へ、ソーニャさんを追って進みだす。

6 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/19(日) 01:06:59
さて、北の我が故郷から旅立ち何週間が過ぎたのでしょうか。私と数名のシスターは遠くの町ハイフォードを目指して
おりました。

数週間前の事で御座います、私共の修道院に一組の夫婦が尋ねてまいりました。その夫婦は夫がリザードマン、
妻が人間と言う異種族同士の夫婦で御座いました。他の場所ならとんでもない事と思われるでしょうが、ここは、
愛の女神ラーナ様の祭られている場所、その様な事はいつもの事で御座います。

その日、まだ幼いシスター達は森に食材を取りに、私は幼き頃より育てていただいた別の寺院に稽古に出ていた事が
幸い致しました。

突如、修道院の方から轟音が鳴り響き、煙があがったので御座います。

私共が戻るとそこには瓦礫が散らばるのみで御座いました。その私共の頭の上を黒い暴風が飛び去っていったので
御座います。

私と年長者で幼いシスターのお守りに当たっていたシスター・キリアは修道院の出入りの商隊にお願いし、
ハイフォードのラーナ寺院を頼る事にしたので御座います。


揺られる馬車の中、私共は身を細々としておりました。 商隊がハイフォードでは無く湿地帯に向かっている事も
知らぬままに・・・・・・。

7 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/19(日) 01:08:01
「きゃああああ!!」

幼いシスター達の叫びに私は物思いから現実に呼び戻されました。
見ると商隊の方々が彼女らに刃物を突きつけているではありませんか。

「はははは、これからお前らに商売道具になってもらうからなぁ・・・・・大人しくしろやぁ」
急ぎ彼女たちと商隊の方々の間にシスター・キリアと立ち塞がります。

「これはいったい何のマネでしょうか!?」
シスター・キリアが大声で相手を非難致しますがやはりと言うべきか、相手にされません。
「いやぁ、儲けるにはねぇ、色々方法があってねぇ」
商隊長が手にしたダガーを回しながら答えてきます。
「雌奴隷が欲しいって言う、需要もたえなくてネェ。」
・・・・つまりはこの方々は奴隷商人だったと言う事ですか

なんと言う事でしょうか、よりにもよってラーナ様を御祭りする場所にこの様な輩が出入りしていたとは・・・・・・
愛のあるお仕置きが必要ですね。

私は服についてるフードをもう少しだけ深く被り半歩前に無言で進みでました。

「ああ、大人しくはしねぇってかい?アマのくせに生意気だぜぇ」
「見せしめに斬ってあげなさい」
一人の男が私の前に進み出て私の頬の部分をナイフの腹でぺちぺちと叩きます
「おうおうおうおう、やるってのか?ああ?怪我したくないだろう?」
私は無言でその男の腕を掴んで捻り上げました。
「ぎゃあああ!!いてぇ!!放せ このやろう!!」
そのまま前方に放り投げ蹴飛ばします。私は5人の男に直ぐに取り囲まれる事となりました。



8 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/19(日) 01:08:36
「5対1だ諦めて死ねよ」
隊長・・・いや、賊の頭と言った方が正しいでしょう それが言い放った言葉に反応するが如く賊共が襲い掛かって
参りました。私は無言のまま目の前の相手にタックルを敢行しました。
「うお!!」
体勢を崩した男の両足を掴みそのまま力任せに振り回します。
「うわぁあぁ!!」

「スリダブ流奥義が1つ!!人間風車!!」
そのまま振り回した男を別の男にほおり投げます。巨大な投擲武器となった男はもう一人の男を巻き込み昏倒させます
いきなりの事にあっけに取られている賊の一人に今度は私自信が跳躍して喉元に飛び込みます。
「スリタブ流奥義が1つ!!飛翔十字拳!!」
十字に交差した腕を喉元に叩きつけられた男は苦悶の表情をしながら崩れ落ちました。
「て、てめぇ!!」
残った手下がダガーを振り回してきました。刃物が私の腹部を後ろから突き刺しました。
「きゃあああーーー」
子供たちの悲鳴が聞こえます。ですが私と長年の付き合いのキリアは冷静でした。
「大丈夫、アクアはあの程度では問題御座いません」
その言葉と共に賊のダガーが私の体を服ごと切り裂きました そして私の姿が現れる事となった次第で御座います。

「あ、あああ!?なんだテメェ!?」
私の容姿は、そうですね、一言で言うなら水で出来たデッサン人形と言う所でしょうか、自分がスライムと言う種族だと
知るのには時間はたいしてかかりませんでした。
「申し訳御座いません この様な体ですのでその様な類の攻撃には耐性が御座います」
それだけ言い終わると私は賊の頭付近まで跳躍し、両の足で賊の頭を固定致しました。
「はしたなくて申し訳御座いません、前方大回転衝!!」
振り子の原理で相手を地面に叩きつけ、最後に残った隊長に向き直ります。
「ひ・・・化け物・・・くるな。」
すでに戦意が無くあとずさっている相手にまで争う理由などは御座いません。
「今までありがとう御座いました、あなたに愛の加護を」
後ろを振り向いたその時、
「化け物がぁ!!」
賊の頭が襲い掛かってきたので御座いました。

9 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/19(日) 01:09:15
「・・・・・・哀れ」
振り向き様、刃を避け私は左の腕をくの字に曲げおもいっきり男の体に叩きこみました。
「スリダブ流奥義が1つ、破砕爆弾斧・・・・・どうか悔い改め下さい。」
無言のまま白目をむいて崩れ落ちる賊の頭を後ろに皆様の元へ向かいます。

「はい、着替え」
シスター・キリアに着替えを手渡され、私は急いで着込みました。あまり長くこの姿を晒していると子供達が怯えて
しまうと思いますので。

「遠くに明かりが見えますそこで一泊の宿を求めましょう。」
私達は、リザードマンの集落に向けて進み始めたので御座います。



10 :ルフォン野営地前 ◆9VfoiJpNCo :2006/11/19(日) 05:12:29
点々と、白い画布の上に血のを描きながらアビサルは進む。
少しずつ状態が回復していくのがわかる。冷たく清涼な空気が、今の火照った五体には丁度いい塩梅だった。
……しばらく無理は控えよう。
生まれながらにしてすでに頭の中にあった、星界の力を借りる術。実際に大きなものを呼び出してみて、己の程がよくわかった。
いや、わかってはいたのだが……やっと身に染みて理解できたと言うべきか。
つまりは体感だ。
弱い弱いと思って以上に自分の体は強くなかった。だが、自分の心は思った以上の芯の強さでそれを支えきったのだ。
自然と笑みをガ浮かんでくると同時に、反省と向上の念が脳内を巡る。
もっと効率の良い方法があったのではないか? もっと体に負担をかけず集中することはできなかったのか? もっとソーニャさん達のやりやすいように……。
「……?」
思索しながら進めていた足が、止まる。
いつの間にか前方に佇んでいた小さな人影に気がついたのだ。

本当に、小柄な自分よりもずっと小さい。この人影は1メートルいくつもないのではないか?
「……お嬢さん」
しわがれた声が耳を打つ。
「体の具合はどうかの? 若いとはいえ、か弱い女子の身じゃあ。無理は程々にしておかんとのう」
雪の中、人影の言葉が段々と浸透いくにつれ、姿が鮮明になっていくにつれ、アビサルの鼓動は儚さを増した。
寒風に揺れる三角の耳、丸められた背筋、瞳が隠れるほどに長く垂れたこげ茶色の毛並み、目の前の老人は明らかに人間ではない。
……コボルト?
やはり知識のみでしか知らぬその名に行き当たり、軽く混乱する。
「爺いの好奇心で恐縮じゃが、今のお嬢さんの術について詳しく教えてくれんかの? 発動からずうっと傍で見ておったんじゃが、今一よくわからん。
あんな召喚は初めて見る。まるで星の彼方からやって来たような異質な……ふむ、そうか……星な…星……」
自らの杖に顎を乗せて呟くコボルトの老人に、アビサルは我知らず僅かに後ろに下がった。
自分の性別を言い当てられたのにも驚いたが……最初から見ていたとは……?
義眼の性能にだけは絶対の自信を持っていただけに、あやうく腰を抜かすところだった。

「教えてくれんかのう?」
「お、おおお、黄道聖星術、今呼び出したは青蛇琴という――」
老人が手を挙げて止めるのを見て、言葉を飲み込む。
「ほっほっほ。いや、意外に素直じゃ……こんな天気に立ち話もなんじゃし、も少し落ち着ける場所に行こうかの」
「え――」
この申し出にアピサルが身構えるやいなや、
「!?」
老人の肉球が視界を覆い尽くした。
幻術か、はたまた驚異的な体術のなせる業か? とにかく一瞬で距離を詰められたと思った時にはもう遅い。
「おお、よう出来とる」
次に見たのは、取り外した自分の義足を手にしげしげと眺める老人の姿だった。
……本当に、いつの間に……?
片足になって雪の上に転がるアビサル。意識を失う直前に浮かんだのは、いつも集中のためにイメージする大極天球儀の図柄であった。

まだ、誰かの顔が浮かぶほど、彼女は人を観てはいない。

11 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/11/19(日) 16:42:15
黒騎士とレジーナの2人は物質搬入通路の通風孔から、流通管理倉庫に向かっていた。
「ブルーディが心配だ、無事だろうか…」
「大丈夫よ、仲間が下を張ってるし。見付ければ保護できるわ」
「そうか、すまないな…」
四つん這いで狭い通風孔を進むのは、体格の大きい龍人にとって楽ではない。
2人の会話は次第に途切れていく。追っ手の心配は無くなったものの、問題は山積みのままだ。
今や黒騎士は国家反逆罪で指名手配なのだから。それにガナンを脱出したところで行く宛も無い。
「暗いわねぇ、貴方の無実を晴らさなきゃどうにもならないんだから、気合い入れなさい!」
前を進む黒騎士の尻に容赦無く拳を叩き込むレジーナ。不意に襲う激痛に黒騎士は悶絶した。

―時間は少し前に戻る

「そういえばレジーナ、お前は何時ガナンに戻ってきたんだ?」
黒騎士が治療してもらった腕を回し、具合を確かめながら尋ねる。
「1ヵ月くらい前かな。貴方が聖獣と戦ってたあの日、私もメロメーロに居たのよ」
「なんだと!?」
「あのね…街の人が迅速に避難できたのは誰のおかげだと思ってるの。大変だったんだから」
「ぬぅ……すまない……」
情けなさそうに縮こまる黒騎士を呆れ顔で眺め、レジーナは続けた。
「そりゃ貴方達は外でドンパチやってればいいでしょうけど、市民の安全を考えてほしいわね」
「ぬうぅ……本当にすまない………べぶぁ!?」
レジーナの不意打ちに黒騎士が間抜けな悲鳴を上げた。
「貴方ってば謝ってばっかりね。昔からずっとそう」
「…そう簡単には変わらんよ…お前は相変わらグハァッ!!!」
再び鉄拳が飛ぶ。口は災いの元、まさにその通りであった。

――再び現在

激痛に悶絶する黒騎士が涙ぐんでいるのを無視して、レジーナは耳を澄ませる。
胸元から淡い白の輝きが洩れ、暗い通風孔内を薄く照らす。
レジーナの持つ龍鱗は白。攻撃系のブレスは少ないが、代わりに肉体強化系が充実している。
今使用したのは感覚器官を強化する【鋭覚装身】今の彼女は遠くの音も逃さず聞き取る事が可能だ。
「…まさか敵か?」
黒騎士がそっと涙を拭いて尋ねた。
「…ううん、これは味方よ。さっさと合流しましょ、のんびりは出来ないし」
そう言うと手で『さっさと行け』と言わんばかりにシッシッと黒騎士を急かした。

12 :リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/11/20(月) 17:59:08
「ハハハ、さぁて…月まで飛んでもらうぞゴルァ!!」
ドクンッ!!不気味な躍動。同時にリッツの周囲の景色が波打って揺れる。
そして彼を中心に色彩を失っていく。まるで花が枯れていく様に。“何か”を失っていく!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!」
異音と共にリッツの姿がぼやけ始めた。周囲から完全に命が消え去り、それは更に広がっている。
純粋なエネルギーの塊と化した人影が、やがてその輪郭を顕にする。
禍々しい程の力が渦巻き、辺りを蹂躙して廻る。完全な姿を現した獣が、一際大きく吠えた。

機械仕掛けの大蛇が全ての首を振り上げ、獣に襲い掛かるもその姿は既に無く…
突然大蛇の胴が爆ぜて散った。大爆発をものともせず、獣の猛攻が続く。
次々と首がもぎ取られ、腹綿といえる動力チューブを引き千切られた。
大蛇はなす術無く、嬲り物にされるだけの存在に成り下がる。それほどに獣との差は圧倒的だった。
死に物狂いで地中に潜るが、尾を掴まれ阻まれた。尾を切り離して逃れた瞬間…

空が裂け、異形のモノが顕れる。

「…!?」
獣が突如乱入して来た星界の住人を睨み、威嚇する。
青蛇琴はそんな獣には構う事無く、食事に取り掛かった。地面が爆ぜ割れてハイドラが飛び出す。
見えない糸に釣り上げられたかの如く、上空を舞うハイドラが丸呑みにされ、食事は終わった。
「あのやろう……俺の獲物を横取りしやがったな!!!!」
両の足に力を込め、大地を蹴り獣が跳ぶ。蹴られた大地は砕けて雪のベールを広げた。
獣が目指すは当然、獲物を掠った青蛇琴!!
「そいつを返しやがれえぇええええええっ!!!!」
無茶苦茶である。しかしそんな無茶苦茶がまかり通る寸前で、青蛇琴は在るべき棲み家に還った。
轟音を伴う拳撃が空を裂き、降りしきる雪を吹き飛ばし、獣はようやく自分が今何処に居るのかに気付く。
もちろん、地上300mの空の上。当然ながら後は落ちるのみ…

「うおわああああっマジかよ!!やべえッ!!!」
何を今更といった感はあるが、これがリッツという獣の強さの根幹なのだ。
唯々ひたすらに目の前に在る敵を殴り倒す、たったのこれだけ。
その単純さ故に、迷いは無い。
戦場に於いて迷いは己を殺すだけだ。だからこそ、迷わぬリッツは強いのである。

13 :隠衆 ◆F/GsQfjb4. :2006/11/20(月) 18:01:52
――ルフォン大型兵器発掘現場
先のハイドラとリッツの戦闘を観察していた2人の人影が、疾風の如き脚を止め建物へと入る。
「まだ早いのではありませんか?奴らは半分も集まってはおりませぬ」
隠衆が一人“荒天”のエンラは不安げな表情で隣に立つ同じく隠衆“轟天”のセンカに訴えかける。
「ならぬ、修羅が出た以上は此処も長くは持つまい。ならば試し撃ちだけでも、な」
「あれは本当に修羅でしょうか?人間には使えぬ筈…」
「いいや、あれは修羅よ。間違いなく、な。《四岑》まで開けておった」
センカは歯ぎしりして唸る。

《修羅双樹八世御門》破龍の名を持つ拳聖が開祖とされる最強の肉体強化闘法だ。
しかし、それは人間には決して会得できるものではない。
どれほどの修練を積もうと、種族としての特性に由来する技故に人間には会得不可能なのだ。

(だがしかし、あの白髪の人間は門を四岑まで開けた…獣の如き姿はなによりの証拠)
センカは考え込む。もうじき頭である“舜天”のシバが戻るだろう。
もし修羅が出たとシバが知れば、必ずや戦いたがる筈。しかし隠衆の存在は表には出せない。
後々の事を考えるならば、あの時に始末しておくのが得策であった。勝てたかどうかは別ではあるが。
センカはいつの間にか自分の口から血が滴るのに気付いた。悪い癖だ…また噛み切っていた。
エンラに悟られぬうちに、手早く口元を拭うとセンカは腹を括った。
アレは見なかった事にしようと。

そもそも王国側の戦力を、一箇所に集められるだけ集めて一掃するのが今回の計画だ。
余計なトラブルは出来る限り避けたい。ただでさえ遅れが生じているのだ。
王国と公国、互いの兵力を削ぎ、東からの侵攻に備えるために隠衆は派遣されたのだ。
与えられた任を全うする。それが第一であるとセンカは自らに言い聞かせる。

だが…戻ってきた頭のシバが持ち帰った“土産”を見て、センカは思わず叫んだ。
「ちょ!?何やってんスかアンタって人はーッ!!隠密行動!隠密行動ーッ!!!!」
「いやぁ愉快痛快な業を遣う童でのぅ…ついつい拾ぅてしもぉた。かっかっかっ♪」
小脇に抱えた人間の童を転がして大笑いするシバを恨めしげに見つめ、センカは堪える。
隠衆南方先遣隊副頭目、“轟天”のセンカ。常日頃から漢方の胃薬が手放せない漢であった。

14 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/11/21(火) 00:26:47
「お前ら、さっさと起きろ!今日こそは遺跡の調査に行ってもらうぞ!」
キャメロンさんに爽やかに布団を引っぺがされた!
「はにゃ〜…まだ暗いじゃん…昨日はオヤジギャグで大変だったんだから」
そう反論するとキャメロンさんは首をかしげた。
「オヤジギャグ?何の事だ?」
すっかり記憶に無いらしい。
「覚えてないの?レベッカ姉ちゃんとパルちゃんがいなかったら大惨事だったょ、ねえ、ハッちゃん」
ラヴィちゃんがハイアットくんに同意を求めようとして……しばらく沈黙が流れる。
「あれ……?いないよぅ!」

族長さん達を叩き起こしつつ一通り大騒ぎした後、様々な憶測が飛び交う。
「拉致!?」
「相当頭がどこかにいってたからな……徘徊して道に迷ってるのかもしれん」
「モンスターにでも会ったらヤバイわよ!バナナしか能が無いんだから!」

そんな中、まだ新しい足跡を見つけた。
深く生い茂った森に適応しているので、薄暗い中でも辿ることができるのだ。
追っていくと足跡は集落の外に続いていた。もしや本当に徘徊しているのだろうか。
一回戻ってみんなに言ってきた方がいいのかな?とも思いつつ多分すぐ見つかるだろうしまあいっかというわけでそのまま行く。

「あう……どこまで行ったの?ハイアットくーん!」
さすがに戻らないとまずいかと思いはじめたその時。バナナの皮に足をとられて滑って転んだ!
「痛て!」
昨日自分で撒きまくったので自業自得である。でもそんなことはどうでもいい。
「なっ!?」
思わず声をあげてしまった。なぜなら顔を上げてみると目の前に巨大な都市の遺跡があったのだから!
足跡だけたどってきたおかげで幻惑魔法にかからなかったのだろうか。何気なく門柱に手を触れてみる。
すると、急に意識が遠のくような感覚……何かが流れ込んでくるような感じがして。
起きているのに、夢を見た。

いろんな風景が一度に見えるような不思議な夢。
よく分からないけど、すごく綺麗なところだった。見た事も無いような高度な文明……。
常ならざる力を持つ歌と、音が紡ぎだす現代ではあり得ないほどの魔法。それは、繁栄の限りを極めた古代の都市……。
でもその都市が崩れ去る姿も同時に見えたんだ……。やり場の無い悲しみや、焦りや、怒りも……。

「うわああああっ!?」
自分の叫び声に我に返る。
「はぁはぁ……今のは……?」
遺跡に宿った想いを見てしまったというのか。暁の瞳の先代所有者だけでもお腹いっぱいなのに!
再び地面を見ると、門が開いていて、明らかに中に入っていった足跡がある。
昨日はあれ程来れなかったのにどうしてハイアットくんは来れたのだろう。
まさか……彼は本当に……いや、今はそんな事はどうでもいいのだ。
「大変!!早くみんなに知らせなきゃ!!」
もと来た道を急いで駆け戻る。

15 :レベッカ ◆F/GsQfjb4. :2006/11/21(火) 08:54:44
またこの夢だ…真っ白な世界に、たった1人でピアノを弾く少女…
「ねぇ、あなたは誰?アタシに何を伝えたいの?」
呼び掛けると少女は演奏を止めて、こっちに振り向いた。淋しい笑顔。

変だ。アタシは絶対この少女に会った事があるはず…覚えてるもん、この笑顔を。
でも、何故か思い出そうとする度に、いきなり記憶がぼやけて消えてしまう感じになる。
もどかしいのを我慢して、少女の隣まで歩く。間近で見るとはっきり思い出せそうになった。

  …貴女…に……奏で……しい………

僅かに声が聞こえた。やっぱりリザードマンの村で聞こえた声はこの子だったんだ!
「奏でるって何を奏でるの?」

  …思い出……して………約……束…

「約束?思い出す?ちょっと、意味わかんないわよ!?」
夢の世界が突然、ガラガラと音を立てて崩れ始めた。
「嘘ッ!?落ちる!?ちょっとーッ!!!!」
真っ白から真っ暗へ、アタシは転がり落ちて……目が覚めた。最悪の目覚めだわ……


最悪なのは目覚めだけじゃなかった。あの馬鹿が居なくなったみたい。
どうせトイレ探して迷子になったんでしょ、とか思ったら…どうやら既に昨日迷子になったらしい。
村の人達も協力して、集落付近を隈なく捜索したけれども見付からず仕舞い。
「一体何処をほっつき歩いてんのよ!あの馬鹿は!!」
道端の小石を思い切り蹴り飛ばしてぼやくと、ラヴィが重い口を開いた。
「実は…ラヴィ見たんだお。ハッちゃんが明け方頃にどっか行くの…トイレだと思ってたのに…」
しょげ返るラヴィの頭を撫でて、励ましてやる。ラヴィは悪くないもんね。
「…あれ?そういえばパルは?」
「パルちゃんはあっちの方を探してたよぅ」
まさかパルまで行方不明とかじゃないでしょうね!?ヒヤリとした時、村の入口に馬車が停まった。
一応聞きに行ってみよう、この時間に着いた馬車だ。もしかして見掛けてるかもしれないし。
アタシとラヴィは馬車に向かって走り出した。

16 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/11/21(火) 21:11:49
「メインシステムは・・・生きているな。都市機能は半分以上潰れているか・・・」
青年はジャジャラ中枢部のコンソールを操作しながら、次々に表示される画面を瞬時に読み取っていく。
彼はジャジャラの都市機能管理用ホムンクルスとして造られた2体の片割れ。
中枢のメインフレームと接続された彼は、ジャジャラ内部の出来事は手に取る様に把握出来る。
当然の如く、遥かな時を経て帰還した片割れの存在も。
「おかえりハイアット。君がいればジャジャラは完全に甦る。今度こそ僕達は・・・」
モニターに映し出された映像に、都市内を走る人影。ハイアットだ。真っ直ぐに此処を目指して来る。
青年は優しく微笑み、接続を解除した。兄弟とも言える存在であるハイアットを迎えに行く為に・・・


「あっれぇ〜?こんな所に曲がり角なんかあったかな・・・無かったような」
ハイアットは道に迷っていた。彼が時間を超越した後に増設された通路だとは知る由も無い。
更にあちこちが破壊され、通路はますます入り組んだ状態になっているのだ。
迷うのも仕方ないと言える。
「困ったなぁ・・・本格的に迷子だよコレ、時の流れって残酷・・・おや?」
ふと前方に明かりが見える。ハイアットは躊躇う事なく明かりに向かって進む。

明かりの下には1体の古びたゴラムが倒れていた。おそるおそる近づき、動かないかどうか確認する。
どうやら完全に機能停止しているようだった。・・・かに見えただけだった!!
ウィーン・・・ガション!ガション!!ビーッビーッビーッ!!
『侵入者発見、侵入者発見。手足の骨をへし折った後、爪を1枚1枚丁寧に剥がします』
無機質な機械音声が、やたらと物騒な事を宣言して襲い掛かって来た!!
「ちょ!?怖ッ!!なんか怖いよ!!普通『侵入者は抹殺する』とかでしょ!?」
突然の急展開に、ハイアットは回れ右して全力疾走で逃げ出した。
殺されるよりも、リアルに怖いゴラムの台詞にすっかり血の気が引いている。

しかし時の流れは残酷だった。迷子のハイアットはでたらめに逃げた結果、行き止まりに追い込まれたのだ!
『侵入者捕捉、侵入者捕捉・・・爪を剥がしたら、そこに塩水をポタリポタリと垂らします』
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!」

17 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/11/22(水) 22:00:58
「見たじゃろう。空に映った女とハイドラを飲み込んだ大蛇。この童の術と聞けばお前だって拾ぅてしまうじゃろうに。」
悪びれる様子もなく笑うシバの言葉にエンラがぴくりと反応する。
だが、センカは違う。
これ以上話がややこしくなる前にと畳み掛けるように言葉を並べる。
「そんな事より!王国の戦力は予想以上ですよ!ハイドラの一体はあっさり倒されたし、もう一体も時間の問題でしょう。
機は今しか・・・!」
「わかったわかった、準備は任せる。ところで、儂の見立てぢゃと・・・」
言葉を選んでいたつもりだが、シバに遮られて全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
もしや修羅双樹八世御門を開くリッツの事に気付いていたのではないか、と。
拭ってはおいたが、血の匂いが零れればなんらかを察するかもしれない・・・鼓動が早くなる。

「この童、儂等の知らぬ術を使うという事を差し置いてもいい拾い物かも知れんぞ?」
盛大にこけるセンカ。
絶対に考えもなく興味本位で拾ってきたと判っているからだ。
もう勝手にしろと言わんばかりに無言でその場から姿を消した。安堵に胸をなでおろしながら。

##############################################

眼を開けると、目の前に蝋燭が小さな炎を揺らしていた。
ここはどこだろう?
辺りを見回すと、突然コボルドの顔が映り驚きの余り息を呑む。
確かに寝起きにいきなりコボルドの顔は驚くに値するけど、驚いたのはそんなことじゃない。
私の義眼は映像だけでなく、オーラや熱源、気流まで見ることができる。
目の前のコボルドには映像と熱源以外何もない。
生きていれば必ず出るオーラがないのに驚いた。
世間ではこの技術を「気配を断つ」と言うらしいけど、私はそんなこと知りもしなかったから。

「おや、、気付いたかい?」
老コボルドは部屋の各所の蝋燭に火をつけながら声をかけてくれた。
声は柔らかだけど、オーラが見えないので感情が読めない。表情も人間と違うのでわかりもしない。
圧倒的に情報が足りない。
わかっていることは、いつの間にか義足を取られ、気絶してここに連れてこられた、というだけ。
とにかく太極天球儀を展開させて陣を張る。
私を中心にした直径2Mの力場が360度展開される。これでどんなスピードだろうと手が出せないはず。

展開した陣の力場に支えられ宙に浮きながら辺りを見回すと、部屋は小さなものだった。
今いる部屋の一番奥のベッド、入り口は老コボルドの後ろ。窓は一つもない。気流の流れがなさ過ぎる。もしかしたら
ここは地下かもしれない。
過呼吸に陥りそうになりながら辺りを見回して分析。
「そう怯えないでおくれよ、お嬢さんや。とって食うつもりなら傷の手当てなんぞしやせんて。
狭い部屋じゃし、それは畳んでくれんかのぅ。」
しわがれた声と私でもわかるくらいの大げさな笑みで両手を挙げている・・・。
敵意はないということなのか?
言われて気付いたけど、右腕には包帯が巻かれていて、義足も元通りになっている。
「あ、あ、ありがとう、ごごごござい、ましす。あ、あの・・・あなたは・・?」
自分の状態に驚いて反射的にお礼を言いながら陣を解除。
ベッドに座ると老コボルドは温かいお茶の入ったカップを渡してくれた。
「外は寒かったじゃろう?まあ落ち着いてこれを飲みなされ。」
渡されたカップを手に持って老コボルドの顔を伺うが何もわからない。
ただ揺らめく炎とコチコチと規則正しくなる時計の秒針。そしてお茶の良い匂いに満たされる暖かな室内。
敵意はないようだし、傷の手当てもしてくれた。
言われるままにお茶を飲むと体の芯から温まるように美味しかった。

18 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/11/22(水) 22:01:28
「わしはここらを塒にする爺いでの、空に女や蛇が出て驚いて出てきたら、ふらふらなお嬢さんを見つけて運んできたん
じゃよ。今戦争中で物騒ぢゃからのぅ。」
・・・なんだろう、何かが違うような気がするけど・・・頭に霧はかかっている様にはっきりしない・・・
「ぼぼぼ僕は、あの、おっ男・・・です。」
「ほほほ、わしらコボルドは鼻が利くでの。まあ、男としておこうか。」
もっと違うことを言わなきゃいけないのに、口走ったのはお嬢さん、という言葉に対する反論だった。
でもそれがあっさりと認められ、何か毒気が抜かれてしまうような・・・
結局のらりくらりとこちらの質問には殆ど答えない老コボルドに、私は黄動聖星術の最後の継承者であること。
黄道聖星術はこの星を含む星界の秘密を解き明かし、その力を利用する術であること。
遺伝子情報による知識継承をしていること。太極天球儀・日輪天球儀・月輪点球儀は1000前から受け継がれていること。
そしてロイトンでのソーニャさんとの出会い、行動を共にする経緯まで話してしまっていた。
かいつまんだ概要だけとはいえ、話す必要のない事まで・・・。
注意深くしていたつもりでも所詮は殆ど人と接していない私。海千山千の隠衆頭目であるシバにかかれば誘導尋問によって
全てを引き出すことなど簡単だったのだろう。
それに狭い部屋、揺らめく炎、規則正しい時計の音、薬湯、充満する香。全てが用意された装置だったのだ。
知らず知らずのうちに私の警戒心や判断能力は鈍くなっていく。

「あ、あれ?僕・・・なんでこんなに話しちゃったんだろう・・・。」
「年寄りだと話しやすいじゃろ。爺いも素直な話し相手で嬉しいわい。」
「え?」
「ほれ、おぬしのどもりも随分と治ってきたの。」
「あ、ほんとだ・・・。おじいさんが治してくれた、の?」
「年寄りの知恵袋じゃて。
さて、その見返りといってはなんじゃが、一つ占いをしてくれないかの。この土地の戦争の行く末を。」
「はい、わかりました。」
すっかり打ち解けた私は縦目仮面を被り太極天球儀に手をかざす。
「・・・危険・・世界を喰らい力とする獣・・・蠢く憎悪・・・巨星が集う・・・陰謀・・・」
ふと顔を上げると目の前の老コボルドの目が驚くほど鋭くなっていた。
「あの、これは・・・さっき我が青蛇琴に食べさせた鋼の蛇、ですけど、アレは蛇退治じゃなくて、本当は蛇を倒させない為に
なんです。
鋼の蛇を毟り食らう恐ろしい力の持ち主がいたから。蛇の爆発、だけじゃなく、世界を喰らい尽くしちゃいそうだったから・・・。」
一転した鋭い目つきに緊張しながら伝えると、老コボルドはしばらく考え込んでしまう。
「ふむ・・・嬢ちゃんや、素直だったご褒美にいいものを見せてやろう。おいで。」
数秒の重い沈黙の後、外へといざなう老コボルド。
ルフォンに近づいてからは暖気の術をかけておいたので寒さに震えることはないけど、雪が積もっているのを見ると視覚的に
寒さを覚える。

「おわ、誰?」
縦目仮面を被っている私の出現に驚いたような声を出すのは、外に立っていたコボルド。
声からすると若そうだけど、獣人の年齢ってわかりにくい。この人も同じようにオーラがない。
コボルドはみんなこうなんだろうか?
だけど私は更に驚くべき事に気付いた。
この雪の積もる中、二人には足跡がついていない。重力制御で殆ど浮いている私でも僅かならがらに足跡が残るのに・・・
「のう、エンラ。ぬしは何か儂に言わなければならぬ事はないか?」
老コボルドにそう囁かれ、汗をだらだらと流すその姿を私は不思議そうに見ていた。
だから、すぐ脇に大穴があって、その底に巨大なグレナデアが鎮座していることに気付くのにもう暫くかかってしまったのだ。

19 :名無しになりきれ:2006/11/22(水) 23:27:26
後ろは行き止まり、上にも下にも逃げ場なし、そして真正面には……
『爪を剥がした後、塩水をかけます。』
いつか見たような、なんだかとてもサディスティックな感じのゴラムが一体。
この状況、仲間もいないし。すでに僕の心は腰砕け状態で恐怖から足がプルプル震える。
だけどそんなこと向こうは待っててくれない、どうしようと考える間もなく相手の拳は僕に向かって伸びてくる。

――無意識だった。

拳が僕に届くまでの刹那、腕は勝手にホルスターからただ一つの戦う手段≠手にとっていた。
火を吹き発射される何発もの光弾がゴラムの腕に突き刺さっていき衝撃で拳が僕から逸れ後ろの壁を突き破る。
壁に突き刺さりぬけなくなった腕、今が好機だ、僕はゴラムの中心部に銃を向ける。

「本当にすまないっ!」

銃を持つ腕が光っていき、銃がバチバチと音を立てながら震える、
僕の持っている銃《ローヴェスタン》は使う生命力によって威力が変わる。
生命力を入れれば入れるほど、それに応じて力を増す。

このまま破壊しようとトリガーに力を入れたとき、すぐ横にあるゴラムの腕に刻まれている数字を見て僕は気付いた。
「そうか……君だったのか、久しぶり……」
なんとなしに分かっていた、あのちょっと変な感じ、知っていたんだ僕は彼を。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

すでに腕から送られたエネルギーに銃は暴発しそうな勢いだ。
このまま撃つしかない、それに、撃つのを止めたところで、彼の中のメモリーはすでにどうしようもなく劣化していて。
現在もはや命令を読み取る部分しか残されていないんだ、どちらにしよ攻撃を止めるなんてありえない。

「許してくれとは言わない、むしろ……恨んでくれ、お願いだよ。」
銃口から眩いばかりの光りが溢れ一瞬全てが真白の世界になる。
そして、ゴラムの胴体は跡形もなく吹き飛んでいた……静かに、だけど、確かに僕の頬を伝っていく涙、
僕が造られた人形でも泣けるのは、皮肉にもこの手で殺してしまった大切な友達が居たからなんだ。

   『なあ、いつもいつも命令命令、仕事仕事だと疲れちゃうだろ?』
   『……私に肉体的疲労はありません。』
   『いや、だからさ、精神的に嫌になっちゃうじゃん、どう?仕事なんて抜け出して釣りにでも行かない?』
   『命令違反……命令違反は爪を剥がして塩水の刑です。』
   『ひぃぃぃい!怖いこと言わないで行こうよ釣りぃ〜』

思い出すのは、あの懐かしい陽だまりの日々……

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

今、彼の亡骸を前に、自分はどんな顔をして立っているんだろうか、
どんな顔をして立っていればいいんだろうか?君は、こんな僕になんと言うんだろうか?
黙って、怒りもしないでただ悲しそうにピアノを弾くのだろうか?
「教えてくれ……お願いだ、僕は、身内に銃を向けるためにここまで来たっていうのか!?」

―『それは違うよハイアット』―

帰ってくるわけないと思っていた答えが帰ってきた。
僕は後ろを振り返る、目の前には僕に似ているような雰囲気の青年が一人立っていた。
「……おかえり」
そういい笑う彼の存在が信じられなくって、けど確かに彼は居て……
「…………た、ただいま」

20 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/23(木) 00:00:17
交代しながらとはいえ、不慣れな土地での馬車の運転は難しいもので御座います。
結局、集落には朝方に着く事となりました。

そう言えば今日はまだラーナ様へのお祈りを済ませておりませんでした。私とまだ数名のシスター達は馬車を降り、
見張り番にシスター・キリアを残して朝日に向かって数度礼拝を行いました。

その時で御座いました。集落の方から二つの人影が向かって来たので御座います。
「ちょっとすみません」
親子にしては少し違うような、姉妹でございましょうか、その方々は私共に行方不明のお知り合いを見てないかと
お尋ねになられました。
「申し訳御座いません ちょっと見かけておりません」
私は素直にお答えさせて頂き、他の方々も同様にご存知ありませんでした。

その時で御座います。
「み、見たぞ!!知ってる!!だから助けてくれ!!」
馬車の荷台から声がしたので御座います。それは奴隷商の頭で御座いました。猿ぐつわの縛りが甘かったのでしょうか?
「た、助けてくれ!!そいつは人間じゃない!!」
「お待ち下さい、少々、お話を聞いては頂け・・・・・・・」
運命と言うものはかくにもいたずらに出来ているのかも知れません。言葉が終わらぬ内に突風で私のフードが取り払われ
素顔を曝け出す事となったので御座います。

「スライム!!」
「大変だよぅ!!助けなきゃ!!」
運命とはやはりいたずらに出来ているので御座いましょう、どうすれば、理解頂けるか、
この時の私には術が御座いませんでした。





21 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/11/23(木) 01:17:36
集落のすぐ近くまで走ってきたとき、毎度おなじみの四人組が行く手をさえぎる!
というよりきっと本人達はさえぎっているつもりだ。
「一人で出歩くとはいい度胸だな……」
「もう貴様だけは許さん!!」
「今日こそぶっ殺―す…いや、もはや殺すのも生易しい!!」
「我らが受けた屈辱……100倍にして思い知らせてやる!!」
無駄に迫力のあるオーラを出しながら4方向から迫ってくるという
凝ったお出迎えをしてくれたところ悪いが、急いでいるので無視して走りぬける。
「待て!どうやって縄から抜けたか知りたくないか?」
無視すればいいのについ振り向いてしまった。
「知りたーーい!!」
「我らの日頃の行いがいいので貴様のお友達の変なコート着た兄ちゃんが
『放置プレイか、なんてひどい事をするんだ!』とか言ってほどいてくれたのだ!」
それはハイアットくんじゃん!!優しすぎて泣けてくるよ……!!思わず呆然としてしまったのだった。
「「「「スキありっ!!」」」」
襲い掛かってきた瞬間、地面を蹴って跳び、近くの木の枝の上に乗る。
すると4人はさっきまで僕がいた場所でごんっと派手な音をたてて頭をお互いにぶつけた!
「残念だけど僕はハイアットくんみたいに優しくないッ!」
というわけで新技!!【エレキックバウンド】発動!! 睡眠学習した技なので
出来るわけないがダメでもともと。実験台になってもらおう!が、予想は大きく外れた。
初めてのはずなのに、何度も弾いたことがあるみたいに指が勝手に動いて……
あれよあれよという間に少しばかり刺激的な旋律が組み上げられ、空中に紫電が弾け、
電撃の網が四人組を縛り上げる!!
「「「「ぐあああああああ!!!」」」」
なんと、骨まで透ける勢いで感電している!自分でもびっくりだ。
ここまで睡眠学習って効果があるとは思わなかったのでやりすぎてしまった。
「ご、ごめん!!」
伸びきってぴくぴく痙攣している4人組を放置して、集落へ急ぐ。
ハイアットくんはきっと虫も殺さないような人だから一人にしてると確実に死ぬ!!
4人組には悪いけど一刻の猶予も無いのだ!

22 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/11/23(木) 21:36:05
こんな朝早くから馬車が来るなんて、珍しいよぅ。もしかしてハッちゃんを見掛けたかも!
レベッカ姉ちゃんも同じ事考えてるよ、互いに頷き合って馬車に駆け寄ったんだお。

「全く大変な目に遭いましたね。ググさんの故郷ですから、一先ずは安心でしょう。」
そう言って馬車から降りて来たキレイなお姉さんが、うんと伸びをして独り言。
何かあったのかな?・・・まさかハッちゃんが『えっちな事』を!?
あのお姉さん、すごく美人だもん!ありえるよぅ!

   *********************************************

ハッちゃんは無実だったけど・・・結局は振り出しに戻っちゃったよぉ。しゅんとしてたその時!
「み、見たぞ!!知ってる!!だから助けてくれ!!」
馬車の荷台から声がしたんだよ。見ると縛られてぐるぐる巻きのおじちゃんだよ。
「た、助けてくれ!!そいつは人間じゃない!!」
「お待ち下さい、少々、お話を聞いては頂け・・・・・!?」
フードのお姉さんが言い終わらない内に、強い風でフードがめくれたんだよ。
その下にあった素顔・・・・。透明な彫刻!?
「レベッカ姉ちゃん!この人スライムだよッ!!人型に擬態してるッ!!」
即座に包丁・・・箱は今持ってないよぅ!!スライムは人喰いのモンスターなのに!!
包丁が無いとラヴィは唯のホビットじゃん!!
「待って下さい!アクアは決して人に危害を加えるような者ではありません!」
キレイなお姉さんが慌ててラヴィ達の間に割って入ってきたよ。その表情は真剣そのもの。
すぐには信じられないけど・・・でも、こう言われちゃったらラヴィは手は出せないし・・・・。
「実は私達は・・・」
キレイなお姉さんは、ここに来るまでに起きた出来事の一部始終をみんなに話してくれたよ。

   ***************かくかくじかじか****************

「成る程、そのハイアットさんを捜していたのですか。」
スライムのアクアお姉さんが感慨深そうに頷く。
ハッちゃんはラヴィ達にとって仲間だし、遺跡案内人が居なくなったら困るよぅ。
それに、何とかコマンダーだしね。
「それにしても、パルは何処まで捜しに行ったんだろうねぇ・・・・。」

23 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/11/23(木) 21:37:16
レベッカ姉ちゃんが心配そうな顔をした時、族長さん家の戸をババーンと開けてパルちゃんが入って来たよ!
「大変大変大変だーッ!!ハイアットくんが・・・ハイアットくんが遺跡に!!!」
ぜえぜえ息を切らしてる。多分ここまで全力で走り続けたんだね、パルちゃんすごいかも。
「あの馬鹿が遺跡にどうしたの?まさか入ってったとか!?アハハ、ありえないわよ。」
レベッカ姉ちゃんも事態がよく分かってないみたい。ちんぷんかんぷんな感じ。
「ハッちゃん一人で遺跡に入るなんて無茶だよぅ。途中までに強いモンスターがいっぱいいるよ?」
「でも足跡を追ってたら遺跡に辿り着けたんだよ!?つまり遺跡にいるって事でしょ!?」
「「えっ!!」」
レベッカ姉ちゃんとラヴィの声が見事にハモったよ。確かにそれはハッちゃんが危ないよ!
「きっとハイアットくんは自分の・・・!いやなんでもないや・・・・。」
何かを言いかけてパルちゃんは『しまった』って風な顔をした。何か隠し事してる?
「ちょっとパル、あんた何か知ってるの?この際隠し事は無しだよ!?」
レベッカ姉ちゃんが問い詰めると、パルちゃんは観念して話始めたよ。信じられないような話を!

   ***************かくかくじかじか****************

「分かりました。つまりパルスさんは恋人であるハイアットさんを助けるために遺跡へ向かうのですね。」
「「「・・・え?」」」
アクアお姉さんの一言に、三人の声が綺麗なハーモニーを奏でたよぅ!!
「ちょ!僕はそんなんじゃ・・・」
「皆まで言う事はありません。エルフとホムンクルス、結ばれぬ恋に胸を焦がす貴女の想い・・・感動です。」
「いや、だからね・・・」
「良いのです!何も恥じる事ではないのです。愛の形は無限に存在するものですから。」
「あ・・・あの・・・」
「この私、まだ未熟ではありますが・・・是非とも貴女の恋にお力添え致します!」
「あぅ・・・」
すごい迫力だったよ、あのパルちゃんが一方的に押されっぱなしなんてッ!!
ラヴィはまだ付き合いが浅いからアレだけど、レベッカ姉ちゃんは口をポカーンと開けっ放しだしぃ・・・・。
お、恐るべきラーナ様の恋愛自由主義!!
唯一ホッとしたのは、ラヴィじゃなくて良かったって事かなぁ♪

24 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/11/23(木) 21:38:24
隅っこで小さくなってるパルちゃんを、なるべく見ない方向で、遺跡探索の準備に取り掛かったよ。
でも突然アクアお姉さんが『あっ!でも私はハイフォードに向かう予定が・・・・。』って困ったり。
その時のパルちゃんもすごかったお。

『そうだよ!そのリザードマンさんの結婚式しなきゃ!遺跡は僕達だけで行くよ!』って猛反撃開始!!
でも・・・シスター・キリア様がやってきて、
『あら、結婚式ならこの村で行いますよ?ググさんの故郷ですし。安心して行ってきなさい。』
のありがたい言葉でパルちゃんに瞬殺カウンターが決まってみたり・・・・。
で、今また小さく丸まってる訳で。気の毒だと思ったけど、よく考えたら結構お似合いだよぅ。

ラヴィは恋愛とか興味無いから、パルちゃんの事が少しうらやましいのかも。
いつかラヴィにもカッコイイ王子様が現れるのかなぁ。知り合いに本物の王子様がいるけどぉ・・・・。
大の仲良しって意味で『好き』だけど、恋愛って意味で『好き』じゃないしねぇ〜♪

そういえばチィちゃん、今元気にしてるかなぁ・・・・。

25 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/11/24(金) 23:25:56
「うぅおおおおおっ!!出せ!出ぁせやぁゴルァァァアアアッ!!!!」
これで何度目の爆発であろうか。ジョージは深い溜息と共に、扉の向こうで暴れる主に頭を抱える。
侵略派がによるパルモンテ家襲撃から、早1週間が過ぎた。
ジョージとメリーの2人は、現当主であるイアルコを護る為、ジョージの実家に身を潜めているのだ。
だが、生まれ育った環境の差からか、イアルコは生活ブロックの雑多な空気が気に召さないらしい。
「余をこのような豚小屋に監禁しおって糞執事が!!出さんかこのバカチンッ!!!」
「豚小屋ですと!?せめて納屋でしょうが!!……ゴホン、それはなりませぬぞ若様」
生家を豚小屋呼ばわりされ、一瞬カッとなったがどうにか堪え、ジョージはイアルコに言い聞かせる。
「若様の身を案じ、我々は侵略派の手が届かぬここへ避難しているのですぞ?どうかご理解下され」
「理解できるかボケェ!!かれこれ1週間は外に出ておらぬのだぞ!?もう辛抱ならぬ!!」
このようなやり取りが、ここ1週間の間ずっと飽きもせずに繰り返されているのである。

「…困ったものですな。若様が生きている限り、侵略派にとっては都合が悪いから
 執拗な襲撃を仕掛けるのでしょうが…正直これ以上襲撃が続けば若様を守るのも困難…」
ジョージが唸るのに対し、メイドのメリーは顔色一つ変えず呑気に紅茶を飲んでいる。
そんなメリーを見てジョージは羨む。自分には彼女のような余裕が無いと。
パルモンテ家の執事として180年勤め上げてきたが、未だに自らの無力さに苛まれ続けている。
代々平和的な立場を貫いてきたパルモンテ家は、昔から他の貴族から風当たりが強かった。
龍人の社会は実にシンプルだ。『力を持つ者が上に立つ』ただそれだけなのである。
勿論社会を構成する上で最低限の決まりや政は存在してはいるが、根底に流れるのは力の掟なのだ。

そういう意味では公王ギュンターは武力とカリスマを兼ね備えた希代の指導者であった。
セレスティア崩御以降、個人主義が浸透した龍人に於いて、国家の概念を再び成立させたのだから。
龍人戦争時代の王、アーダの右腕として優れた政治手腕を発揮し、自身も戦線を駆けた英雄。
ギュンターは成るべくして王と成った。それが今の貴族達の共通認識であった。

あの日、暗殺未遂事件が起こるまでは…

26 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/11/24(金) 23:28:10
公王暗殺未遂事件は、12貴族を始めとする全ての龍人達に絶大な衝撃を与えた。
揺るがぬ絶対の柱が揺らいだのだ。
この事実はガナンの政治形態そのものを、根本から瓦解させるおそれがあると言える。
それだけに穏健派の家系は焦った。当然だ。時期が時期である。
王国との激突は避けられない上に、無敵を誇った第7機鋼大隊の中央戦線敗退…
戦争推進の動きはどうあがこうが変えられない。ならば身の振りは慎重にならざるを得なくなる。
そんな中で王国との停戦を独断で進めようとしたパパルコ=パルモンテは絶好の標的となった。
侵略派ではなく、同じ穏健派からである。
既に12貴族には穏健派と呼べる派閥など存在しないのだ。
我が身可愛さに、志を同じくした友を侵略派に売り飛ばしだのだ。
結果パルモンテ家当主パパルコは、侵略派の一角アイゼンボルグ家の謀略に嵌まり、謀殺された。

侵略派御三家のレーゼンバッハ家、アイゼンボルグ家、パルプザル家を中心に攻撃的思想の
 一大勢力が動き出し、公国は現在公王不在の中で完全なる侵略型軍事国家へと変貌したのである。


「くぉらあああ出さんかーッ!!余は…余は限界突破しそうなのじゃあああ!!!!」
またまたイアルコの叫びが建物を揺らす。やれやれといった表情でジョージはドアの向こうに言い返す。
「耐え忍ぶ心!それが忍耐の精神なのですぞ!若様、どうか耐えるのです!!」
「アホか!何が忍耐じゃ!!もう勘弁ならん!!1週間貯めに貯めたモノを産み落としてやるわい!!!」
イアルコの言葉にジョージが顔面蒼白になった。生まれるのだ、ウ〇コという名の破壊神が!!
当然ジョージは阻止しなければならない。思い出が詰まった実家を、守らなければ!!

「若様ッ!早まってはなりませぬ!!!」
「フゥーハハハハハーッ!!ならば早くドアを開けんか!余は既に準備万全じゃい!!」
言われるがままにドアの鍵を外して開けた途端、強烈な突風がジョージを吹き飛ばす。
騙されたとジョージが気付いた時には、もうなにもかも手遅れだった。電光石火の逃げ足。
リビングを駆け抜け、玄関まで一直線。イアルコの脱出計画は成功した…かに見えた。
玄関の前に立つメリーが、最高速度に達したイアルコの顔面へ神速の正拳突きをカウンター気味に叩き込むまでであったが。

27 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/11/24(金) 23:29:12
パリーン!と、小気味よい音と共にガラスの雨が薄汚い路地裏に降り注ぐ。
そして数瞬の遅れでグシャリと鈍い音。
メリーのカウンターはイアルコの体を易々と弾き飛ばし、窓を突き破って家の外まで送り出した。
「ブ…ブハッ!?はぁ…はぁ…さ、作戦成功じゃ!余は自由を勝ち取ったのじゃーッ!!!!」
そうは言うが陥没した顔面に、落下に伴う打撲、撒かれたガラス片による裂傷…
血まみれの重傷だ。とても自由を勝ち取った者の姿とは言い難い。今にも倒れ込みそうである。
「しまった!若様ッ!そこを動いてはなりませんぞ!!私が行くまでじっとしてて下さいませーッ!」
窓から上半身を乗り出して必死に哀願するジョージ。
あっかんべーしながら邪悪な笑みのイアルコ。
そんなイアルコのすぐ真後ろに忍び寄った暗殺者。

「や、やっぱり動きまくって構いませぬぞーッ!!」
「どっちなのじゃ!?ボケ執事!!はっきりせん…んがっ!?」
イアルコがジョージに向けて振り上げた拳が、暗殺者の振り下ろしたナイフを持つ手を打ち払う!
奇跡としか言いようの無い出来事に、ジョージとイアルコ、そして暗殺者の3人が呆然となった。
「な、何じゃお前はッ!?……ははぁん、さては余の屋敷をブチ壊した狼藉者の一味か!!」
驚きの表情はすぐさま怒りの形相に変わり、イアルコは暗殺者を睨みつける。
1週間分のストレスも手伝ったか、凄まじい力が沸き上がり、イアルコの龍鱗が強い輝きを放った。
「ちょうど良いわ、運動不足で困っておったのじゃ…ぶ っ 殺 す!!!!!」

腐っても12貴族の家系に名を連ねる者、その内に秘めたる力の強大さは計り知れない。
完全に解放された力を渦巻かせて、イアルコは凄惨な笑みを浮かべる。
今ここに、後の世をひっくり返す“小さき覇王”の伝説が幕を開けた……

28 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/11/25(土) 03:20:57
さあ、吹っ飛べとばかりに息を吸い込んだ途端にメリーの横槍、瞬き三連打で舞い上がる暗殺者達。
まあ、余裕でした。
「若! お怪我はありませんか!?」
「うむ、もう治ったわ!」
胸を張って言いながら、ジョージ宅に駆け戻るイアルコ。

「若、一体どちらへ!?」「厠じゃ!」「ああ……」「メリー! 余が戻るまでにその命知らずどもをゲロさせおけい!」

五分後、イアルコがすっきりした顔をロビーに出す。
ます目に映ったのは無表情でゴム手袋を脱ぐメリー、続いてソファーの陰で震えるジョージ、そして最後に何か人間の尊厳が失われたような面持ちで転がされている暗殺者三人組であった。
「で、やはりミュラーの手の者であったのかの?」
「その通りで御座います」
異様な光景を気にした風もなく尋ねるイアルコ、頷くメリー。
この二人の共通点は、とにかく結果至上主義ということであった。過程など終えた直後に脳内宇宙の遥か彼方なのである。
「それだけではありませぬぞ若っ! なんとあろうことか! ミュラー閣下は若にあらぬ罪を着せ、懸賞金まで掛けてきたのです!!」
「あらぬ罪ぃ〜〜?」
渋い顔をするイアルコに、ジョージは一枚の紙切れを差し出した。
「なになに……この者、公王陛下暗殺の実行犯ディオール=ライヒハウゼンの片棒を担ぎし反逆者である? 忠実なる公国臣民は見かけ次第最寄りの警備隊詰め所に……」
「いくらなんでも反逆者の烙印などとは、あんまりでは御座いませぬか!! 龍人貴族としての誇りある死の尊厳すら奪うとは、真にあんまりで御座います!」
「落ち着け爺、奴の打った手は正しい。余でも同じことをしたじゃろう」
「しかし、若――」
「しかし、主犯がディオールの馬鹿タレとは心外じゃのう。まあ、ミュラーにとっての優先順位からいってそうなるか」
「若! こんな事態になってまで何を呑気な!!」
憤慨するジョージを無視して、イアルコはメリーに言った。

「どうじゃメリー? 総督府のミュラーの首を獲れるか? もちろん、一対一で誰の邪魔も入らぬ場合での話じゃが」
「3ラウンドいただければ」
この素っ気ない答えに腕を組む。
メリーがいい加減な事を言うはずはないし、一度見た相手の戦力査定を間違うはずもない。可能と言うなら、それはその通りなのだろう。
ここから逆転を狙うには大将首を獲るのが一番。
だが、どうしてもイアルコは踏み切れなかった。一つの不安材料のせいである。
「ブレスは? ミュラーのブレスは想定の内かの?」
「いえ、しかし赤鱗属のそれであれば、ある程度の予想と対策はできて御座います」
「ふむ……よそう。甚だ面倒じゃが、地道に再起とやらを図ってみようかの」

意は決したとばかりに家宝のブーツの踵を鳴らし、イアルコは悠然と玄関へ足を向けた。
「若、何処へ!? 外は危のう御座いますぞ!!」
「アホ。狭いガナン、そんなに急いでどこ行くの? ってなもんでどこに居っても危険じゃわい。ならば、火中の栗を拾ってやるまでのことよ」
「はあ……つまり、どうなさるおつもりで?」
黙って上を指差すイアルコ。首を傾げるジョージ。

「……はて、二階に何が?」「阿呆! 上じゃ! 上に戻るんじゃ! レーゼンバッハの屋敷に潜り込むぞ!!」「えー!?」
「然る後にガナンを脱出じゃ! 事は急を要する! かけあーーっし!!」「然る後とはあああっ!!?」「そこはそれ、まあおいおいとなあ〜〜!」

こうして三人は、再びガナン中枢の闇の中へと踏み出したのである。

29 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/26(日) 23:48:25
突風であらわになった私の素顔にお二方が戦闘態勢をお取りになられました。
「レベッカ姉ちゃん!この人スライムだよッ!!人型に擬態してるッ!!」
小さいお嬢様が私を威嚇しながら何かを取り出そうと致しました。
「スライムってたしか、人を・・・」
人を食べると申したいのでございましょうか、生まれてこのかた、水と木の実しか口にした事が御座いません。
どしたものかと考えておりますと、私たちの間にシスター・キリアが割ってお入りになられました。

シスター・キリアの必死の説得どうにか誤解は解けましたし、原因となった奴隷商達も屈強なリザードマンの戦士に
囲まれては何も出来ないでしょう。誤解も解けた所で私どもは簡単な自己紹介などを済まし、ラヴィさんたちのお話を
落ち着いて聞く事となったので御座います。

一通り、説明を聞かせて頂き、ハイアットさんと言う方とそのハイアットさんと仲の良いパルスさんと言う方が朝から行方が
わからないと言う事でございました。
ひとしきり話し終えた頃、扉を破らん勢いで、触覚を生やしたエルフの女性の方が飛び込んで参りました。
先ほどの話しの内容から察するにこの方がパルスさんなのでしょう。
「どこいってたのよ心配したでしょうが!!」
とレベッカさんにヘッドロックを極められてますし。
パルスさんのあの慌てよう、そして、先ほどのお話し、どうも、只の仲間がいなくなったとは違う様な・・・・・・
その時でございます、ラーナ様より愛のお告げを頂きましたのは、

『そうか!!パルスさんとハイアットさんは恋仲なのですね!!』

あの慌てよう間違い御座いません。と、なると、私も愛の女神に仕える物、取るべき行動は只1つ。
「わかりました。つまりパルスさんは恋人であるハイアットさんを助けるために遺跡へ向かうのですね。」
何か三人が驚かれてますが、いきなり私が喋ったからでしょう。
「皆まで言う事はありません。エルフとホムンクルス、結ばれぬ恋に胸を焦がす貴方の想い・・・感動です。」
「いや、だからね・・・」
愛の話しになると急に恥ずかしくなる方は大勢いらっしゃいます しかし愛は恥ずべきものではありません
「良いのです!何も恥じる事ではないのです。愛の形は無限に存在するものですから。」
しかし、見たところ多分そのハイアットさんと言う方が冒険の前衛を担っていたのでしょうか、
戦士と呼べそうな方がいらっしゃいません。これは、怪物と遭遇した時、危険なのでは?なれば
「この私、まだ未熟ではありますが・・・是非とも貴方の恋にお力添え致します!」

その時私はすっかりとある事を忘れていたので御座います。



30 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/11/26(日) 23:49:17
その事を思い出したのは遺跡への探索準備をしていた最中で御座いました。
「あっ!でも私はハイフォードに向かう予定が・・・」
そうでした私共は今まで生活していた修道院が崩壊したため、ハイフォードのラーナ寺院に向かう途中だったのです。
すっかり忘れておりました。どうするか思案しているとパルスさんに一生懸命にハイフォードに行く事をお奨めされました。
パルスさんの優しさに改めてこの恋はお手伝いせねばと思ったいた所、シスター・キリアがいらっしゃいまして
「あら、結婚式ならこの村で行いますよ?ググさんの故郷ですし。安心して行ってきなさい。」
と、ありがたい言葉を頂きました。

「あ、そうそうシスター・アクア、キャメロンさんは信用出来そうな方なので今回の報酬の代わりに私共をハイフォードまで
 お連れ頂くと言う事になりましたので、頑張って下さいね。」

さすがシスター・キリアです、伊達に修道院の会計役をしてる訳では無いのですね。
「そうそう皆様、アクアですが、神に仕える身ですが、スリダブ流格闘術を身につけておりますので戦闘には困らないでしょう。
 ただ、彼女が魔に連なる物より生まれた為、奇跡をおこす事が彼女には出来ませんので、神官としてではなく戦士として
 お連れ下さい。」

さて、準備も出来ましたし、私共は遺跡に出発したのでございます。
その道すがら私はある事を考えておりました。それは、修道院の再興の費用を稼ぐ為何か出来る事は無いかと言う事で御座います。

31 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/11/27(月) 10:30:39
「そうか、そういうことか!妙に仲がいいと思ったよ、がんばって助けて来い!」
こうして、二重に勘違いしたキャメロンさんのもはや全てがどうでも良くなったような
笑みに見送られつつ遺跡に出発したのです。なんてことだ!!

「てやーー!!」
途中で出てくる小さいモンスターを元気に食料化しているラヴィちゃんとは対照的に、僕は沈んでいた。
「いい加減気を取り直して!いいじゃない、勝手に言わせとけば」
「はぁ……」
今日何度目かのため息をつくと、レベッカちゃんが僕の顔を覗き込んできた。
「それとも、もしかして図星〜?」
ニヤニヤ笑いながら性質の悪い冗談を言ってくる!
「何が!?ただのバナナメイトだし両方ボケのコントだし恋人じゃなくて変人だし!」
もちろん全力で否定する! それに気が晴れない理由がもう一つあるのだ。
「ラーナは苦手なんだよなぁ……だって……」
そうなのだ!あんな過去が知れたりしたら……よく都市伝説にある、神殿の裏にあって
一週間も入っていれば敬虔な信者になって出てくる部屋に10年ほど入れられてしまう!
「なるほどね、まあ……がんばれ。ところでなんでアイツがホムなんとかだって思ったの?」
「出発の前の日に、都市の快適な環境を保つ仕事してたとかって言ってたんだ。
その時は街の清掃員でもしてたのかと思ったけど……、龍人にしては体格が小さいんだよね、ブレスも持ってなさそうだし……」
「都市管理用のホムンクルスで、自分の役目はどこかで覚えていてあの遺跡に
引き寄せられたってわけか……。確かにつじつまは合うけどねえ……
アタシはちょっと信じられないよ。そもそも過去から来たって時点で有り得ない!」
僕も信じられない。そうだとしたらあんなに人間っぽいはずはないのだ。
人につくられたものはどんなに人に似せたって、心持たぬ人形でしかないのだから……。
が、アクアさんはすっかり信じてしまったようだ。スライムだけあって素晴らしい適応能力である。

「すごーい!着いたお!!」
ラヴィちゃんが遺跡の門に駆け寄る。
「パルの足跡追跡のおかげね」
「まさしく愛の力!」
アクアさん、それは絶対違うし!!それに……
「僕はまだ……誰かを好きになっていいほど強くない……」
誰にも聞こえないような声で、呟いた。
「何してるの?置いていくよ!」
「う、うん!!」
レベッカちゃんに呼ばれ、急いでみんなを追いかける。
やりにくいことこの上ないが、人手が増えてよかったと思うことにした……。

32 :ジーコ ◆ZE6oTtzfqk :2006/11/27(月) 20:29:36
デケェ図体の割には動きが速い、最悪だな。間合いをとろうにもさっぱり融通が利かねぇ。
「おいロシェ!挟むぞ!!チョロチョロやられちゃ埒があかねぇ!!」
俺の指示通りロシェが側面に素早く回り込む。残る蛇の首は10本、俺達は2人。
ハナッから話になりゃしないが、1つだけ手があった。かなり分の悪い賭けになるがな。
「ジーコさん、駄目ですよ!!数が違い過ぎますって!!」
ひらひらりと蛇の猛攻を躱しながら、ロシェの野郎は情けねぇ悲鳴を上げてやがる。
「最低6本は引き付けろ!!分かったか!!!」
「えぇ!?む、無茶苦茶だぁっ!!」

3ヵ月前からだ。俺の愛用のハンマーに信じられねぇような異変が起きたのは。
『オンスロート』と銘打たれた特注のバトルハンマー。もう20年近く使い続けている。
常に戦場でぶん回してきた相棒を、俺は何よりも信頼している。何よりもだ。
だからこそ、俺はその異変にすぐ気付いた。
インパクトの瞬間、自分が感じる手応え以上の破壊力を発揮する事に。
最初は気のせいだと思った。だがある日ゴレムの残骸で試した時、それは確信に変わった。
それからは様々な実験を試してみた。もちろん『異変』の正体を探るためだ。
結果として分かった事は1つ。
【このハンマーは攻撃時の衝撃を蓄積し、それが一定量を越えると次の攻撃で解放される】
不便なのは貯まってる量が目に見えねぇから、だいたいの勘に任せるしかないって事だ。
だがそれも今じゃあずいぶんと慣れたもんだ。後1発ブチ込めば、ってのが分かってきた。
貯まった衝撃は『取っておく』事は出来ねぇのも不便だな。
大振りのハンマーじゃ、攻撃が当たらない事なんざしょっちゅうだ。無駄打ちは出来ねぇ。

そんでもって今、この『オンスロート』には・・・限界まで衝撃が貯まっている!!
一撃で『足付き』を木っ端微塵に吹っ飛ばす威力だ。この蛇がいくら頑丈でも無事には済まねぇ筈だ。
「おもくそバチ喰らいやがれ!!!」
蛇の追撃を振り切って、首の根本近くまで一気に走り込む!
さっきからチラチラ見え隠れしてやがる本体目掛けて、俺は渾身の一撃を叩き込んでやった!!

ドゴォオオオオン!!!!

直撃の瞬間、大地が震え、半径30m近い範囲が陥没して巨大なクレーターが出来上がる!!

33 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/11/28(火) 08:35:31
「やっと戻ってきたんだ。“僕達”はね、ずっと待っていたんだよ?ハイアット」
優しい笑みを浮かべたまま、一振りの奇怪な形状の剣を持った青年が歩いて来る。
ジャジャラを護りし『剣』と『銃』
その2体のホムンクルスが、一万二千年の時を経て再び出会った。
「久しぶり・・・なのかな」
ハイアットは苦笑して答える。彼にとっては数百年の別れでしかなかったからだ。
「君と僕が揃えば、もう一度ジャジャラは甦る。そうすればまた平和に暮らせるんだ」
遠い目で崩壊した遺跡を見回し、青年は大袈裟に両手を広げてハイアットに告げた。
「君と僕とアーシェラの三人でね」



「うわっ!?危ないなぁ・・・もう」
苔に足を滑らせ転びそうになったレベッカが悪態をつく。
遺跡内部はかなり古く、滅び去ってから流れ過ぎた時の重さを感じさせた。
「・・・皆さん、気をつけて下さい。何か、来ます!!」
アクアがそう言うと同時に床が小刻みに揺れ始める。相当巨大なものが接近して来るようだ。
「おっきな岩とか転がってくるのって、冒険物語ではお約束だよね〜♪」
「ちょっとラヴィ!物騒なこと言わないでよ、もしホントに・・・」
おどけて冗談を言うラヴィにレベッカが注意しようとして、全員の表情が凍り付く。
「「「「転がって来たあああああ!!!!」」」」
四人の悲鳴が、迫り来る地響きをBGMに見事なハーモニーを奏でた。



青年の言葉にハイアットの顔が強張る。何故なら、
「どういう意味だ!?アーシェラが生きているなんて・・・ありえない!」
無限の寿命を持つホムンクルスとは違い、アーシェラは龍人だ。生きている筈はない。
「そうか、そういえば君は居なかったからな。こっちにおいでよ、彼女も会いたがってる」
ハイアットは信じられないといった表情だったが、気を取り直し青年の後に続く。

暫く歩くと、ハイアットにも見慣れた風景になっていく。間もなくジャジャラの中枢だ。
「着いたよ。さあ、皆で再会を分かち合おうか」
大掛かりな自動扉が開き、中から現れたのはカプセルに入った若い女性の姿。
セレスティアの女王であり、そして“物”に“心”を与える技術を編み出した大魔導師・・・

アーシェラ・ムゥ・セレスティアその人だった・・・

34 :レオル ◆4y0KG/egwI :2006/11/29(水) 11:22:50
大地をも震わせる衝撃、これほどの威力ある攻撃を食らって倒れるものなどない。
更にいえばジーコは自らの放った一撃に確かな手ごたえを感じていた。
このまま敵は破壊され、完璧な決着がつきひと段落つける。

……はずだった、しかし、蛇の頭はまだ蠢いていた、本体は確実に無事ではないはずだ。
しかし蛇はまだその活動を停止していなかったのだ。
「おいおい・・・全くいやんなるぜ。」
計算が狂わされたジーコが苦笑して言う、いや、こういうしかなかった。
まだ諦めてはいない表情のジーコだが厳しいのは言うまでもない。
仲間のロシェは蛇の頭を引き付けて逃げ回るので精一杯だ、とてもではないが反撃に移れる状況じゃない。
このままではじりじりとやられていってしまうのは目に見えている。

そして今まさにジーコの後ろの蛇が食らいつこうとする時、遠くに人影が見える。
「お二人とも伏せてもらえると非常に効率がいいのですが、よろしいですか?」
静かだが不思議と響く声にジーコは一瞬の判断で体を深く沈める。
ガシャンッというようなガラスの割れるような音が一体の蛇を中心に辺りに何十にも重ねられていく、
ジーコが振り向くとそこには残骸と貸した鉄くずが、蛇の形ですらない残骸が横たわっていた。

時が止まったように静かになる、蛇はまだ随分とあるのだがそんなことは関係ないように。
人影はゆっくりジーコの方向に歩いていくる。白に赤が入っている貴族のような服装、レオル。
その凍りついた目をジーコに向ける。
「なにを呆気に取られているのですか?早くその機械を倒した方がいいですよ。」
「・・・ハハハハハ!!なんつータイミングだ、しかもオメェかよ!」
「ええ、それといいタイミングなのはこういう時の約束事でしょうに。」
「ちょっと話していないで助けてくださいよー!!」

ロシェの助けを求める声に、二人はお互いに頷き、ジーコは奔りレオルは魔方陣を展開する。
オンスロートの打撃と魔術による援護で次々を蛇を破壊していく。
しかし、六匹もの蛇を一瞬で倒すことはむずかしく、ロシェに一匹の蛇が向かっていく。
「ひえぇぇぇ!!かわせないぃ!!」「そのはめている指輪を使ってください!」
間に合わないのに気が付いたレオルは咄嗟にロシェに言う。
「どうやって!?」
ロシェがこう言うのも無理はない、彼がはめている指輪、それが何の意味を持つのかロシェに判断する術はない、
ましてや使うと言われてもどうしたらいいか分からないに決まっている。
「いいですから、はめている方の腕を振り上げるだけでよいのです!」
何かして初めてわかることというものもある、ロシェは腕を振り上げ夜の暗闇に指輪を置いて
初めて指輪が、大切な親の形見がかすかに光っていることに気付いた。
そして蛇が腕に触れた瞬間、指輪は眩い閃光を放ち、蛇は崩れるように消えていく。
最後の蛇が崩れ落ち、戦いは終わった…………

「しかし、なんでオメェあいつの指輪にあんな力があるって分かったんだ?」
ジーコの素直な質問にロシェも興味を抱く。ロシェでも知りえなかったことをなぜ知っていたのか?
「別に、知っていたわけではありません、ですが、男が指輪を着けるというのは戦場ではあまりない。
 つけるとしたら、親しい人の贈り物、親の形見、様々な想いがこもっているものだと思ったからですよ。」
レオルの回答に二人は困惑する、答えにまるでなっていないからだ。
「いや、確かにこれは親の形見です、でもだからなんで分かったんですか?」
「……だからですよ、その指輪には親の生き方そのものが込められている。
 親は子を守りたいものでしょう、親である指輪が貴方を守ったにすぎませんよ。」
話しを聞いていたジーコは自分の槌を見てレオルに聞く。
「ってことは、俺のオンスロートも20年の付き合いだから不思議な力が宿ったのか?」
「……察しが良いですね、その通りです、いま、“世界”は変わろうとしている、いや、すでに変わりました。」
なにを知っているのか、どこまで知っているのか、もしかしたら全てを知っているかもしれないレオル。
その淡々とした冷静な表情からはなにも読み取れない。
「オメェ・・・一体何モンだ?」

「言いませんでしたか?≪味方殺し≫のレオル・イザードですよ。」

35 :リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/11/29(水) 22:23:28
凄まじい勢いで地面が迫って来る!いや、正確には凄まじい勢いで地面に向かっている。
リッツは重力には勝てなかった、至極当然の結果ではあるが。
「うおわあああぁぁぁああ!!!」
ドンッ!!雪を跳ね上げて地面に激突した…かに見えたが、実際には違っていた。
落下の瞬間にリッツは地面を全力で殴り付けたのだ。もちろんだが意味は無い。
当たり前である。

地面を殴り衝撃を相殺するという発想に辿り着いたまでは良かった。
だが向きを計算する頭脳が足りなかった。それも致命的な程に。
人間とは、何かしらの長所と引き換えに短所を持っている生き物なのだ。
リッツの場合、それが頭の悪さだっただけで、これは人間として仕方の無い事なのである。
「くそ…マジに死ぬかと思ったじゃねーか!!」
あの高さから落ちてこんなセリフが出てきた時点で、人間としては少し間違っている気はするが。
「そういや他の連中はどうなってんだ?」
リッツは駆け出す。仲間の無事を確かめて、それからルフォンの格納庫を破壊する為に。
いくら闘志の炎が燃え上がっていても、それだけは譲れない。
敵を倒しても仲間を死なせたら、リッツにとってそれは敗北でしかないのだ。


――ルフォン発掘兵器格納庫
グレナデア、かつて世界を作り替えた獣イルドゥームを滅ぼす為に造られた存在。
しかしイルドゥームの圧倒的な力の前に、グレナデアは無力だった。
ロールアウトした計3機のグレナデアは、1機目が破壊された際に残る2機は破棄された。
その後アグネアストラが造られたのだ。毒を以って毒を制す、この考えは正しかった。
かくして危機は去り、再び訪れた平和の中にグレナデアは埋もれていったのである。

「これが…グレナデア……」
余りに巨大な存在に、アビサルは驚きを隠せなかった。
大極天球儀から得た空間情報と、実際に自分の目で見るのとではまるでスケール感が違う。
「シバ様、自分は隠し事など……しておりました申し訳ありませんでしたーッ!!」
あっさりと白状するエンラに、シバは笑顔で軽いゲンコツをくらわす。
「修羅が出たんじゃのぅ…センカめ、あやつ1人で行ったか…」
「私は…い、一応止めたりしたのですが…聞き入れては頂けませんでした…」
うなだれるエンラを憐れむように、シバは目を細めて見つめ続けていた。

36 :レベッカ ◆F/GsQfjb4. :2006/11/29(水) 22:24:25
「綺麗だろう?でもこれは入れ物にすぎないんだ。からっぽなんだよ彼女は」
カプセルを愛おしげにそっと撫でて、青年は続ける。
「あの日ジャジャラはイルドゥームによって滅びた、アーシェラもその時に死んだよ」
「それじゃあ…その身体は……まさか!?」
ハイアットは震えを止める事が出来なかった、脳裏を過ぎった『答え』に恐怖したからだ。
「ふふ…そのまさかだよ。彼女は用意していたんだ、『予備の身体』をね」
青年のセリフが終わらぬうちに、力無くへたり込む。
そう、『予備の身体』…それはすなわちホムンクルスの素体!!


――遺跡内部の通路
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴコ!!!!!
地響きを立てながら迫り来る巨大な鉄球から、アタシ達は必死に逃げる!!
てゆーか洒落になってないっつーの!!なんでこんなのが転がって来るのよーッ!!!
「ぱ…パル!何とかしてーッ!!」
「無理ッ!!」
「だよね!!」
即答するパルを責める事は出来ない。そりゃそーだ、アタシだって同じ返事するもん。
「皆さん!左側に曲がり角があります!」
アクアの発見は全員に希望の光を与えてくれた……かと思った。
「…って行き止まり!?冗談でしょう!?」
悲鳴混じりのアクアの声が聞こえた瞬間、すごい脱力感。あ、これヤバイ…
「今ふと気付いたんですが…私はスライムなので潰れても平気でした」
「「うわ!ずるい!!」」
パルとラヴィがハモった。アタシは息が切れて乗り遅れ。てかマジ限界っぽいんですけど!?


――ジャジャラ中枢
「どうやら来たようだね、『中身』が」
青年が手を翳すと壁面に映像が映し出された。4人組…全力疾走中のパルス達である。
「アーシェラは自らの記憶及び人格情報を3つの楽器に封印したのさ。いつか来るこの日の為に」
映像が拡大表示され、パルスとレベッカの持つ楽器《アーシェラの瞳》が鮮明に映し出される。
「1つ足りないのは予定外だったけどね、それも今となってはどうでもいい事だよ」
何も言えずに黙り込むハイアットの肩を叩き、こう付け加える。

「その代わりに、もっと素晴らしいものがあるからね。生まれ変わった彼女の魂が…」

37 :ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2006/12/01(金) 21:53:55
モニターを通じてパルス達が来ていることに気付く。
駄目だ、来てはいけない、そう思ってもそれを伝える術は僕にはない。
なんでこんなことになってしまったんだ。なにもいえずに黙ることしかできない。
「その代わりに、もっと素晴らしいものがあるからね。生まれ変わった彼女の魂が…」
信じられない言葉が聞こえた、生まれ変わった魂…それを使う気なのか?
「やめろ、やめろぉぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!!!」
ホルスターから銃を取り出しアーシェラの入ったカプセルに向ける。

「無駄だ、君にはできない、だって君は彼女を愛している、違うかい?」
引き金においた指が震える…引けない、引けない……なら!!
銃を青年に向ける、こちらの銃に気付いた青年がいち早く剣を伸ばし僕の腕を突き刺した。

「ハイアット、どうしたんだ、君が一番彼女に会いたいはずだろう?」

確かに僕は彼女に会いたかった。どんなことをしても過去に戻らなければならなかった。
僕が今まで支えられてきたのも彼女の存在があったからだと言っても過言ではない。
想い続けてきた人が手の届く位置にいる、それがどれほど嬉しいかも分かっている。
でも信じたくない、彼女が自分の体に保険をかけるなんて…
そんな、そんなだったら、僕はなぜ彼女に惹かれたんだろうか?なんで彼女を思い続けたんだろう。
生も死も同じ僕たちに生を教えてくれた彼女は、不死なんて憧れていなかった。

彼女は用意していたんだ、『予備の身体』をね

「そんなわけない!違う!それは違う!!彼女はそんな人間じゃない!!」
青年の言葉がフラッシュバックし僕を蝕む、自分がおかしくなっていく感覚。
自分が崩れ落ちていく感覚、立っていることもままならないほどの吐き気。

アーシェラは自らの記憶及び人格情報を3つの楽器に封印したのさ。いつか来るこの日の為に

「………………っっっっっ!!!!」
その瞬間、僕は自分の何かが壊れたのを感じた。事切れたかのようにその場に崩れ落ちる。
なにも分からない、何も考えられない、全てを全否定された、僕の生き方も全部。
これまで過去に戻ろうという考えも、全てを否定された………

あの風の中で聴いた君のピアノの音は―――――今はもう聴こえない。

38 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/01(金) 23:06:45
「ええええ!?このまま帰すんですか?」
シバの余りに意外な言葉にエンラが聞き返してしまう。
好奇心だけで拾ってきたとはいえ、隠衆たる自分達の顔を見られ、あまつさえグレナデアまで見たアビサルを帰すといわれては無理もない。
「傀儡の術を施している時間も無いしの。修羅が相手ではセンカでも手に余ろうて。
ならばあの嬢ちゃんの影に入り、連れて行ってもらうのが良策というものぢゃ。」
「・・・修羅と戦いたいだけの癖に・・・」
「なんかいったかっ!?さっさと準備せんか!」
「はいぃ!」
ぼそっと呟いたセンカにシバの怒鳴り声が飛ぶ。
忍び特有の会話法、『ヤマビコ』で行われたやり取りで、アビサルにまったく気取られることなく二人の会話がなされていた。

##################################################

部屋から出ると雪は既に止んでいた。
二人のコボルドのやり取りの様子を不思議そうに見ていると、空から光がさしてくる。
大雪を降らしていた雲が去り、十六夜の月が夜の暗闇に刺すような冷たい光を落としたからだ。
光に照らされ、顕わになる巨体。
「これが…グレナデア……」
思わず呟きがもれてしまった。
太極天球儀から得られた空間情報や無機質な数値データでは決して得られぬもの。
凶星というに相応しい圧倒的な質量に、そして禍々しいオーラに私は震えた。
ソーニャさんはこんなものを手に入れてどうしようというのだろう・・・?

「これを巡って公国と王国が戦争をしていてな、ここらを塒にする儂等はいい迷惑なんじゃよ。」
まるで私の考えを見透かすようにシバが声をかけてきた。
縦目仮面を被っているから表情はわからないはず、そう思うのは私の浅はかだった。
オーラや態度に私の戸惑いは十二分に表れていたのだろう。
「お・おじいさん。これは、目覚めさせてはいけないもの、です。存在意義を奪われた者の無念が・・・溢れ出ています。破壊の象徴・・・!」
「そうじゃとも。愚かにも公国も王国もこれを手に入れ戦い使おうとしておる。」
「・・・」
どっと汗が吹き出るのがわかった。
私は今、始めて戦争の狂気を感じたのかもしれない。
あらゆる正義と憎しみが交差し、人を狂気に駆り立てる。なんて不毛な・・・。
「・・・これは、ぼ・僕が・・・星界へ、追放・・・します・・・!」
自分の判断が正しいかどうかわからない。
でも、これはもうこの世界に存在してはならない、と思うから・・・。

太極天球儀を展開させ、意識を集中させようとすると、『バチッ』と弾かれる様な音が。
それは展開した力場にシバが弾かれた音だった。
「イ、イカン。公国兵が来たんじゃ!今は逃げるんぢゃ!」
弾かれた肉球から煙を上げながら搾り出すように警告をしてくれた。
まだ見えないけど、熱源が複数見て取れる。
振り向いた時には既にシバが先行しているので、慌ててその後を追う。
落ち着いて観察すればそれがエンラの工作だと見抜けたかもしれない。でも、それをさせない状況を作ったシバの老獪さが上をいっている。

39 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/01(金) 23:07:46
しばらく逃げた後、岩陰でようやく一息つけた。
「お嬢さん、あれを封印できるのなら一番ええが、公国兵が見張っておるからのう。
そうじゃ、これをやろう。」
シバが渡してくれたのはレジスタンスの野営地から格納庫までの抜け道の地図だった。
大人数で来るには適していないが、少数でなら公国の監視網にかからずに到達できる。
レジスタンスの強い者、精鋭だけを集めこの地図を使いもう一度戻ってくるように、と。
そしてグレナデア封印を行って欲しい。
それがシバから地図と共に託された願いだった。
「あ・ありがとう・ございます・・・。では、一度ソーニャさんのところへ行きます、ね。」
お礼に頭を下げ、あげたときにはシバの姿は無かった。
現れた時と同様、去るときも気付かせないその手際には驚いたが、今は一刻も早く帰りたかった。
疑念を早く打ち消したかったから。
ソーニャは恐ろしい兵器を利用するような人ではないと、封印に賛成してくれると。
私の何の根拠もない、縋るような願いを確かなものにしたかったから。
だからシバが私の影の中に潜んでいるなんて気付きもしなかった。

「ソーニャさん・・・いた・・・。強い星が集まっている・・・。
座標軸確定、進入角確定、重力反転、斥力生相・・・・」
位置と角度を確定させ、重力を反転。
私は空に向かって落ちていった。
高く高く体が上がるにつれ、地上に残る私の影は小さく頼りなくなっていく。
そして一定面積を割ったとき、その影からシバがはじき出されるように飛び出てきた。
「ぬぅ、ぬかったわい。まさかあのように飛ばれるとは。しかたがない!」
渋い顔で豆粒ほどにまでなったアビサルを見送り、その場から姿を消した。

地上でそんなことがあっただなんて露知らず、私は上空で太極天球儀に手をかざしていた。
そこから読み取れるものは【謀略・利用・狡猾・老獪・術数・闘志・虚実混濁・・・】
ショックは受けなかった。
騙されていたわけだけど、私のグレナデア封印するという事には変わらないから。
頂点に達し、斥力が消え徐々に重力が作用してくる。重力に引かれ私はルフォン野営地へと落ちていった。

重力制御でふわりと舞うようにソーニャさんの横に降り立つと、周囲の兵士が槍を突きつけてくる。
襲撃直後に突然空から降って沸けば当然な対応だろう。
ソーニャさんが怒鳴りつけるように私の事を説明してくれ、槍は下がる。
仮面をとって挨拶をしようとしたけど、思わず声が喉に詰まってしまった。
ソーニャさんの脇越しに見える三人のオーラに。

それはまるで岩。目の前に聳え立つ巨大な岩山。
それは静寂の野。風も、木も何も無い、ただ寒々と広がるイメージ。
それは脈動する生命。荒々しく輝く生命の伊吹。そして、世界を食らう獣。

思わずソーニャさんの後ろに隠れてしまった。
でも、それじゃいけない・・・。
「ご、ごめんなさい・・・。術の影響で気絶しちゃって、ちっ近くに住むコボルドのおじいさんに手当てしてもらっていたんです。
それで、これ・・・。そのおじいさんから貰った地図、です。」
喉がからからでうまく喋れないけど、何とか伝えて地図を差し出した。

40 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/12/01(金) 23:42:32
もうすぐ目の前まで巨大な鉄球がせまっておりました。絶対絶命でございます。
「あ、もうダメ・・・・・」
レベッカさんがその場にへたりこんでしまわれました。
その時でございました。

「ここの壁の隙間から風が吹いてるよぉ!!」
ラヴィさんが行き止まりの壁の隙間から風が吹いてるのに気がついたのは。
「「「そこだぁ!!」」」
四人一斉に、ここ一番力一杯の蹴りを壁に打ち込みました。

ぎぎぎぎぎぎ・・・・・と音を立てて隠し扉らしき場所が開いていきます。鼠が通れそうな程開いて
扉はそこでとまってしまいました。悠久の時が扉を塞いだのでしょうか。
「ダメダァーーーーーーーー!!イヤーーーーーーー!!」
レベッカさんがますますもって大変な事に・・・・・・・・

「5分あれば扉をたたっきれるよぉ!!」
ラヴィさんのその言葉に私は迷わず鉄球に向かって駆け出しておりました。
スライムの特徴の1つに形状変化と言う物がございます。
体を通路と同じ大きさまで膨張させ出来うる限り硬い硬度まで硬くします。
「もって3、4分です!!私は潰れても平気なのでその間になんと・・・・・かぁああああ」
叫んでる間に私の体に重たく回転を加えた鉄球がめり込んでまいりました。
皆様が脱出するまでなんとか時間を稼がなくては。

「レベッカちゃん!!しっかり ラヴィちゃんをサポートするよ!!」
パルスさんがレベッカさんの背中を叩いて一喝を入れております。
「わ、わかった!!」
立ち直ったレベッカさんが大きく一息入れて楽器を手にいたしました。
「はぁああああああああああ・・・・・」
ラヴィさんは剣豪のごとく愛用の包丁を構えて扉に向かっております。
ピシ・・・・と少し私の体が悲鳴をあげ始めておりました。


41 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/12/02(土) 01:48:26
〜♪〜
前に進むって 決めたなら
立ちはだかる壁片っ端からぶち破れ!
限界突破の波動 伝わってくるでしょ?
Limit brake! 君の前に道は無い!
Non stop! 君の後ろに道はできる!
〜♪〜

さっきまであんなに走っていたのに大したものだ。どうやらこういう状況専用の呪歌もちゃんとあるらしい。
ラヴィちゃんの猛攻により、扉にひびが入り始めた。
「もう少し……なんだよぅ!」
僕は何をしているかというとショールを棚引かせながら華麗なダンスを……
「背景でタコ踊りしてないで手伝って!」
と、間奏中のレベッカちゃん。これには深い意味があるのだ。
「みなさんっ!逃げてください!!」
そうこうしているうちにこっちが限界突破したらしく
鉄球が再び転がってきた!ちなみにアクアさんは張り付いたまま……。
その瞬間、【ダンス・マカブル】剣を頭上に掲げる決めポーズで完成!
黒星龍に祈りを捧げ、破壊の力を借り受ける舞踏だ。
「あと一分足りないお!」
「いやーーっ!?」
そんな二人の悲鳴が響く中、天井近くまでジャンプする!!

空中で剣を両手に持ち替え、上段に構える。
握っているのはもちろん、植物すら切れない上に人を半裸化するしか能の無いどうしょうもないやつだ。
だからこそ、これに賭ける!

「とおッ!!!」
裂帛の気合と共に扉の上部に突き立てる!
すると……嘘みたいにサクッと剣先が貫通する。
「あれ?」
拍子抜けしたついでに重力のなすがままに落下!扉の下まで切れ込みが入る。
それと同時に扉の壁にくっついてない方半分が分離して倒れた!
一瞬遅れてラヴィちゃんとレベッカちゃんがその中に飛び込み、僕はそのついでに押し込まれる!
さらに一瞬遅れて鉄球が轟音を立てて目の前を通過していくのだった……。
その様子を見つめながらラヴィちゃんとレベッカちゃんが顔を見合わせてしみじみしている。
「助かった……けど変態剣に負けたのはちょっと悔しいんだお……」
「服しか切れない真半裸ソードのくせにどうして……」
ザコ山賊半裸事件によりナイスな愛称がたくさんついてしまったが
これでよく分かった。不思議なことに物質は異様によく切れるらしい。
「あ!アクアちゃんは!?」
「私なら大丈夫です」
人型に戻ったアクアさんが何事もなかったように歩いてきた。スライム強い!

逃げ込んだ場所を見回してみると、さっきまでとは明らかに雰囲気が違う。
天井や壁の至る所に刻まれた古代文字、いたるところに設置された魔法装置。
扉が古くなって開かなくなったのではなく、初めから普通は開けれないようにしてあったとしたら。
ここからはおそらく古代王国の上層部だけが知っていた一般の人々からは隔絶された領域……。

42 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/12/02(土) 01:49:50
その日、ガナン政策ブロックは荒れに荒れた。
予想だにもしなかった場所で次々と謎の火の手が上がったからである。
「過激派だあああああああーーーーーーっ!!!」
屋敷の外から聞こえるどこぞのアホの絶叫、続いて起こった意外と近い爆発に、カールトン・レーゼンバッハはガクっと膝の力が抜けるのを感じた。
「……我が国に過激派なんぞおったか?」
「はて……この場合、王国側の破壊工作員の線を疑うべきかと?」
副官の自信なさげな言葉に、この戦場の匂い漂う壮年の龍人は仰々しく椅子から腰を浮かして言った。
「かもしれぬが、その線では余りにも手際が良すぎる。あれほどの量の爆発物を密かにガナンに持ち込む事は困難至極。
更に言えば、密かに仕掛ける事など不可能と言っていい。ここは、内部の者によって予め準備されていたと見るべきだな」
整えた立派の口髭をしごきながら、カールトンは執務室の隅を飾っていた長槍を手に取った。
「内部の……? まさか、裏切り者のライヒハウゼンが?」
「さあてなあ……?」
上半身を投擲の体勢に固めたまま近づいてくる当主に、副官は噴き出す恐怖の感情を必死に抑え込んだ。
ギシリリと筋肉と間接の力む音が聞こえてくる。果たしてどれ程の威力になるのかと生唾物のそれを、
「ま、すぐにわかる」
カールトンは真下へと、つんざくような鋭い呼気とともに打ち下ろした。

「おんっぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!???」

床をぶち抜いた槍の行く末に思いを馳せる間もなく、足元から地獄の亡者の叫びが聞こえてきた。
「な、なななななな何が!?」
「うがぎゃギアがさおえっぱぎぎぎっぎええええええええええええ!!!!!」
物凄い勢いで床を震わせ現れたのは、豪奢な貴族服に身を包んだ少年であった。
服装に見合って顔立ちも結構な出来映えのはずなのだが……今の少年の第一印象を例えるなら、陸揚げされたトラフグといったところか。
まあ、どてっ腹を槍が思いっきり貫通していては無理もない話である。
「ぅ若ああああああああああああああああ!!???」
「あぎぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
そのまま、少年は呆気にとられる副官の脇を抜け、執務室の扉に鍵をかけた。
「あ」「馬鹿者!!」
幾重にも合金が用いられた特注の扉である。破城槌を持ってしても、ぶち破るのには数時間を要するだろう。
つまり、このままでは応援は絶望的。
瞬時に少年の狙いを把握した当主の叱責に、副官が慌てて剣を抜き、ドアに手を伸ばす。
「めりぃぃいいいいいいいいいい!!!」
させるものかと仁王立ちの少年の叫びに眉をしかめた瞬間、
「…………あれ?」
副官は、自分の体が執務室の壁にめり込んでいるのに気がついた。

自分が作り少年が広げた床の穴から飛び出した影が、電光のような右フックで副官を壁画にしてしまうのを見て、カールトンを感嘆の口笛を鳴らした。
「クックック、余裕じゃのうカールトン。果たしてどこまで…おぶっ! ぐえっふっごっほげっほ……!?」
「……まったく、大した行動力と生命力だよ。パルモンテの子倅殿?」
盛大に吐血を繰り返しながら、偉そうな態度を崩さないイアルコ少年に苦笑。
「……なるほど、確かパルモンテ家はガナン建設に最も深く関わった家であったな。それなりの仕掛けはあって当然か」
「そそそ、その通りじゃああああ……っ! 覚悟せぇよ! おんどりゃあタマとったるけぇのうっ!!」
「若っ! 若っ! 御気を確かにぃいいいい!!」
いくら待っても死にそうにないイアルコ。それを支える老執事。何故かお茶の準備にかかる不気味なメイド。
それらを泰然自若と見据えたまま、カールトンは素早く、執務机の上に置いてあった得物に手を伸ばした。
「メリィィィイイイイイイイイっGOォオオオオオオオオオオ!!!!」

イアルコの叫びとほぼ同時に、解き放たれた銃火と疾風が、嵐のような交差を見せた。

43 :ジーコ ◆ZE6oTtzfqk :2006/12/03(日) 15:13:09
へっ、すました野郎だぜ。だが助かった、あのままじゃあ俺は死んでただろうな・・・。
「よォ、こりゃどうなってんだ?」
「見て分かりませんか?今現在我々は敵の襲撃を受けているのですが」
「ンなこた分かってんだよ、俺が言いてぇのはなんでテメェはそんな実力を隠してたのかって事だ」
「なら最初からそう尋ねればよいではありませんか。貴方は言語能力に問題がありそうですね」
顔色一つ変えずにさらっと言い切りやがった、ついカチッと来たが何とか我慢する。
こんな所で無駄口叩いてる暇なんざ、これっぽちも無ぇからな。
「部隊の方はどうだ?動ける数が足りねぇと格納庫に人を回せねぇぞ」
「心配は要りません。既に大多数は避難を完了しましたから。しかし負傷者の数はまだ不明です」
「そうか・・・よし、それじゃ後は任せたぜ」
「どちらに行かれるのですか?」
オンスロートを構え直した俺を見て、うろん気な顔になるレオルに俺は言った。
「決まってんだろ、これからカチ込み食らわしてやるのさ」
「やはり貴方は馬鹿ですね、間違いない。」
「俺はオメェみてえに賢く生きられねぇんでな」
そうさ、不器用なやり方しか出来ねぇ。だがそれでも構わねぇのさ。それが俺の生き方だからだ。

「おっ、こんな所にいやがったか!」
背後からの呼び掛けに俺とレオルが振り返ると、そこには白髪小僧が立っていた。
どうやらコイツも戦っていたらしい。服はボロ布のように傷んでいる。しかし負傷は見られない。
「元気そうじゃねぇかよ白髪小僧。これから連中に一発食らわしに行くんだが、来るか?」
「おぅよ、でもその前に他の仲間達は無事か?」
「ああ何とか避難したようだ。体勢を立て直すのに時間は掛かるだろうからな、置いて行く」
「そっか・・・無事ならいいんだ。敵側にも時間をくれてやる訳にゃいかねえし、行くか!」
「・・・やれやれ、全く困った人達ですね。まあいいでしょう、私も同行致します」
突然レオルが自分の意見をひっくり返した。一体何を考えてやがるんだ?どうにも読めねぇ・・・。
「勘違いしないでいただきたい。私はあくまで当初の予定通りに行動しているだけですから」

そういえばそうだったな、確か3人で乗り込む段取りだったか。
そうと決まれば話は早い。さっさと突入してグレナデアをブン取るだけだ!!

44 :ジーコ ◆ZE6oTtzfqk :2006/12/03(日) 15:14:50
俺達がルフォンに向かおうとした時、後方の兵達が悲鳴を上げた。
「な・・・雪崩が来るぞーっ!!!」
なんてこった!今夜の大雪で新雪がかなり積もっていたのか!?
蛇ゴレムの暴れた衝撃は、ルフォンの周囲に連なる山々を揺らしていたって事かよ!!
白塵のうねりがゆっくりと近づいて来る!
「おい!このままじゃ山の裾に集まった部隊が全滅じゃねぇか!!」
狼狽する白髪小僧、何やら考え込むレオル、当然俺には雪崩をどうこう出来る訳が無ぇ!!
「フン・・・アビサルを捜して回ってりゃ、随分と大変な事になってるじゃない」
女が居た。まるで燃えたぎる火のような・・・赤い髪の女。コイツはどこかで見た記憶が・・・。
「あーっ!!テメェ赤毛!!何しに来たんだよ!!」
白髪小僧が赤毛の女を指差して叫んだ。と同時にレオルも女が何者なのか気付いたようだ。
「ほぅ・・・レジスタンスの『爪』と『牙』が揃うとは。興味深い組み合わせですね」
『爪』?ってまさかあの『炎の爪のソーニャ=ダカッツ』か!?

とんでもねぇ事になってきやがった・・・先の中央戦線で暴れ回った『爪』と『牙』の2人が揃った!?
俺は震えが止まらなかった。噂でしか聞いた事はないが、奴らの力はおそらく本物だ。
何故なら、「火の無い所に煙は立たない」からだ。
事実、奴らが向かった戦場は全て王国側が勝利している。圧倒的な戦力差があったにも係わらず。
一体どのような力を持ってるかは俺も知らねぇが・・・コイツらは間違いなく強い。

「下でウロウロしてる間抜け連中がどうなろうと知ったこっちゃないけどね・・・」
そう言ったソーニャの周りに陽炎が立ちのぼる!
「あの雪崩を放っておいたら、可愛いアビサルが巻き込まれるかもしれないしねぇ・・・」
ゆらり、ソーニャの髪が炎に変わる!!
「だから消し飛ばす!」
手を翳した先には照明の松明。それが突如爆発して炎が蛇ゴレムの残骸に襲い掛かる!
「あの子はこう言ったよ。『ガスが詰まってる』ってね。雪崩を飛ばすにゃ火力が要る」
残骸の中身に引火した松明の炎は、山を飲み込む程の巨大な爆炎となって雪崩を消し去りやがった。
「それにアタシは寒いのが嫌いなんでね」

おどけた調子で肩を竦め、深紅の魔人はそう言うとニヤリと笑った。

45 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/04(月) 00:22:23
イアルコはメリーが勝つと信じて疑わなかった。電光石火の踏み込みでメリーの拳が唸る。
しかし、次の瞬間には出鱈目なダンスを踊るように宙を舞うメリーの姿。
カールトンには傷一つ無く、メリーのメイド服は銃撃によって穴が穿たれていた。
「なッ!!!!」
あまりの驚きにイアルコは呆然となった。あのメリーが一撃も当てる事も出来ないなど…
「…ありえぬ」
絞り出すように呻くイアルコ。メリーの体がドサリと床に倒れ、カールトンは憐れむように言う。
「私を倒せるとでも思ったのかね?至極つまらない冗談だな」
銃口をイアルコに向け、残念そうな表情で首を横に振る。
「父親に会わせてあげよう。君の小さな勇気に対する私からのご褒美だ」
「させません」
引き金を引く直前で、跳ね起きたメリーが銃を持つ手を蹴り飛ばす!
そこから反転して回し蹴りを繰り出すがカールトンの姿は既にメリーの背後に移っている。
「…ッ!!」
即座に反応するメリーの肘打ちも、やはり空振りに終わる。力の差は歴然だった。
カールトンは12貴族の中でも上位に位置する強さの持ち主、その実力は未知数なのである。

再び対峙するメリーとカールトン。じりじりと間合いを狭め、互いに出方を伺っている。
永遠にも似た数秒の間を終わらせたのはカールトンだった。
銃口を素早くポイントし、迷わず撃つ。狙うはイアルコだ。当然メリーはそれを阻止する。
疾風迅雷、まさに瞬間移動の如き早業で弾丸の軌道に割って入りイアルコの盾となった。
「……若様…許可…を……」
息も絶え絶えに言うメリー。傷付き今に倒れそうになりながらも、彼女は踏み止まる。
「きょ、許可?」
「…はい…若様に……銃を向けた…狼藉者を…地獄に叩き込む許可をいただきたく…」
この期に及んでもまだ勝利を諦めぬメイドの背中を見つめ、イアルコは主として命令した!
「うむ!許可する!!フルボッコにしてやるがよい!!」
「かしこまりました」
メリーが応えると同時に、彼女の両腕が鈍い機械音と共に“変形”した。
ガトリング砲となった両腕が一斉に火を吹く!轟音が鳴り響き、弾丸の嵐が全てを薙ぎ倒していく!!

「ちょ!?め…メリー!!!?」
予想外の出来事に、またもや呆然とするイアルコ。隣のジョージが苦い顔で呟いた。
「やはり、ヴァルキリエでしたか…」

46 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/04(月) 00:23:15
砲撃が止み、硝煙が立ち込める室内に静寂が戻ってくる。
カラカラと崩れ落ちる細かい瓦礫の音、そして、余裕とばかりに拍手するカールトンの嘲笑。
「ようやく本性を出したか、人形め」
硝煙と粉塵が吹き飛び、カールトンの姿が露になる。衣服はボロ布のようになっていた。
「全く珍しい物を拝見した、まさかまだ動く機体が残っていたとは驚きだ」
残念げな表情で無惨な状態になった衣服を軽く払い、カールトンは話を続ける。
「セレスティアが造りし戦闘用ホムンクルス『ヴァルキリエ』シリーズ。
 本当に驚きだよ。下級氏族のメイドにしては高い能力だと思ったがそれ…」
「黙れ」
一切感情の無い冷たい声と、再び火を吹く両腕がカールトンの台詞を遮る。
「痛いじゃないか、それに屋敷が目茶苦茶だ」
砲弾の直撃を受けている筈なのに、平然として室内の破損具合を見回しているではないか!
「…!」
メリーが眉をしかめる。その事実にイアルコは衝撃を受けた。
彼の知るメリーは常に無表情だった。どのような時も眉一つ動かす事はなかったのだ。
だがしかし今確かにメリーは眉をしかめた、つまりそれほどまでの強敵だという事なのだ。

イアルコの脳裏に一瞬だが逃げるという考えも横切る。完全に相手を嘗めて掛かっていた。
このままでは返り討ちにされるかもしれない。だがイアルコにも退けぬ理由がある。
父の無念を晴らし、公国内部の陰謀を叩き潰すという目的がある。今ここで退く訳にはいかない。
しかし勝てる見込みは窮めて薄いのもまた事実。決断を下さねばならなかった。

ガトリング砲が弾切れとなり、メリーは更なる変形を始めた。
捲り上げたスカートの下から現れたのは、すらりと伸びた美しい脚。その脚に縦の亀裂が走る!
ガシャ!横にスライドして迫り出し、展開したのは20連装マイクロミサイルポッド!!
夥しい数のミサイルが発射され、屋敷の一画は爆炎に包まれる。
「メリー!ここは一旦退くのじゃ!!」
突き刺さる槍を乱暴に引き抜き、イアルコは叫ぶ。今は逃げる、そう決断したのだ。
メリーの体や役に立たなかったジョージについてあれこれ言うのは後からでも遅くはない。
主の命令にメイドは頷くと、背中から現れたブースタを点火させて屋敷から脱出する。
勿論、主と執事をそれぞれの手に掴んでいるのは言うまでもない。

47 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/04(月) 01:33:44

「聞いたかの? 攻撃隊の一方は三人だと」
ルフォン山麓のレジスタンス野営地に到着したのは夜明け前のこと。
リザードマンたちが設えた湿原の「整地」は完璧で、
冬眠期に入った非友好部族の集落を幾つも通過ポイントに利用し、合流までの行程はおよそ二日分を短縮した。
それでも間に合わなかった事からして、よほど戦況は切迫しているらしい。
私たちの準備は、公国軍基地襲撃の計画日に合わせての行動だったが、これは
「聞いてないわ」
私たちは夜襲の第二波に備えて移動中だった本隊と途中合流し、
こちらの輜重隊を引き渡すとすぐに斥候活動へ同行。
レジスタンスの兵たちは鹵獲ゴレムを先鋒に百余騎、私とシャミィも騎乗し後へ付き従う。
夜明け近くだが日は山の裾に隠れて未だ昇らず、雪は弱まりつつも、視界の不自由に変わりは無い。

私たちが隊の後列に就いているのは、無理やり積んだ装備が重くて馬の足が遅れがちなシャミィと併走しているせいだ。
彼女は馬の鞍に一門の大型魔導銃「霜乃武(しものふ)」をぶら下げている。
銃は私の身長より、勿論彼女よりも大きい。およそ人間と戦うための武器には見えない。
長大な砲身に無骨な機関部、銃架付き。
遠く南方から流れ着いたニャンクスの傭兵は、偶然手に入れたこの銃に心底惚れ込み、
幼少から長らく嗜んでいた剣術さえとうとう捨ててしまった。

「ジンはあの、いけ好かない王国騎士団長とやらと話をしたのでは?」
振り向いて、片手に持ったランタンの灯をシャミィへかざすと、彼女の金の瞳は眩しげにまばたきうつろった。
「したけど」
シャミィが手を振ってランタンを避けるよう指図する。灯りを下ろして、
「彼が私に教えてくれたのは、作戦の即時凍結と方面軍再編成。
三人の男が茶碗の船で海へ漕ぎ出した話なんか、おくびにも出さなかったわ」
レジスタンス隊との、ほんの数時間前のランデブーを思い出す。
騎士団長アルト=サイカーチス、彼が私たちの応対をした。


48 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/04(月) 01:34:30


「敵は未確認の新型ゴレムと聞いた。
どうやら我々は、実地試験の的に使われたらしい――ふざけた話だ」
騎士団長は齢三十ほどの背の低い男で、紅白二色の制服に、凍えた防寒具を羽織って座り込む。
印象は冴えない。労苦に蒼ざめた表情の中、両の眼ばかりがぎらつく。
口髭に付いた霜が、焚火の熱で溶けて滴っている。濡れた髪からも。
俯いたまま、向かいに座る私の顔を見ようともせず、アルトは誰へともなしに言葉を継いだ。
「指揮系統の混乱があって、奇襲直後に隊を分断された。
連絡の取れない彼らはルフォン攻略の主力部隊の一部だ。作戦は延期される」

焚火の周囲は、馬車の隊列を行き交う兵たちで慌しい。
降りしきる雪と宵闇の中、号令、点呼、湯と薬とを求める声が四方から発せられる。
怪我人を運ぶにも、最寄で安全な基地までは大分距離があった。
一度ばらけてしまった編成を繕いながら、睡眠不足と負傷者のための休憩を接ぎながらの移動だ。
今夜の合流は、彼らの最初の休止を私たちの隊が捉まえる格好となった。

団長は消息不明の補佐官に代わって、隊付きの紋章官ひとりに業務を任せていた。
忙しい最中、彼がわざわざ焚火に私を招いた訳は分からない。
恐らくは、一大戦地を前にして突然の部下の背信、
そして遅ればせに現れた傭兵気取りの小娘の顔を見て、己の身を哀れむに足る窮地と自覚するためだったのか。
消えた補佐官とレジスタンスの隊長たちは、手ずから兵隊を連れて勝手に追撃へ出た、との噂を私は耳に入れていた。
「生憎と、夜襲を受けた野営からここまで大した距離はない。
手練の者を集めて斥候にする。可能ならば救出隊も出したいが、まずは我々が逃げ延びなければならない。
荷物は御苦労だった。だが正直に言って今の所、君に教練を頼んでいるような余裕はない。
そこでつまり、君たちの役割は一つだ。今はとにかく邪魔をするな。私の目の届く範囲で煩い真似はするな。分かるか?」
「分かります」
アルトは深く頷くと、おもむろに立ち上がり、私から顔を背けたまま言った。
「失せろ」
私は言われた通りにした。


それからシャミィを連れ出して、二人で騎士団の紋章官に掛け合った。
斥候部隊への同行は快く了解され、そしてここに居る。
「昼さえ寒さが骨身に凍みる北国、非番の夜に酒は欠かせぬ、か。
だがの、夜営を奇襲されてなお醒めぬ酔っ払いとは、兵隊として置いとくにはあまり外聞が良くない」
「しかもその酔っ払いが指揮官補佐とあっては……団長殿も人間不信になる訳だ」
「レジスタンスの『白い牙』もだ、所詮は山出し。どうする、投げるか? この仕事」
「王国正規軍のくせに金払いは悪そうだ。もう少しだけ、働いてるフリしようか」
我ながら過ぎたお節介とも考えたが、引き渡した荷物の箱にはしっかりと用法を記してある。
だからと言ってそのまままともに扱えるとも思えないが、最低限の義理は果たして代金分だろう。
後は戦地で公国の新型ゴレムを見物して、危うくなれば適当に逃げる。余計な世話まで焼くつもりはない。
「私は例の酔狂者三人を見てみたいな。おぬしはそうは思わんか?
どうする、本当に連中が三人だけで、公国軍の関を破ってしまったら?」
「この眼で直にそれを見たとしたらね。私、傭兵を辞めるわ」
馬上のシャミィがくっくと笑った。真白なコート姿の彼女は、フードまで被るとまるで耳付きの雪だるまに見える。
「ジンの傭兵廃業を祈って」
「ひどいわね」
前方を行くレジスタンスの斥候隊が、ふと足並みを止める。襲撃された野営地の中ほどまで、辿り着いたようだ。
皆が馬から降り、私たちも倣って下馬した。

49 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/04(月) 01:35:33

雪野原には潰れた天幕、置き忘れの物資、打ち捨てられた武器が点々と散らばっていた。
レジスタンスの兵たちは散開すると、それぞれ天幕周辺の深雪を漁り、呼び掛ける。
彼らに続きつつ、シャミィがふと呟いた。
「何だか匂うの」
「ゴレムの燃料と少し違うな。火薬でもない……ガス? 新型ゴレムの?」
立ちこめるガスの匂いの他に、特別不審な事物は見当たらない。
馬を下りてしばらくの間、突き立っていたシャミィの耳もやがて伏せた。
新たな攻撃の痕跡も、予兆もない。敵襲は第一波で中断されたようだ。

斥候隊に交じって、雪に埋もれた兵隊、或いは死体を救い上げているうちに、空が明け始めた。
大部分の兵が襲撃時すぐに避難していて、取り残された者のうち生存者はほんの数人だった。
レジスタンスは掘り出されたばかりで寒さに震える仲間の口へ、気付けの酒を流し込む。
聞く所によると、夜営を襲撃した敵は巨大な蛇のゴレムで、地面を潜って進むのだとか。
「ズィーガー・タイプへは先に網を張っておくより仕方ありません。
だから、移動の頻繁な私たちには天敵だったんです。まして地面の下から襲われるなんて誰も……」
斥候隊指揮は王国騎士のレニーという女性で、
新型ゴレムの残骸らしき黒焦げの装甲板を前に、私へ話し掛けてくれた。
「貴方ならどうしたかしら?」
「実際に見てみない事には、まだ何とも。
頼りない返事でごめんなさい、『ゴレム狩り』の名が泣きますかね」
私の言葉に、レニーは気弱な笑みを浮かべた。彼女は金の長髪と整った顔立ちが美しい、若い女性だ。
戦場に立つにはあまりに線が細い。剣を佩かせても一応さまにはなっているが、およそ鎧が似つかわしい容姿ではない。

「こちらこそごめんなさい、試すような事訊いてしまって。
でも正直信じられないのよ。その、誤解しないで欲しいのだけれど、
貴方の腕を疑っている訳ではなくて、ただ、あまりにも想像と違っていたから。
失礼かしら? 私だって、女だてらに騎士なんてやってるのにね」
「女だてらに――」
焼け焦げて脆くなったゴレムの装甲板を、ブーツで踏み割る。
レジスタンスは何らかの手段でこれを屠ったのだ。私でも狩る方法は不足しない筈だ。
「剣客商売を続けていくコツはひとつです。男に依存しない事」
「それじゃ、私は失格かもね」
レニーは肩をすくめた。そこへ誰かが彼女を呼びつけ、レニーは私とゴレムの残骸から離れる。
入れ替わりに傍へやって来たシャミィはなんと、殊勝にもあの重たい銃を徒歩で運んでいた。

「夜も明けたの。どうやら分断された隊は、予定を繰上げで山に登ったらしいでの」
「船頭多くして船、山に登るとは正にこの事ね。追うの?」
「連中には追うより他ない。貴重な戦力を、一隊長の独断でむざむざ失わせる訳にはいかん。
それにの、これはほんの小耳に挟んだ噂だが、例の『白い牙』は斥候隊長の想い人とな」
やはり向きではない、と思った。
後ろを見遣れば、鹵獲ゴレムの周りにレニーと分隊長たちが集まっている。
追跡班を選り出す相談のようだ。その内に、レニーが私たちへ手招きする。

50 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/04(月) 01:36:10

「やはり、リッツたちは山へ登ったと思う。足跡を見た者が居るから。
他に行方の分からない隊は、予定されていた攻撃隊の半分も下回っている。
もしルフォンへ向かったとしても作戦の履行は不可能よ。無用な犠牲を出さないためにも、連絡員は必要だわ」
皆が頷く。頷きながら、誰もが心配げな面持ちでレニーを見詰めている。
しかし彼女は、そうした視線を気にも留めない素振りで話を続けた。
「私がゴレムで追うから、他は負傷者を連れて本隊へ戻って。
あくまで作戦は中止よ。仲間の犬死にへ手を貸したり、見過ごせはしないわ。それは分かってる。
そこでなんだけど……」

レニーは私たちの方を向くと、
「ギルビーズさん? 出来るなら、貴方たちに同行願いたいの。
危険な仕事だという事は重々承知の上でお願いするわ。どうかしら?」
レジスタンスの分隊長たちは、私を見たまま何も言わない。
突然の抜擢は、身内の犠牲者を一人でも減らしたい理屈だ。
そのまま言葉にするのは後ろめたいのだろうが、要はそれだ。私はそっと手を掲げて、二本の指で輪を作る。
するとすぐに、レニーが微笑えんで
「私が騎士団に掛け合います。もし落とせなければ、私が自腹を切っても良いわ。
……報酬は言い値で構わないわよ? 諸経費込みは勿論、現金払いも保証する」
「私はクラーリアの傭兵ギルドに登録していません。
報酬金額がギルドの規定を受けていない事はお分かりですね?」
「良いから、言ってみなさいよ」
値段を言った。
レニーは事も無げに頷くと、仲間にメロメーロ商工会銀行の、サイン済み証書を用意させた。
私は受け取った小切手に要求した通りの金額を書き、レニーへ見せる。また頷く。問題なし。

契約は成立した。私とシャミィは招かれるままに、パンツァー・ゴレムの後部座席へ乗り込む。
シートへ身を埋め、レジスタンスたちの準備を待つ間にシャミィがぼやいた。
「私には一度も相談しなかった。違うかの?」
「だってあなた、話のあいだに文句言わなかったじゃない?」
ブラッシングを怠けて荒れた相棒の毛並みに、手袋の上から爪を立てる。
生きて帰れる限りはボーナスの心配が無用になった。これこそ傭兵冥利に尽きる。

51 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/12/04(月) 04:06:50
ド派手に空を飛んで逃げたのは、ほんの一分足らずの間だけ。その後は肩を並べてガナンの政策ブロックの込み入った路地をひた走る三人であった。
一見したところ、目論見外れて脱兎の如くといった様子だが、
「ぷふ……っ!」「ブッ!」
どちらがともなく吹き出す、余裕のイアルコとジョージ。少し下がって足を動かすメリーは冷然としたものであった。
銃弾を雨あられと浴びたはずなのに、彼女の体とフリル付きのメイド服には、それらしき戦いの跡がまったく残っていない。
痕跡といえば、坊ちゃまの一張羅に空いた大穴くらいなものである。
「ブハハハハハハハアハハハハハッハハハハハ!! 何が『やはり、ヴァルキリエでしたか』じゃ爺っ!?
博物館にすら行った事もないのにシリアス顔で大法螺こきおって! あやうく笑い転げてしまうところじゃったぞ!!」
「若の方こそ、堂に入ったうろたえぶりでしたぞ!? 私めももう歳なんですから、衰えた集中力に水を差すような悪ノリは如何なものかと!!」
「いやあ、メリーの熱演についつい乗せられてしまっての! まったく、普段の能面ぶりとのギャップに正直戸惑ったぞ!」
「オスカー女優ですから」
爆笑の渦の中、さらりと合いの手を入れてきたメリーに、キョト〜ンと顔を見合わせる二人。

「オスカーって何じゃ?」「はて? 確か、リオネ様の飼っておられる馬の一頭がそのような名前だったかと……?」
「馬と女優に何の因果関係があるんじゃ?」
「ふうむ、何やら卑猥なものを連想させる響きですなあ」「ふうむ、年寄りはこれだから困る」

などとアホな事を言っている間に、目的の場所を駆け抜け、回れ右して二歩、三歩。
辿り着いたのは政策ブロックの端も端、未開発のまま二十年ほど放置されている一画であった。
「しかし、若も大したものですなあ。あんなに勉強を嫌っておりましたのに、パルモンテ家秘伝の抜け道の数々はすべて把握済みとは……」
「うむ、国庫から小遣いをチョロまかすのに色々と使ったからの」「ハッハッハ、爺は何も聞こえませんぞ」
「国庫からっ!!!!」
「いやーーーー!! 聞きたくなあああっい!!!」
二人がいつもの通りにボケ合っている間に、メリーがマンホールに偽装した抜け道の蓋を持ち上げる。
中は入り口より少し大きいだけの縦穴で、底の見えない闇が広がるばかりであった。
「……若、これは一体どこに通じておられるので?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた。この穴を最後まで滑り落ちると……!」「落ちると?」
「なんと! ラライアの麓にまであっという間に行く事ができるのじゃ! 全長ざっと一万ウン千メートル!! いやまったく、造った奴の顔が見てみたいわ」
「尻が擦り切れたりやしませんか?」「なあに大丈夫じゃ。ケツに火がついて死んだ奴はおらん」「はあ……」
「それより、ブレーキのタイミングを誤ると挽き肉になるそうじゃから、先頭は任せたぞ爺!」

老執事が口を開くよりも早く、容赦なく奈落の底へと蹴り飛ばす坊ちゃま。
恐れ気なくメリーが続き、そのすぐ後に自身も颯爽と飛び込む。
レーゼンバッハ家襲撃による目的は果たされた。次に向かうはガナンの外、王国との最前線だ。
内心会いたくないないと思いつつ、それでも会わねばならぬ許嫁の顔を思い浮かべ、滑りながら漏らしそうになるイアルコであった。

52 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/12/04(月) 20:57:30
絶体絶命の大ピンチをなんとか切り抜けて、ようやく安心できるよ・・・はふぅ・・・・。
そこは見たことない「ヘンテコな物」がいっぱいの部屋だったよ。
みんなぜーぜー息を切らして座り込んじゃってる。ラヴィも疲れてヘトヘトだよぅ・・・・。
「ねぇ、少し休もう。アタシもうホント無理・・・・。」
レベッカお姉ちゃんが大の字に寝っ転がって、だら〜んって延びちゃった。
「ダメだよレベッカちゃん、いかにも何か起こりそうな部屋だよ?危ないってば」
パルちゃん心配し過ぎ。ラヴィがそう言おうとした時、奥から話し声が聞こえたような・・・・。

   *********************************************

ハイアットは真っ白な世界の中で、一人立ち尽くしていた。何処までも続く白亜の領域。
「アーシェラ・・・君は本当に生に縋り付いてまで世界の終わる瞬間を見たいと思うかい?」
ハイアットの呟きに応えるかの如く、揺らめく様に現れたグランドピアノ。
スツールには美しい女性が腰掛け、悲しげな眼差しでハイアットを見つめている。
『私は・・・あの時程、自分に定められた時間を呪った事はありませんでした。』
すっと立ち上がり、隣に立つと彼女はハイアットの頬をそっと撫でる。
忘れる事はなかった。優しい手の温もりを、そしてハイアットには存在しない命の輝きを・・・・。
『ジャジャラを始めとする《天の三角》は皆、イルドゥームによって墜ちました。
 シャッハやトゥーラの民も・・・全て死に絶え、繁栄に終止符が打たれたあの日・・・・。』
アーシェラは瞳を閉じて遠い日から、これまで流れた時を埋めるかのような深呼吸を一つ。
『貴方は私の目の前から姿を消しました。都市の動力システムに異変が起き、時空の断裂
 に貴方が飲まれたと知った時、既に私は正気ではなかったのかもしれません・・・・。』
「アーシェラ、それじゃあ君は!?」
『逢いたかった・・・・。もう一度貴方を・・・抱きしめたかった!』
しかし重ね合う身体は光の粒子に変わり、次第にアーシェラの姿は溶ける様に消えていく。
「待ってくれ!行かないでくれ!!アーシェラ!!!」

ハイアットの叫びは、白い闇へと吸い込まれ・・・
再び彼は一人立ち尽くした。絶望感と無力感に搦め捕られながら・・・・。

53 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/12/05(火) 16:08:40
カールトンは半壊した執務室を見回し、眉をひそめて髭をしごいた。
あれだけの銃撃に晒されたはずなのに、火薬の匂いが余りにも微量だ。火の気がまったく残っていないのもおかしい。
「なんと……?」
メイドのガトリング砲の破壊跡を見て、ようやく違和感の正体に気がついた。
これは弾丸によるものではない。正体はわからないが、とにかく別の何かだ。
過程と結果が結びつかない場合は、大抵過程の方が間違っているものだ。カールトンは自分の人生哲学に基づき、速やかな事態の把握に努めた。

あのメイドがヴァルキリエでないとすれば……空を飛んだのは、恐らく子倅のブレスによってであろう。
最強の風を操るパルモンテの直系だ。そのくらいは容易いはず。
つまり、自分は幻を見せられていたという事になる。
赤鱗属の幻のブレス。消去法でいくとあの老執事以外に考えられないが……何の素振りも見受けられなかった。
鮮やかというしかない。
相手を完全に術中に嵌めておきながら奴らは逃走した。それは自分の暗殺が目的ではなかったからなのだろう。
疲れきったため息をつき、カールトンは自分の机の三番目の棚を開けた。
鍵が外されている。
「やはりか……」
三重底にまでして隠蔽していた、あの連判状≠ェ消失していた。
「……子倅め、公国を二分するつもりか」
あれを持って行くところなど知れている。公明正大な彼女は、何があろうとも自分達を許しはしないだろう。
そう、例え公国そのものが消えてなくなろうともだ。
何としても、阻止せねばならん。
ここで初めて、平静でいたカールトンの眼差しに、彼本来が持つ熱狂の光が差した。

「あいやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ふむふむ、やはりか。なるほどのう」
「熱熱々あつあつあっつあつあつあつあつあちゃあああああああああああああああああ」
「ミュラー、カールトンの戦バカはともかく、イフタフ翁の名まであるとは……公王陛下の威光も衰えたりといったところか」
「若はお尻と背中が熱くないんですくわああああああああああああああああああああ!?」
「それよりも、ハラワタの方が煮えくり返っとるわい」
公王暗殺未遂事件からの侵略派御三家の政権の掌握振りを見るに、何らかの根回しがあるとは思っていたが……まさかまさかの不心得者の数に、唸るばかりのイアルコであった。
その手にある書面には、ギュンター公を廃し、御三家主導の貴族連合の設立に賛成する者達の名が連ねられていた。
いわゆる、企みの念を押すための連判状というやつである。
署名は本物、ご丁寧に全協力者の花押まで書かれている。
もはや、御三家それぞれの当主が保管しているのであろう、これの真偽は疑うべくもないのだ。

「自信満々のカールトンの事じゃから、きっと手元に置いてあるものと思っておったが、いやはや、上手くいったもんじゃ」
「爺も、張り切って昔とった杵柄を振るった甲斐が御座いましたぞおおおおおおおお!!!」
「うむ、でかしたぞメリー」「およよよよ」
ワザとらしく泣き崩れるジョージの声を聞きながら、イアルコはいつになく真剣な顔をしていた。
できれば頭だけを潰して何事もなく済ませたかったが、ここまで悪化した事態にあっては、それはもう不可能だろう。
自身が公国を滅ぼすやもしれぬ。そんな方向に行きつつある我が道を思い、
「ま、龍人の長い人生じゃ。亡国の憂き目の二つや三つ、ザラにあるじゃろうて」
実にあっけらかんとしたイアルコ坊ちゃまであった。

54 :リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/12/06(水) 21:31:26
センカは雪の降りしきる中を風のように駆けて行く。修羅を始末するために。
積雪は40cmを越え、普通ならば歩く事すら困難を窮めるというのに、足取りは羽の如く。
「シバ様が気付く前に始末しなければ…」
呟きは白い息とともに吹雪に吹き散らされ、雪山の夜闇に消えてゆく。
最新のゴレムとやらも全く歯が立たないのに、ルフォンを守るのは頼りなさげな兵士達。
ギガントと呼ばれる重武装の機体も、あの怪物の前ではブリキの玩具も同然だ。
「人間の分際で。私の修羅と奴の修羅、どちらが上か…」
ギリリと牙を噛み合わせ、闇の向こうを睨み据える。
(思い知らせてくれる!!)
斜面を登って来る明かりを目掛けて、一際高く跳び上がるセンカ。
蹴られた雪の絨毯に白い大輪の華が咲く。


「本当にこの方向で合ってるんでしょうね?」
レオルが胡散臭いと言わんばかりに、リッツを横目でちらりと見遣った。
リッツ、レオル、ジーコ、ソーニャの4人はグレナデアの格納庫を目指している。
初めはルフォン市街を抜け、真っ正面からの強行突破を予定していたが、変更となった。
相手方の夜襲のタイミングから、内通者の存在は明らかだ。それ故に突如作戦を変更したのだ。
「この辺は俺にとっちゃ庭みたいなモンなんだよ、ちょっとは信用しろっての」
「へぇ…たまにいるぜ?テメーのお山で迷子になるマヌケな猿大将とかねぇ」
「ンなッ!?」
得意気に胸を張るもソーニャの一言でガクリとよろけた。慌てて体勢を立て直し、互いに睨み合う。
「このやろ…赤毛!テメーは俺に喧嘩売ってンのか!?あ!?」
「あぁ!?アンタごときがアタシに喧嘩売ってもらえるとでも思ってんの?アホ白髪!」
まるでキスをするような超至近距離で火花を散らす様を、レオルとジーコは呆れ顔で眺めていた。
「全く、これでは先が思いやられますね。いざという時までこの調子では…問題です」
「ハハハ、まぁ喧嘩する程仲が良いってなァ。案外にあっ…!?」
「「似合ってたまるかバカヤロウ!!」」
ジーコの言葉を真っ二つに叩き斬ったのは、2人の絶妙なツッコミであった。
「「…………ふん!」」
しばし顔を見合わせ、互いに背ける。やはりタイミングは完璧。
(似合ってんじゃねーかよ!)
ジーコは心の中で小さく舌打ちした。こんな事は口が裂けても言えない。

55 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/12/07(木) 00:10:01
「やたらごちゃごちゃした天井ねぇ」
寝転がったレベッカちゃんに言われて上を見てみる。これはすごい。
考古学者が来たら大興奮のあまり鼻血噴出するだろう。
「うわあ……すごい」
「何がすごいの?」
レベッカちゃんが不思議そうに聞いてくる。
普通は魔術師か操術師でもない限り古代文字なんて読めないので当然だ。
天井にびっしりと刻まれているのは消し去られた古代の歴史と知られざるこの世界の秘密だったんだ!
適当に目についた一文を読み上げる。
「夜空に輝く星はここではない世界の姿。星界は狭間、混沌にして根源……
星界より舞い降りし六星龍、発祥の地を支配し、我ら人を作る」
「読めるんだ!?」
「全てがはじまりし発祥の地は…………」
面白そうなところが調度良く欠けている!
「そんなところで止まったら気になるでしょ!」
「お二人とも……ラヴィさんが向こうを気にしておられますが……」
アクアさんに言われてみると、奥ではラヴィちゃんが透明な真ん中で開きそうな扉の向こうを覗き込んでいた。
「ヤバイよぅ!!」
半泣きになって訴えてくる。目に飛び込んできたものは……
異形の剣を持った青年の後姿と……今にも彼に取って食われそうなハイアットくん!?
「まずい!!」
とっさに突入しようとドアに触れた瞬間、信じられない事が起こった。
―未知の生体反応感知、危険生物と認識、即刻排除する―
無感情な声と共にドアが一瞬のうちに変形し、立体になっていく。
「「「「のわああああ!?」」」」
慌てて後ずさった後、目の前にいたものは……
両の翼をはためかせて宙に浮遊する、天馬の姿をした魔道機械……!
―我が名は《白のガーディアン》……侵入者、覚悟!―

56 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/12/07(木) 00:19:56
どごぉ!!と言う音と共に鉄球は壁にめり込んで止まりました。
「ああ、痛かった」
体を今度は極限まで柔らかくして鉄球の下敷きになった部分を引き抜きます。
皆様と合流すべく私は開いた扉へと向かいました。

そこは不思議な部屋で御座いました。まるで何かの実験場の様な場所。
皆様は無事でおりましたが、まるで何か起こりそうな・・・・・・

何か話し声が奥から聞こえてまいりました・・・・・

・・・・・・・・・・・・場所は変わってリザードマン集落・・・・・・・・・・・・・・・・

「あの、シスター・キリア 少しお話いいですか?」
酋長の家でブレイクタイム中のシスターキリアは、何事かと、後ろにいた声の主、キャメロンを見返した。
「シスターは町についたらどうするおつもりなので?」
何故その様な事を聞くのかと思いつつも道中、御世話になるであろう人に答えるのは義務と思いキリアは答える。
「寺院の手伝いや、処理をした後は、またどこかに派遣されるかと。」
前の席に腰を掛け手には何か商売道具でも持ってるのだろうか、キャメロンはいつになく真面目な顔つきをしていた
「実はシスターに大事なお話しがあるのですが・・・・」

・・・・・・・・・・・・場所は戻って遺跡内部・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いったい誰がいるのでしょうか?」
もしかして探していたハイアットさんでしょうか?しかし、さっきのトラップを見るにもしかしたら何かの
罠なのかもしれません。いったいどちらなのでしょうか?



57 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/12/07(木) 19:43:45
「行かないでくれーっ!!!!」
叫びながら悪夢から跳ね起きたハイアットは、自分の身体が自由に動かない事に気付く。
拘束具によって両手足が壁に固定され、完全に身動きが取れない状態であった。
「目が覚めたかい?」
顔を上げると、そこにはかつての友がいた。
「ぐっ・・・何をするんだ!離せ!!」
「無駄だよ、君は逃げられない。運命に逆らう事は出来ないんだよハイアット」
必死にもがく姿を、愉快なものを見ているかのように笑い、青年が答えた。
「これは運命だったんだよ、最初から全て仕組まれたシナリオ通りのね・・・」
「運命・・・ふざけるな!!彼女はやっぱり望んでなんかいなかった!僕にはわかる!!」
激昂して暴れるハイアットは渾身の力を込めて拘束具を壊そうとする。
「この時代に・・・もうジャジャラは甦ってはいけないんだよ!何でわからないんだ、ハインツェル!!」


【グラールロック、金獅子の宮殿】
幻獣の頂点に立ち、それを統べる幻獣の王グラールは雲一つ無い青空を睨み、待っていた。
失われた壁の外より来たる、侵略者を。
不意に宮殿内に気配が生じたのを感じ、グラールは『眼』を向ける。
気配の主は、身の丈3mはあろうかという巨漢。グラールはこの巨漢を知っていた。
『久しいなグレッグス、エーナセフィラで共に戦って以来かもしれぬ』
そう言うと身をよじり、巨漢・・・“十剣者のイェソド”の方へ向き直った。
「・・・頼みがある」
永い時を経て再会したというのに、イェソドは至極単刀直入に話を切り出した。
グラールは眉間に皺を寄せたが、「ふん」と鼻で溜息をつく。この男は昔から変わらない。
それに対し自分は変わってしまった。
剣を棄て、誇りを棄て、十剣者である事を棄て、獣の姿で様々なセフィラを渡り歩いた。
逃げ続けたのだ・・・あの存在から・・・

「“奴”が来る。手を貸して欲しい」
イェソドの申し出を受けるか、グラールは迷う。勝てる筈がないのだ。
世界樹を狙う大罪の魔物に。
しかし、グラールはこのズィームセフィラに来て待った。かつて護れなかったものを護る為に・・・
『管理者の剣か・・・《最深部》は黙っておらんぞ?』
「承知の上だ」
短い言葉に込められたのは、決して揺るがぬ鋼の決意。
グラールは低く唸り、古き盟友の決意に応えた。

58 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/12/07(木) 19:44:41
 【ジャジャラ遺跡、中枢部】
「いいやそれは違うな。再びセレスティアの繁栄は約束されたものだからね」
いつの間にかハインツェルはハイアットの持つ魔導銃をくるくる回して遊んでいる。
腰のホルスターが空なのを見て、ハイアットの顔がサッと青ざめた。理解してしまったからだ。
これからハインツェルが何をしようとしているのかを。
《天の三角》と《地の三角》。計6都市には、それぞれ都市管理用のホムンクルスが存在する。
『剣』と『銃』、2体のホムンクルスが所持する武器は都市機能管理システムの鍵なのだ。
「ハインツェル!やめろ!!」
1万2千年の妄執は壁となり、彼の叫ぶ声は届かない。こんなにも近くに居るのに・・・。
ハインツェルは管理システムのスロットに剣と銃をゆっくりと差し込んだ。
その瞳に狂喜の光を灯しながら・・・


あの日は僕にとって運命の分岐点だった。仮死状態から目覚めた時、既に世界は変わり果てた。
思い出も、なにもかもが無くなってたんだ。僕は絶望したよ。
でも僕は諦めなかった。セレスティア時代の遺跡を巡って捜し続けたのさ。
このジャジャラを!僕の還るべき場所を!
寿命を持たない僕にとっては、探索の旅は特に苦にする事もなかったよ。
情報は着実に集まってきてたし、全てが順調だった。自分の剣をどこかに無くしてた事以外はね。
当然必死に捜したよ。そんな僕に声をかけてくれたのは、死神と名乗る1人の仮面の男だった。
古代遺跡に詳しく、彼の組織は様々な古代の遺産を蓄えていたんだよ。
彼は僕に古代都市の情報提供と引き換えに、剣の探索を協力すると約束してくれたのさ。
それから暫くして、死神から連絡があった。剣を見つけ出してくれたんだよ。
組織の保管庫に僕の剣『ジルヴェスタン』があると言われ、地図を頼りに保管庫を目指した。
その途中で僕は出会った。彼女の楽器にね。運命はまだ僕を見捨ててはいなかった!
僕は狂喜したさ、彼女を蘇らせる為には三種の奏器は絶対に必要だったから。
だけど思わぬトラブルがあった。楽器の旋律が僕に予想外のダメージを与えたのさ。
結果として僕は記憶の大半を失ったんだ。
全ては振り出しに戻り、いやもっと酷い。何故なら自分が誰なのかすら分からなかったんだから・・・

59 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/12/07(木) 19:48:36
3ヵ月前、メロメーロに現れたアグネアストラを見て、僕は記憶を取り戻した。
自分で言うのもアレだけど、それからの行動は早かったよ。
すぐに保管庫へ引き返し、ジルヴェスタンをを手に入れて僕はジャジャラを目指した。
聖獣の消滅は願ってもないチャンスだったからさ。ガリアト湿原を安全に探索できたからね。
そして世界律の変化が、都市機能の一部を復活させたおかげで僕は帰って来れたんだよ・・・


「このジャジャラへとね」
都市の起動を確認して、ハインツェルはやや興奮気味に、ここに至るまでの道程を語り明かす。
それを聞いて、ハイアットは衝撃のあまり声が出なかった。
2人は全く同時期に、この時代で目覚め、この時代に飛ばされ、帰る場所を探していたのだ。

「ふふふ、どうやらたどり着いたようだね。」
ハインツェルが中枢官制室の入口を見て、にやりと笑う。
ドアの向こう側から微かに聞こえるのは、パルス達の・・・仲間達の声!
「ようやく、ようやく元通りになるんだよハイアット!幸せだったあの頃が!!」

ハインツェルの声に呼応するかのように、遺跡全体が振動を始める。
かつて空に浮かび、世界を支配した伝説の都が・・・
1万2千年の時を経て再び空へと浮上を開始したのだ!!

60 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/08(金) 23:52:03
夜が明ける頃、私は前を行く四人の背を見ながら雪道を歩いていた。
足元は新雪だけれども、重力制御のおかげで歩くのに苦労はない。
雪は降っていても徐々に明るくなりだした空を見ながら、数十分前のことを思い返していた。


「ああ、この道なら知ってるが、獣道だぞ?地元の人間だって殆ど知らないのに・・・。ここらにコボルドなんて住み着いてたのか。」
地図を見たリッツさんは懐かしくも嬉しそうに地図を確認している。
獣道のうえ高低やその配置ゆえに多人数ではいけないけど、伏兵も配置する場所もないルートだと。
ましてやゴレムなど入り込める場所ではないと付け加え、案内を買って出た。
こうやって話す姿はいい人に見えるけど、私はその正体が危険すぎる存在だと知っている。
世界を喰らいつくす危険がある存在だ、と。
「いいじゃねえか。あの騎士の坊ちゃんの事だ、今夜の奇襲で作戦延期とか言い出すのは目に見えているからな。
正面からの陽動はやめだ。俺達で分捕っちまおうや。」
岩山のようなジーコさんがそれに賛同する。

「・・・コボルド、ですか・・・。いいでしょう。行きましょう。」
盛り上がる二人の後ろから、静かに同意を伝えた魔術師。レオルさんの言葉に私は鳥肌が立った。
レオルさんの言葉と共にほんの僅かに、多分絶対気付けないであろうオーラの揺れ。
動揺や、逡巡ではない。全てを了解したような・・・。
荒涼としたオーラだからこそ、その小さな揺れがよりはっきりと感じられてしまう。
多分レオルさんは殆ど察している。
地図の出所であるコボルドのおじいさんが、ただの住人でない事。
もしかしたら、私の思惑までも・・・そんな気にされてしまう・・・。
そしてそれを承知の上で、確実な何かを持って賛同している。そう感じてしまった。

「じゃあ早速行こうじゃないか。明日着くギルビーズ隊を笑って出迎えてやるわ。
うちの隊を陽動に正面に向かわせるから、ここの四人でいいね?」
「え、あ・・あの・・・僕・・・」
「なんだい、アビサルも来るかい?地図を持ってきたのもあんただしね。来たいのなら付いておいで。
だけど危険だからあたしから離れるんじゃないよ?」
「あ・・・はい・・・」
地図を渡してから出発まで僅か数分。
その展開の速さに、ソーニャさんにグレナデアについて聞けなかった。
どの道、二人っきりでないと聞けないのだけど・・・


結局、二人っきりになる合間もなく、今に至る。
前ではソーニャさんとリッツさんが口喧嘩をしている。
罵り合ってはいるけど、なんだか楽しそう。あんな近くでにらみ合って、息もぴったりで・・・

・・・なんだろう・・・この胸のもやもやは・・・
何か私の中でどす黒い何かが渦巻いている・・・
リッツさんが危険な存在だというのはわかっていたけど、近くにいて肌で感じたせいかもしれない。
グレナデアと同じ、もしかしたらそれ以上に危険な存在なのかも・・・。
そう思うようになるのにそんなに時間はかからなかった。

コボルドのおじいさん・・・どこで仕掛けてくるんだろ・・・
それでリッツさんが死んでくれれば・・・
もしグレナデアまでたどり着いたら・・・グレナデアと一緒に星界に追放した方が・・・

どんどん自分の考えが怖い事を考え出しているのに気付いたけど、止められない。
多分今の私はとっても醜い顔になっている・・・
それを悟られないように、私はそっと縦目仮面を被った。

61 :グレナデアを見下ろし ◆9VfoiJpNCo :2006/12/09(土) 00:06:38
送り出したハイドラの反応が途絶えて数時間後、その晩をぐっすりと眠ったベルファーはグレナデアの全景を見下ろせるお気に入りの場所にいた。
「ババンババンバンバ〜〜〜ン♪」
発掘作業の折に湧き出した温泉の一つにゆったり肩まで浸かり、哺乳瓶片手にご機嫌と鼻歌を口ずさむ。
傍らに現れた気配に、天を仰いで手拭いジャバジャバ。
「硫黄の匂いは戦場の香り。太古の戦場に程近い、グレナデア温泉にようこそ」
「…………」
「血行促進、治癒力助長はもちろんのこと、内臓疾患、関節痛、視力の衰え、酷い火傷にハゲ、虫歯、痔には軟膏オロナイン♪
当温泉にも治せぬものはお決まりの、頭の病気と恋の病♪ こればっかりは僕様も、大匙投げてハイお終い♪」
「ウキャ?」
「なんだサルか。ここは私有地だぞ、速やかに去りたまえ。さもなくば使用料を請求するぞ」
「去る者は追わず」
「来る者拒まず、六神合体ゴッドマーズ」
降って湧いた老人の声に意味不明な言葉で返し、ベルファーは哺乳瓶に口をつけた。

「虎の子が苦もなく捻られたというのに、相変わらずの余裕ですのう伯爵?」
「うん、まあ、ハイドラは試作品だし試金石だし〜。敵の本隊を足止めできただけでも御の字かなってね」
「ふむ、確かに向こうの大将は完全に尻込みしておりますな。主力の数人が戻ったとしても、難癖つけて攻撃を先送りにするのは間違いないかと」
「おお、神よ。頭の良い人達はなんと愚かなのでしょう」
おどけるベルファーに、老人は無言を持って返した。
「……アレをね、どうやって運ぼうかと色々考えてたんだよ」
「良案は浮かびましたかな?」
「いくつかね。けど、やっぱり起動させるのが一番手っ取り早いかなあ。最善は埋め直して慰霊碑でもおっ建ててやることなんだけどねえ」
「ほっほっほ、ご冗談を。ここまで漕ぎ着けておいてそれは――」
「うん! そうしよう!」
「……は?」

善は急げとばかりに前も隠さず立ち上がるベルファー。
「ウッキャイ!!」
同時に、温泉に浸かっていた子猿の一匹が見えざる大宇宙的倫理観の働きによってその股間にしがみつく。
「臭い物には蓋! スイッチオン!!」
高らかに宣言し、哺乳瓶を握る手に力を込め――そうはさせじと老人が瞬く。
しかし、僅かに遅い。
そこまで読み切った上でのベルファーの行動である。
そして、そこから先もある程度は予測していた。
「フフッ」
突如現れた老人以外の気配の主によって、哺乳瓶が跳ね上げられる。
「そう、すべては僕様の計算通り! 貴方はずうっとここで起こる事の成り行きを――」
乱入者の存在に足を止める老人、ベルファー自信満々といった表情で子猿諸共華麗に反転。その者へと指を突きつけ、
「……誰?」
首を傾げた。
岩の上から見下ろすのは、黄金の仮面を被り星図の柄のマントで全身を包んだ、ただならぬ雰囲気の人物であった。
予想とはまったく違う、斜め上どころか明後日の方向の登場人物に呆けながらも、ベルファー見事に哺乳瓶をキャッチ。
そして更に、二つの気配が背後で起こる。
「やはり計算――誰っ!?」
のんびりと温泉に浸かる黒猫獣人と半馬人間の姿に、ベルファーまたも予想外と無意味に回転。

だが、度重なる驚きの衝撃も、彼にとっては退屈な人生の彩りのようなもの。
「初めまして皆さん。生まれたままの姿で失礼。生まれてきてザマーミロ。ベルファー・ギャンベルです」
股間の子猿共々誇らしげに胸を張り、
「僕様は君達より格上だ。以後、よろしく」
ふてぶてしさ極まる一礼でもって、ベルファーは転がり始めた大きな何かに挑む姿勢を正した。

62 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/09(土) 01:23:57
――ガナン政策ブロック レーゼンバッハ邸

執務室の散らかった様を眺め、カールトンは込み上げる笑いを堪えるのに必死だった。
上手くいき過ぎていただけなのだ、抵抗しない獲物など、家畜と変わりはしない。
「やられましたねカールトン卿。遊びも結構ですが、我々の目的を忘れないで頂きたい」
気配もなくカールトンの隣に現れたのは、公国軍元帥ミュラー=アイゼンボルグだった。
「ふむ、確かに遊び過ぎたな…全く、パルモンテの小伜に“してやられた”よ」
「口実、ですかな?」
愉快そうに笑うカールトンの眼に暗い狂気が揺らめき、ミュラーは思わず身震いした。
カールトンは公王ギュンターと共に龍人戦争を生き抜いた英傑だ。
今でこそ一線を退いたものの、その実力は現役時代に比べて微塵も衰えてはいない。
「勿論そうだとも。ガナン内で消すのはなにかと問題も多いのでな。だが…外でなら」
「成る程、公王陛下暗殺未遂に加え、レーゼンバッハ家を襲撃…ガナンから逃亡の後、
 戦線に巻かれ非業の最期を迎える、と?実に陳腐なシナリオですが、まぁいいでしょう」
多少不満をあらわにしたが、ミュラーはその案に承知した。
中央戦線が突破され、戦線は徐々に北上している。王国軍の快進撃は止まる事を知らない。
「グレナデアをもう一度使う。虫けらの群れが吹き散らされるのは愉快痛快だろう?」
カールトンは壁に開いた穴を撫でながら、ミュラーの方へ振り返る。
「アダマンティン製のガナン外壁部を貫通した上に、居城の最上階半分以上を消し去る
 程の威力だ…。戦場に撃ち込めばどうなるか、非常に楽しみでならんよ」
ミュラーは何も言わなかった、グレナデアの性能テストは彼にとっても興味があったからだ。
「ふふふ…邪魔な小娘もろとも始末出来れば、テストも出来て一石二鳥というものだ!」
バンザイのポーズでイアルコが脱出した壁の大穴から差し込む夕日を受け、カールトンは叫んだ。

(ん…?二鳥じゃなくて三鳥では?)
ふとツッコミそうになったが、流石に怒らせるのはまずいだろうと我慢するミュラー。
例え冷酷非情な軍人であっても、ちゃんと場の空気は読めるのである。

63 :ジーコ ◆ZE6oTtzfqk :2006/12/09(土) 09:45:01
ったくよォ、仲良しこよしじゃねぇか。俺はヤレヤレと肩をすくめた。
山を登り始めてから、こいつらはずっとこの調子だ・・・。

アビサルというチビが持って来た地図は、俺達にとっては非常にありがたかった。
襲撃を切り抜けたものの、部隊の再編やらで時間をくって即座に反撃に移れなかったからな。
結局少人数での奇襲に切り替えたって訳だ。直接グレナデア格納庫を叩く、実にシンプル。
しかしよォ・・・このチビはさっきからムスッとした顔だが、何か違和感があった。
好きな女取られてヘソ曲げる餓鬼のツラじゃねえ、隙あらば殺してやろうって眼だ。
その視線は真っ直ぐに白髪小僧に向けられてやがる。
レオルも気付いたのか、眉を寄せてたが黙ったままだ。まぁここで何を言っても無駄だろうな。
他人の色恋沙汰にゃ、なるべく触らねぇのが一番だってことだ。

「もうすぐ夜が明けますね。日が昇らない内に攻め込みたかったのですが・・・」
レオルがグナード山の向こうを見て、少し不服そうに呟く。確かに空が薄明るくなってきたな。
「その心配ならいらねえよ、着いたぜ?」
そう言って白髪小僧が指差す先には、馬鹿みてぇにでかいドーム状の建物が建っていた。
山の斜面に建てられたそれが、格納庫って訳か・・・つーか「被せただけ」って気がするな。
つまりそれだけグレナデアがでかいって事だろう。俺は気が遠くなるのを感じた。
大昔の連中は何を考えてこんな馬鹿でかいモンこさえやがったんだ、と。
「伝承では聖獣を倒す為に造られたと聞きます。それほどまでに聖獣は脅威だったのでしょう」
まるで俺の心を読んだかのようにレオルが口を開いた。
「あの様子ではまだ本体の三分の一は地中に埋まっているようですね」
相変わらずの無表情だったが、レオルの言葉の中には多少の苛立ちみたいなのを感じとれた。
こいつもやっぱり人間ってか。何となくだがホッとした。たまにこの男は得体の知れねぇ不気味さがある。
「そんだけ埋まってんならそのまま埋めちまおうや」
「・・・・・・」
冗談の通じねぇ奴は嫌いだ、ったくよォ。

「明かりが一つも点いてないってのは気になるわねぇ、何か見えるかい?」
赤毛がチビにそう尋ねたその時、
「!?き・・来ますよ、てて敵ですッ!!」
チビの声と同時に、空から何かが降って来やがった!!

64 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/12/09(土) 16:09:54
現れた番人、それはイミテーター。ミミック等に代表される擬態型魔法生物だよぅ。
猟理人にとって1番厄介な相手・・・なぜって?普通の生き物とは体のつくりが違うからねぇ。
骨格から筋繊維まで、特定の内臓器官を持たないイミテーターには猟理方法が通用しないの。
でも、攻撃はできるよ!今は万能な4番が使えないけど・・・こんな時のためにコレがあるッ!!
『侵入者を排除します』
ぶんッと刃状の翼を広げて突進して来るのを寸前まで引き付けて避けると、ラヴィは包丁を抜くよ。

6番包丁、『十六夜』。ラヴィは滅多に使わないこの包丁は、2本で1組の丸鉈包丁!!
ホビットの筋力じゃ普通の猟理包丁は重過ぎるから、本来のスピードを発揮できないの。
だからホビットっていう種族のスピードを最大限に活かせる小振りの包丁がラヴィにピッタリ!

 ギィイイインッ!!!
火花が舞い散りながら刃が食い込んでいくよ、このまま振り抜いて開いた傷に突き刺し・・・!?
 ドゴッ!!
急停止したガーディアンが、無理矢理に蹄の一撃をラヴィに叩き込んだと解ったのは、
ラヴィが壁際まで吹っ飛ばされてからだったよぅ。
反射的に自分から跳んで、攻撃の威力を消さなかったらたぶん死んでたかもぉ・・・・。
「ちょっと待ってな!!最強の歌で・・・って、あれ!?《星晶の瞳》が鳴らない!?」
レベッカ姉ちゃんがリュートを演奏しようとして、いきなり悲鳴を上げたよ!
「え・・・嘘ッ!?僕の《暁の瞳》も音が出ないよ!?ど、どうなってるのーッ!?」
パルちゃんの楽器まで?ほんとにどうしちゃったの!?2人の呪歌の援護無しじゃキツイよぅ!!

さらにガーディアンはラヴィ目掛けて突進して来た!これじゃ避けられないよぅ!!
目をキッと開いて、迎え撃つ構えを取った瞬間、ラヴィを飛び越える人影!
「スリタブ流奥義、飛天月光落とし!!」
壁を蹴って高く飛び上がるアクア姉さん!バク転の要領で体を捩り、ガーディアンの背中に激突!!
メキメキと破砕音を立ててガーディアンが逆くの字に折れ曲がっちゃったよ!?
「今です、ラヴィさん!スリダブ流奥義、鬼神卍固め・改!!」
アクア姉さんの手足がぐんぐん伸びて、がっちりと巻き付いちゃったよ!?すごい!!
「私の体は“斬られ”ても平気です!」

65 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/12/09(土) 16:10:56
「なるほど〜、おっけぃ!!!」
ラヴィは息をスーッと吐いて、十六夜を逆手に持ち替えるよ。
ラヴィの編み出した最強の猟理闘法クック・マカブル、いくよ〜せーのッ!!!
「とりゃあああああああああああああ!!!!!!」
ラヴィが最高速度を出せるのはたった7秒間だけ。その7秒で絶対やっつけるッ!!!

   ********************************************* 

突然過ぎる楽器の故障に、レベッカとパルスは自分の楽器を茫然としながら見つめていた。
手入れは毎日欠かさない。楽士にとって楽器は命と同じ、異常があればすぐに分かったはず。
しかし二人の楽器は突然音が鳴らなくなった。
それもそのはず、楽器に封じられた魂が還るべき器を目指し、楽器から出て行ったからだった。
だが二つの魂は器に戻ることが出来ないでいた。
楽器に封じられたアーシェラの魂は三つ揃わなければならなかったからだ。
「くそッ!一体どうしちゃったんだよ!!絃もリフトも、何もおかしいところなんて無いのに!」
レベッカが必死にリュートを弾くが、やはり音は全く出ない。それはパルスも同様だった。
(僕は楽器無くても戦えるけど、呪歌の支援が無くなるのは厳しいかも・・・・。)
パルスは前方でガーディアンと戦っているラヴィとアクアを見て、剣を抜いた。
とにかく今の自分にできる事をしよう。パルスはそう結論を出したのだ。

   *********************************************

 キンッ!
澄んだ金属音が響き、ガーディアンの身体はバラバラ。その切り身は綺麗に横一列でラヴィは深呼吸。
「一丁上がりだ・・・よーッ!?」
上出来だから満足だったのに、ガーディアンの切り身がまたまたくっついていくよ!!
「な・・・!?しまった!?」
アクア姉さんが人型に戻る途中でガーディアンの再生に巻き込まれてる!
スライムとイミテーターは同じ系統のモンスター、下手するとアクア姉さんが吸収されちゃう!!
「・・・く・・・あぁっ!!」
苦しげな声、なんとかして振りほどこうとしてるけど・・・間に合わない!?
「少し熱いけど我慢して!」
ラヴィの横を駆け抜けて、パルちゃんが炎を纏うダンスと一緒に、剣を閃かせたよ!!

66 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/12/10(日) 01:55:34
「やめろ、アスラ!!」
浮上による揺れの中、ハイアットは叫んだ。
仲間たちに襲い掛かっている魔法仕掛けの天馬は、大切な友達のうちの一人だったのだ。
「君は誰とでも仲がよかったもんなあ。でも無駄だ。もうあいつは君の事なんて覚えていないよ」

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

アクアさんが危ない!!旋律術が封じられた今、あの手で行くしかない!
最も早く移動する方法は滑ることだ。剣の柄で、いつもは格納してある靴底のローラーを立ててセットする!
ちなみにマジックアイテムでもなんでもない子ども達に大人気のローラー付きシューズである。
「ちょ!?危な!!」
「大丈夫、滑るのは慣れてる!」
「……笑えね――ッ!!」
レベッカちゃんの声をバックに、助走を付けるように駆け出した!
通常よりも格段に早いスピードで回転し、ファイアステップを組み上げる。
もちろん今回は剣の片面だけに火が付くようにアレンジ済みだ。
ガーディアン側に炎をまとった面を向けて、今にも融合しようとしている接合部を焼き切った!
「ありがとうございます。ほんの少し吸収されたようですが……」
と、さり気なく怖い事を言うアクアさん。でもこのまま一気に行く!
ガーディアンはあっという間に元に戻ってしまった。単なる物理攻撃は効かないようだ。
スライムと同系統、弱点は炎……こうなったら全体を炎で溶かすしかない!!
左足を軸に跳び、滑空しながら4回転スピン【クワドラブルアクセル】で斬りかかる!!
振り向きながら着地する。炎の渦に包まれ、崩れ落ちる……かに見えた。
「やった!?」
が、まだ堕ちなかった!
『耐久力50パーセント消耗。強敵と認識。リミッター解放……!』
純白の光と共に床全面に魔法陣が展開される!自分の顔から血の気が引くのが分かる。
魔法陣の大きさが尋常ではない、発動すれば無事では済まないだろう。
「パルちゃん、これってそんなに……!?」
ラヴィちゃんの言葉に無言で頷く。
「くっ、魔封じの呪歌さえ使えれば……」
レベッカちゃんが悔しげに壁を叩いた……。
『【セラフィックローサイト】発動』
無情にも光属性の破壊魔法が発動する……かと思ったその時!!
「やめろおおおおおおお!!」
響いたのはハイアットくんの声!!
『…………!?』
ガーディアンがその声に呼応するかのように動きを止め、光の魔法陣が消える。
『はいあっと……?』
さっきまでが嘘のように大人しくなった。
突然ハイアットくんの声が届いたのに理由があるとすれば、アクアさんの欠片を取り込んだからかもしれない。
そして僕たちの方を見て言ってくる。
『お願い、はいんつぇるを止めて……狂っちゃったんだ……ジャジャラを愛するあまり……』
気のせいかもしれないけどとても悲しげに見えた。ハインツェル……いや、まさか、単に名前が同じだけだ。
「ようこそ、君たちは幸運だ。この素晴らしい瞬間に立ち会えるのだから!」
でも……そう言って歩いてくる青年は、確かに……
ちょっと前の仲間で、すごく弱そうだったけどそれでも僕を助けてくれたハインツェルくんだった……。
「この前は世話になったね、パルス」
「う…そ……」
自分の取り落とした剣が、床に落ちる乾いた音が響いた……。

67 :グレナデアを見下ろし ◆9VfoiJpNCo :2006/12/10(日) 03:47:38
「ぶえーーっくしょい!」
盛大なクシャミをかまして再び温泉に浸かるベルファー。どうやら湯冷めしたらしい。
ま、この寒空で素っ裸ともなれば当然至極であろうが。
「やあ、風邪には気をつけた方がいいですよ。先生も、この寒さですっかり参ってしまったんですから」
下半身だけを湯に浸けたアオギリがにこやかに言い、口元まで浸かってコポコポと気泡を上げるクロネの頭に手を置いた。
「私の名はアオギリ・コクラク。こちらの御仁は断流クロネ・コーフェルシュタイン卿。
――龍人の名門の出たる貴方ならば断龍≠フ名に聞き及びがおありでしょう?」
ケンタウロスの若武者の名乗りを受け、目を見開いてベルファーがクロネを見やる。
かの龍人戦争において実質的なトドメをもたらした者の一人……そう、彼は認識していたのだが、
「……これが? ギュンター公やカール叔父さんの話とは随分と違うなあ」
そのギャップに、ただ腕組みして唸るばかり。
温泉に浸ったその生き物は、暖炉の傍で丸くなっているアレとまったく同じ顔で、何やらフイフイ鼻を鳴らしていた。
「実にいい湯だと、先生は仰っています」
「あ、そう。まあ、お爺さんの反応からしてみて本物なのかねえ」
彼にとっての絶対者と肩を並べる二人の登場により、シバはすでに姿を隠す事をやめていた。
杖を突き、だらりと長い毛を垂らし、まったく読めぬ表情で控えるのみである。

「で、何の用なのかな? まさか、わざわざ僕様の裸を見に来たわけじゃないっしょ? ……それとも、斬りに来たとか?」
冗談めかして言うベルファーに柔らかく笑むアオギリ。
その笑顔の奥にある物騒なものに、ベルファーは思わずグビリと哺乳瓶でもって喉を鳴らした。
やるつもりなら、それはとっくの昔に済んでいるのだ。
「そちらの方は、どうなのでしょうか? グレナデアが埋め立てられると困るようですが?」
水を向けられ、岩の上に佇んでいた黄金仮面の人物は厳かに言った。
『其は、ただ星辰の織り成す導きに従ったまで』
果たして男か女か、人間なのかすらもわからぬ不思議な声である。
「なるほど、観察者気取りの方ですか。そのくせ星が照らす運命に干渉しようとは、中々含むところがおありのようで?」
『万物の理を覆さんとする、御主等程ではない』
その響きから仮面の下の感情を読み取る事も、また不可能であった。
不気味にして荘厳、その印象に尽きる。
「おーい、用がないなら僕様上がっちゃうよー?」
場に走るピリピリとした緊張感を吹き飛ばそうと、哺乳瓶を弄びながら話を急かすベルファー。
「ああ、すみません」
素直に頭を下げるアオギリ。
どこまでも、相手を敬う丁寧な物腰である。底知れぬ不気味さでいえば、軍配はこの若武者にこそ上がるのかもしれない。
「用件は単純です」
柔和な顔にそぐわぬ修練の結晶のような手。その指先を、この地に渦巻く因果の中心へと向け、
「一撃のみ、アレの大筒をお借りしたい」
天弓神槍、草原に吹く風の如く申し候。

68 :リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/12/10(日) 16:45:17
突然の出来事に、リッツは訳も分からず吹き飛ばされた。
小石が跳ねるかのように、雪を舞い上げながら斜面を転がり落ちていく。
殴られた、そう理解するのに約1秒。しかしその1秒は致命的なタイムロスとなる。
隠衆が一人、隠衆南方先遣隊副頭目“轟天”のセンカ。
彼が使うはリッツと同じ《修羅双樹八世御門》。
全く同じ業(わざ)の使い手ならば、その勝敗を別つは技量の差のみだ。

「な…何だ!?敵か!?」
ジーコが襲撃者の姿を目で追うが、一向にそれを捉らえる事は出来ない。
肉体能力の限界を遥かに越えた強化がもたらす速度は、常人には決して辿り着けぬ領域。
(次で仕留める!)
センカは4つ目の門、《四岑》を開く為に体内の氣を練り上げ、周囲の大氣と同化させた。
そして気付く。自らの氣と同化するはずだった大氣が、急激に失われつつある事に!
(…どういう事だ!?)
目を凝らし、大氣の流れを見た瞬間…センカは背筋が凍るような殺気を叩き付けられた。

まるで渦、底無しの…全てを巻き込み、喰らい尽くす蟻地獄の如く広がる渦が見えた。
「痛ぇじゃねーか、コラ…」
吹雪のカーテンの向こう側より聞こえるは、純粋なまでに激しく、熱く、猛る怒り。
「俺は16までこの辺に住んでたんだけどよ…挨拶でワンパンくれんのは初めてだなァ…」
冷たい眼で睨み、牙を剥いて唸るは白き獣。
長い頭髪を吹雪に揺らし、ゆっくりと起き上がり、ぎりぎりと音を立てて拳を握り絞める。
センカが《四岑》を開くより先に、リッツが《四岑》を開いたのだ。
「チッ…人間の分際で……ほざくな!!!」
雪を蹴りセンカが跳ねる!電光石火、まさに稲妻の疾さでリッツに肉薄して拳撃。
大砲の炸裂にも似た轟音が響き、リッツの身体が大きく退け反った。
センカは攻撃の手を緩めはしない。更なる一撃を繰り出す為に上体を反らし、力を込める。
「だからよ…痛えってんのが聞こえねぇのかクソが!!」
追撃を返す拳で相殺するリッツ。拳と拳が激突し、その衝撃波が吹雪を引き裂いた。
「…ぐ…ぅッ」
予期せぬ反撃に、刹那の惑いを見せるセンカ。その隙を逃すリッツではない。
空を裂き、剛腕をセンカへと叩き込む。
センカも両の脚を踏み締め堪え、みしみしと軋む筋肉を捩伏せ、反撃を見舞う。

拳と拳、互いに退かぬ攻防が幕を開けた。

69 :リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/12/10(日) 16:46:09
いきなり目の前で始まった戦いに、唖然とする4人。
その人間離れした破壊力は、打ち込む拳の立てる轟音と、巻き起こす風圧が証明している。
「あ…あれが…白髪小僧の…本性って事かよ…ありえねぇ…」
震える声で力無くジーコが呟く。無理もない。
拳が行き交う2人の周囲には、吹き付ける猛吹雪すらも掻き消されているのだから。
「しかし、妙ですね。何故コボルトが我々を攻撃するのでしょうか」
平静を取り戻したレオルの一言に、ほんの僅かだがアビサルの肩が小さく揺れた。
(気付かれる?…でも、ここでばれるのは…)
「も、もももしかして、ぼ僕達を公国…のひ…人と間違ってるるんじゃな、ないかと…」
出来る限り平常を保つよう試みるも、その声は自然と振るえてしまう。
だがこの場合は普段よりどもってしまうアビサルの口調が幸いしたようだった。
「ふむ…なるほど、それでは誤解を解かなくてはなりませんね」
(…えっ?)
予想外だった。レオルは事もなげに、戦う2人の所へ向け歩き出す。
このままではまずい…アビサルは必死に思考する。レオルはもしかして全て見抜いているのでは?
そんな風に考える。しかし確証は無い。下手に動けば、あの男は容赦無く自分を攻撃する。
ただそれだけは確信していた。
どうするか…。仮面はアビサルの苦悩を隠してくれてはいるが、レオルを止めてはくれない。


ドオォンッ!!これで何度目の激突だろうか。両者文字通り1歩も退かずに打ち合っている。
「しぶとい…」
ドオォンッ!!強烈な横殴りの一撃がセンカの頬を打ち抜き、意識が途切れそうになる。
ドオォンッ!!センカの突き上げる拳がリッツの顎に直撃し、僅かにその身体を浮かせる。
「ぐ…やるじゃねぇか…」
そして、つい先程からは一切のガードをする事なく、一撃ずつ交互に殴り合っている。
どちらが先に力尽き倒れるか…これはまさしく究極の我慢競べであった。
「ハァ…ハァ…いい加減に…倒れ……ろ」
ドオォンッ!!
「うるせぇ…ハァ……ハァ…犬野郎!!」
ドオォンッ!!
「うぐあ……ッ!?…負ける…訳に…は…いかぬ!!!」
ズドオォンッ!!!
「ガハァアッ!!……っ!!ハァ…そりゃ…ハァ…俺もだ!!!」
ズドオォンッ!!!
意地と意地がぶつかり合い、この我慢競べはまるで終わる様子はなかった。

70 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/12/11(月) 23:33:18
ガーディアンに少し吸収された際、彼の意識が私の中に入り込んできました。

『ハインツェルもう、やめよう・・・・・・ジャジャラが、アーシェラは、もう蘇らない・・・・・。』

パルスさんが見つめる先の青年がハインツェルさんだと瞬間に理解出来たのは、ガーディアンとの意識を数秒ですが
共有したからなのでしょう。前から歩いてくる青年の目には狂気が・・・・・・・・・・・
その時で御座いました、私の体から力が・・・いいえ、まるで魂が抜けてくかの如く、その場に倒れこんでしまったのは。

・・・・・・・場所は変わってリザードマン集落・・・・・・・・
手にした宝珠をキリアに差出し震えた声でキャメロンは勇気を振り絞った。
「・・・・・28年前、まだオレが冒険者だった頃、ある、海人(シーマン)にあったんだ。」
シスター・キリアはただ静かに話しを聞いていた。

・・・・・・ジャジャラ遺跡内部・・・・・・・・

意識がはっきりとはしませんが皆様が何かを言っているのだけがやっと理解できました。
その中でこの声だけがはっきりと意識に直接響いてまいりました。
「さぁ、新しい時代の始まりだ!!」

培養液に浮くアーシェラの眼がうっすらと開き始めた事に気がつく物はまだ誰もいなかった。

・・・・・・・リザードマン集落・・・・・・・・・
キャメロンの独白は続いていた。
「その海人は、オレに1つの依頼を頼んだんだ。それはある寺院に子供を置いてきてほしい。それと、この宝珠を
預かって欲しいと」
そこまで聞いてキリアは静かに口を開いた
「その寺院と言うのはもしかして・・・・」
「スリダブ寺院」
「その子供と言うのは・・・・」
「人型のスライムの子供」
なんという事だろうか、まさかこの様なめぐり合わせがあるとは、シスター・キリアは驚きを隠せないでいた。

・・・・・・・・・・再びジャジャラ遺跡・・・・・・・・・・・
「何故だ!?何故目覚めないんだ!?」
狂気にも悲鳴にも例えれるような絶叫でハインツェルは叫んだ。
うまくいくはずだった、彼女の魂が分けられた二つの楽器、そして転生した魂、確信があったのだ。
倒れたアクアに無造作に近づき顔を鷲掴みにする。
「な!?こいつ、記憶を封じられてる!?」

・・・・・・・・・・リザードマン集落・・・・・・・・・・・・・
「海人はいっていたよ、この宝珠には記憶と魂を封じ込めたって、時がきたら必ず渡す相手が現れるだろうとも、
ただ、こんな事もいっていたな、何故か二つの魂が封じ込められたとも」
衝撃の告白にキリアはどうするべきなのかを悩んでいた。
「つまりそれはアクアの記憶だと・・・・」
「おそらく・・・・な」


71 :グレナデアの砲火 ◆9VfoiJpNCo :2006/12/12(火) 02:33:39
「若いのう」
「若いですねえ」
天蓋の向こうで弾け合う気配に、クロネとアオギリは年寄りじみた感慨を込めて呟いた。
「恐れ多くも見苦しいところをお見せしてしまい……真に申し訳御座いませぬ」
噛み締めるように言い、ぞわりとシバの毛が揺れる。
……莫迦者め。
伏せられた瞳が灼熱の舌を巻く。この老人は憤慨しているのだ。
事もあろうに正面からなど、忍びとして失格の烙印を押されても文句は言えない戦法だ。
万策尽き果てたのならば、それもよかろう。力及ばぬのならば、それもよかろう。
しかし、センカならば最初の不意打ちで皆殺しの手もあったのである。
人間憎さに目が眩むとは……愚かしいにも程がある。
傍目には完全に抑え込まれているように見えるシバの怒気。
それを知ってか知らずか、依然としてふやけた調子で話を進める黒猫と若武者であった。

「一応聞くけど、角度と向きはこれでいいんだよね〜〜!?」
「ええ、万全です」
ベルファーの叫びに、グレナデアの長大な砲身の上に降り立ったアオギリは、涼やかな声で返した。
「よし、ここでロックと」
温泉に浸かったまま、哺乳瓶で奇妙な形を空を描くベルファー。
同時に、グレナデアの主砲が重厚な響きを上げて安定の気配を見せる。
その明らかな連動ぶりにアオギリは賞賛の拍手を送り、クロネは瞳孔を真ん丸にして尻尾を揺らした。
一体如何なるカラクリによるものか……恐らくはベルファー以外に理解する事も用いる事もできぬのであろう。
流石は大陸一の頭脳の持ち主と言うべきか、何にせよ褒めるにはかなりの素直さが要求される青年であった。
「ねえ、断龍さん? あの子ちょっと大丈夫なの?」
「むにゃん?」
「お空も見えないのに狙いをつけるとか言ってさ。どこに撃ちたいのか知らないけど、暗算で弾道計算できるようには見えないんだよねえ」
「弾道計算ってにゃに?」
猫そのものといった顔で聞き返すクロネに、ベルファーは少しばかりの無言をもって話を収めた。
「まあ確かに、如何な達人であっても大筒と弓では勝手が違う故、初弾で命中するとは誰も信じられぬであろうな」
「……いや、勝手云々の問題じゃないんだけどね。――って彼、弓矢しか使った事ないの?」
「うむ、天弓神槍とはよく言ったものよ。かの永遠の若武者は、一万里先の羽虫の目玉すらも射抜いてみせる、人智を超えた腕前の持ち主なのだ」
「ハッハッハ! それはもう、腕前じゃなくって怪奇現象と言うべきだね」
妙に行き違いながらも会話の弾む黒猫と博乱狂気の後ろで、黄金仮面とシバは立ち上る湯煙の如く佇んでいた。


吹き荒ぶ雪の中、寄せては返す荒波二つ。
方や荒ぶる血の色の、獣の瞳に人の顔。方や鋭き氷雪の、瞳の色に獣の牙。
打ち打ち打たれ、いざや沈めと白布の原に混ざり合う。
男が踏み込む、憎し憎しと真っ直ぐに。
男が踏み込む、今はただ生来の激情の赴くがままに。
どちらかの、あるいはどちらもの命を奪う交差の刹那、それは起こった。
いや、興ったと云うべきか。
鋭き雷の一対が、眼下の天蓋を貫き奔った。残された轟きは、柔き雪に包まれた山々を震わせる。
怒涛の如く、雪崩落ち候。
誰かが叫び、手を伸ばした。
誰かが動き、呑み込まれた。

朦朧とする意識の中、彼は迫る天蓋と、その向こうで産声を上げる巨影を見た。

72 :ジーコ ◆ZE6oTtzfqk :2006/12/12(火) 12:46:34
何かが光った、そう思った直後だった。
一瞬の出来事だったさ。山の斜面が吹っ飛んで、次の瞬間には雪崩が俺を押し潰していくんだ。
まともに身動きとれねぇまま押し流され、赤毛やチビやレオルの姿もあっという間に見えなくなった。
そして白髪小僧・・・奴は雪崩に飲まれる寸前まで殴り合いを止めようともしてねぇ。
最後に薄れ行く意識の中で、俺は今までの人生で出会った強敵達を思い出していたよ。
こいつが走馬灯ってやつか、こんなのも中々悪くねぇもんだな・・・ってな。

  ######################################

雪に混じり鮮血が舞う激闘に、終幕が訪れようとしていた。
「おい、そろそろ・・・降参しろ・・よ。じゃねぇと・・・・死ぬぞ?」
迫り来る白き爆流をものともせず、リッツはセンカに言い放つ。
「・・・吐かせ・・・人間っ!!!」
怒りに牙を剥き出し、センカは渾身の一撃を、最後の一撃を繰り出すために命を燃やした。

疲労と負傷が限界にまで達した肉体は、既に各所が崩壊を始めている。
『三華』までしか開けていない状態で『四岑』を開けた敵と戦い続けたのだ。
当然の結果と言える。技量の差をもってすればいともたやすく倒せた相手だった。
しかしセンカは憎しみに負けたのだ、己の中に巣くう人間への憎しみに勝てなかったのだ。
だからセンカは応じてしまった。一撃ずつ打ち合うなどと、馬鹿な誘いに乗ってしまった。

「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

雄叫びと共にセンカの放つ最後の一撃が、リッツの顔面を捉らえた・・・かに見えた。
「クソが・・・まだこれからじゃねーかよ犬野郎・・・」
悲しげにつぶやくリッツの鼻先寸前で止まった拳。
憎しみに呑まれ、誇りを捨てた修羅は真っ直ぐにリッツ睨んだまま、息絶えていたのだ。
命の灯を絶やしてまで、撃たねばならなかった訳ではない。しかし、センカは撃った。

死してなお、センカが歩むは修羅の道。
送るリッツは静かに目を閉じ・・・

死闘を繰り広げた2人も、押し寄せる雪崩の中に消えた。

  ######################################

この日こそが、大陸を揺るがす大戦の始まりだと俺が知ったのは、もう少し後の事だった。

73 :名無しになりきれ:2006/12/12(火) 13:49:01


74 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/12(火) 23:26:32
「なんてこった・・・!」
息を呑むソーニャさんの台詞は眼下を流れ落ちる雪崩の事を言ったのか、余りにも巨大なグレナディアのその姿に対してなのかはわからなかった。
雪崩が起こった瞬間、ソーニャさんにしがみついて私達にかかる重力を反転させて空に向かって落ちた。
響き渡る轟音とすさまじい乱気流に飲まれながら私達は展開した陣図の中で空を彷徨った。
何が起こったかもわからず、ただただ宙を舞う羽のように。

「アビサル、あんたリッツの戦いに手を出したろ?」
雪崩が収まるのを待つ間にかなりの高度まで落ちてしまった。
その間、ソーニャさんは思い出したように私に尋ねる。
「・・・は・・・い。」
気付かれていた・・・

「結界術は心得ております。」そういって私の張った結界から出て行き、二人を制止しようとするレオルさんの行動に私は焦った。
多分あのコボルドはおじいさんの仲間。何らかの情報を引き出されては困る・・・
戦いは熾烈を極め、双方共に消耗していた。
二人とも殺す事もできたけど、グレナディアの周りには将星が集っていて、まだリッツさんを失うわけには行かない。
だから、私はレオルさんがあのコボルドを取り押さえる前に、殺した。
密かに呪文を唱え、コボルドの空間座標に重ねて星界の嵐を召喚した。
ほんの二秒。
僅かにコボルドの周りにノイズが走った程度。
たった二秒間といえども、星界の嵐に晒されて無事であるはずがない。ガンマ線やエックス線、強力な磁場は内臓も脳も破壊しつくした、はずだった。
でもコボルドは雄たけびを上げながら動いた。
肉体的には確実に死んでいた。でも、それに勝る気力で動いた。
その姿に私は恐怖し、空へ落ちて逃げたんだ。
雪崩を察知したわけじゃなかった。本当に偶然の産物・・・

「周りが手を出しちゃいけない戦いってのはあるんだ。漢同士がプライドをかけた戦いって奴がね。
そういうことわからないと、いい男になれないよ?」
反省して落ち込んでいると思われたのかな。
ソーニャさんは優しく言い聞かせるようにいってくれた。
でも私はそうは思わない。目的があるのに、その過程の闘いを優先させるなんて理解できないから。

「やれやれ、すっかり埋まっちまったね。リーーーッツ!」
「いっ行きましょう、ソーニャさん・・・」
「ん?何言ってんだい?」
地上に降り立つと、辺りを見回しながら疲れたように呟いている。
どうやら掘り返すつもりらしい。
でも、この雪崩でリッツさんも死んでくれてもいい、と思っている私がいる。
「み、見てください、グレナディアはもう姿を現しました・・・!星の眼の観測によると強力な霊子砲を放ったんです!」
「ああ、だから急いで間抜けどもを掘り起こして・・・」
「もう時間がないです!ぼぼ僕達の目的はグレナディアの奪取!できなければ・・・破壊!」
「アビサル?」
懸命に雪を掘り起こしてリッツさんを探そうとするソーニャさんに私は苛立ちを覚えた。
目的より優先させる事ですか?リッツさんという人は。
その胸に渦巻くどす黒い何かを打ち消そうと私は声を荒げてしまう。
「リッツさんは、危険です!今の戦闘でも僕が結界を張っていなかったら、みんな、リッツさんに命を吸われて死んでいました!
そんな危険な存在、助ける必要ないです!生き残った僕達で・・・もっ目的を遂行する事が故人の意思を尊重する事になりませんか!」
「アビサル!」
縦目仮面を外し、まっすぐとソーニャさんを見つめた。リッツさんより私と一緒に来てくれるように祈りながら。
でも、鋭い一言と乾いた音が雪原に鳴り響き、私の祈りは打ち砕かれた。
「アビサル、いいかい!?仲間は何があっても見捨てちゃいけないんだ!人としてそれは最低限の事なんだよ!
あいつらはこんなくらいじゃ死なない!・・・いいから、三人を探しな!占いでも目でもなんでもいい!早く!」
「・・・ジ、ジーコさんは下の方まで、流されちゃったみたい、です。でも気絶しているだけ。
レオルさんは、あっちの方に。埋もれていますが無事です。
リッツさんは・・・・あそこです・・・生体反応が低・・・下・・・しています・・・。」
ヒリヒリとする頬を押さえながら雪の下を視て、ソーニャさんに伝えた。
「そうか!まってな!すぐ掘り起こしてやるからね!」
髪の毛を炎に変化させ、リッツさんの救出を始めるその背中を見ながら、私はゆっくりとあとずさる。
静かに縦目仮面を被り、「さよなら・・・」小さな呟きと共に私は空に向かって落ちた。

75 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/12(火) 23:31:03
##################################################

『星辰の導き通り・・・来たか!千年の種子!そして伊吹を告げる奈落の大聖堂!』
岩の上に静かに佇んでいた黄金仮面が小さく呟き見据える先に、私は着地した。
既に太極天球儀は展開しており、私の360度を覆う陣図であり、障壁となっていて、全てを拒絶する力場を形成している。
私を捉えて眼を向けたわけではない。
まるで私がここの位置に着地する事がわかっていたように、予め眼を向けていたのだ。
・・・誰だろう?私はこの人を知っている・・・それに、あの星見曼荼羅のマント・・・一族のみに伝わる物のはず。
既に一族は私を残し誰一人として生きてはいない。
思い出そうとすると小さく頭痛が走り、思い出せない。ただ「知っている」としか。
『やめておけ、プロテクトがかかっている。思い出そうとしても無駄な事。』
対面する黄金の仮面と木製の縦眼仮面。同じ星見曼荼羅のマントとローブ。
私の思考を読んだかのように黄金のマスクの人物が宣言する。
そう言われ私は思考を打ち切った。
思い出せないものを思い出そうとしても時間の無駄。
それより先にやる事がある。

温泉につかる龍人、黒猫獣人。半人半馬、そしてコボルドのおじいさん。
黄金の仮面の人物だけでなく、全てが恐ろしく強大な気を持っている。
「我が名はアビサル・カセドラル!グレナディアを封じに来た。
あれはこの世界にあっていいものではない!故に星界に追放する!」
これだけの人物達を前に言い切ったとき、私は気付いた。
なぜ、グレナディアに拘るのだろう?なぜ、こんな危険を冒してまでこの場に立ち、宣言を・・・?
自分の行動に理由がない事に愕然とした。
まるで誰かに操られこの場所にきて、こう言わされている様な感覚。

だけど、そんな感覚に囚われていられる状況でもない。
即座に私は理由を作り、術を展開する。
そう、無駄な犠牲を出さないよう警告するために来たのだ、と。
「グレナディアと共に星界に呑まれたくなければ、すぐに去ね!
我、空の理を知りて天則を曲げん!ポタラの果て、銀叡の彼方、其の空間を今ここに導き・・・」
呪文の詠唱と同時に私の周囲の空間が星界のそれに飲み込まれていき、景色が変わる。
青蛇琴を呼び出すために広げた門は200M。それでも私の体は限界を迎えた。
でも、この術は違う。
何かを呼び出すのではなく、ただ空間を呼び出し蝕ませるだけ。
そこにあったものは全て星界に投げ出され、後には不毛の大地しか残らない術。
侵食は進み、私の周囲30mは既に星界へと沈み、何もない漆黒の空間となっている。
うかつに近寄れば星界へと放り出され、永遠に彷徨うことになるだろう。
もうこれで大丈夫・・・後は勝手に侵食が進み、必要とあれば街ごとグレナディアを追放できる!
あ・・・でも、制御しないとソーニャさんまで巻き込んでしまうかも・・・
自分でも今更という思考を駆け巡らせながらも、眼前に立ち並ぶ強力な気の持ち主達から眼を離さずに凝視していた。

76 :門が開かれグレナデアが飛ぶ ◆9VfoiJpNCo :2006/12/13(水) 04:53:07
正面にて虚空を解き放たんとする星図柄のマントとローブ姿の術者を見下ろし、次いで黄金仮面へと、皆の視線が集中する。
「お知り合い?」
ベルファーの問いかけには答えず、かの者は流水の如く宙を舞った。
風に膨らむ衣装より、複雑な文様の球体が浮かび上がり、展開した本人の体を包み込む。
『焦らず、急がず……正しき星の道への初の併せと参ろうか』
それは、向かい合って広げられたアビサルの大極天球儀と似て非なるものであった。
文様の複雑さ、緻密さは言うに及ばず、輝きの力強さにも数段の違いがある。
更に密度が、圧力が、迫力が、禍々しさが……しかし、何よりもの差異は誰にとっても一目瞭然であった。
天球儀の表面に中程まで埋没した状態でするすると滑り巡る、二つの球体がそれだ。

その一つは太陽であった。
その一つは月であった。

積雪に染み渡る血のように空間へと侵食する星の彼方の虚無を物ともせず、もう一つの天球儀はやって来た。
制御に集中するアビサルの目が見開かれる。
「何者だ!?」
『ふむ、まだその程度の門しか開けぬのか。未熟未熟……汝の今までの怠りが手に取るように見えるわ』
「何者なんだ!?」
『とっくに存じておろうはず』
互いの天球儀が触れ合うギリギリの間隔で、視線と言葉を交し合う。
仮面越しにもかかわらず、己が芯まで見透かさんとするその眼力に、アビサルは腸を絞られるかのような重圧を覚えた。
静寂の中、
『……では、いざ試みん』
「やめ――」
最後の一線が詰められる。
大極、日輪、月輪、不完全と完全なるそれらが重なり、絡み合い……今再び、恐るべき規模でセフィラは開かれた。
それは実に、二百五十年ぶりの出来事であった。

収まるどころか急速な広がりを見せ始めた虚無の渦。
「アッハッハッハ!! 我が家の庭で何してけつかるお馬鹿さん!? いや、実に興味深い!!!」
いつの間にやらグレナデアの頭部の上で腰に手を当て哺乳瓶を傾けていたベルファーが、迷惑顔で楽しそうといった風に叫んだ。
「ふうむ、これは……」
「何かご存知なのですか、先生?」
「うんにゃさっぱり。しかし、似てはおるな」
「……ええ。そしてどうやら、これは失敗のようですね」
その横で、あくまでも日常会話的な態度を崩さず何やらと話し合う師弟。
「君達随分余裕だけど、まさかこのままトンズラするもりじゃないだろうね?」
「貴方はお逃げにならないので?」
爽やかに聞き返してくるアオギリに、ベルファーは哺乳瓶を口から離し、少し真摯な顔つきになって言った。
「被害の規模によるね。僕の計算によると、アレは限界まで膨らんだ後に爆ぜて消える。周りの空間を巻き込んでね。
それが採掘場周辺までならかまわないけど、さすがにルフォン市街までとなるとねえ……」
言葉の途中で山が揺れる。
「アプローチせざるをえない」
辺り一面の白を輝かすお天道様へ向け、ベルファーは高々と哺乳瓶を掲げた。
揺れが、一層激しさを増す。
すでに広がりゆく虚無により、グレナデアを押し固める地盤は崩壊の一途を辿っている。自由を取り戻すのは容易い事であった。

「まあ、一先ずは…………飛べっ!!」

盛大極まる唸りと軋みを塗り潰す、特大の火柱を噴き出し浮き上がった姿は、簡単に表すなら歪な人型と言うべきか。
その両肩に長大な砲を載せた、四足歩行の巨大にして豪壮な、獣性溢れる人型である。
見える限りで最も高い山の頂近くまで垂直に上がったその光景は、さながら見る者の心を震わす一つの天災の如き様であった。
果たしてそれは、恐怖によってか畏怖によってか。

各人の胸に抱かれた、あらゆる感慨を吹き消さんばかりに、グレナデアは無言にして明快な、存在感という雄叫びを上げた。

77 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/13(水) 07:34:14
――ガナン動力ブロック最下層、第7霊子炉
タッタッタッ…。規則正しいリズムで薄暗がりの中を2人分の足音が通り過ぎて行く。
足音の主は黒騎士とレジーナだ。
この2人は上層階での騒ぎに紛れ、動力ブロックに潜入していたのだ。
「パルモンテの坊ちゃまは上手く逃げたようね、こっちも急ぐわよ」
「そうだな。しかしどうやってガナンから出るつもりだ?もう物資搬入通路は押さえられてるぞ」
声を潜め、会話する2人。周囲には人影は見当たらぬものの、用心に越した事は無い。
まあレジーナのハイヒールの靴音が響く時点で、声を潜めてもあまり意味はなかったが。
「それについては準備出来てるわよ。だからここに来たんじゃない、ほら見えてきた」
レジーナの指差す方を見て、黒騎士は目をぱちぱちさせた。
その指先が示したものは、あまりに大き過ぎて一見しただけでは何であるか判らなかったのだ。
かつて聖獣を滅ぼす為だけに生み出された破滅の使徒、その名はグレナデア……

ルフォンから発掘されたグレナデアは、ガナンに運ばれたが格納するスペースが無かった。
それで動力施設増設に伴う地下拡張工事で用意された空間を臨時の格納庫に作り替えたのである。
ラライア山嶺の中に直立する円柱型建造物のガナンにおいて実際に地上に露出している部分は、
 全体の半分程度でしかない。この拡張工事は地中部を横に広げて動力施設を建築する筈だった。
それが急遽予定変更となって、グレナデアの臨時格納庫に利用したのである。

黒騎士は聳え立つグレナデアを見上げ、嫌な予感を全力で否定していた。
「まさか…いやまさかな………なぁレジーナ、ひとつ聞いていいか?これをうば…」
「奪うのよ、よく分かってるじゃないの。それなら話は早いわね、今か…」
「おい!?冗談だろう!?いくらなんでも無茶苦茶だ!!」
慌てて黒騎士がレジーナの肩を掴んで制止するも、すぐさま叩き込まれた肘打ちに強制的に沈黙。

そんな2人に、前方の暗闇から声が掛けられた。
「姉さん?随分と早かったね」
「ギルバート、準備は出来た?ちょっと予定を早めるから」
暗闇から現れたのは黒髪の長髪に鍔広帽子、襟元ではためく深紅のスカーフを身に着けた男。
寡黙にして迅速、凄腕のスカウトとしてレジスタンスに参加していたギルであった。

78 :碧い場所で ◆d7HtC3Odxw :2006/12/13(水) 21:59:52
そこはただ・・・・ただ碧く広くて狭い場所、そこに二人きり、28年もの間、二人きり

「ねぇ、お姉ちゃん・・・・・」
「なぁに?」
「お外が騒がしいよ?」
「そうね、もうすぐここから出れそうね。」
その言葉にはしゃぐ少女、寂しげに笑う女性

「そとに出たらうんとお話しするんだ。」
「そうね、きっといっぱいお話しする事があるわね。」
「うん!!私にいっぱいお話ししてあげるんだ、ととさまやかかさまや、みんなの事」
「そうね、私もお友達に会いたいわ。」

夜でも碧いその場所に二人きり 二人の顔に陰りあり
「でも、お姉ちゃんここから出たら・・・・・」
「大丈夫、私にも戻らなきゃいけない理由があるから」
「でもでも、体はもう無いんじゃ・・・・」
「それも大丈夫、ちゃんと5つ目を用意してるから」
「あなたこそ、お外には怖いおばさんや、おっきくて黒いのがいるんじゃないの?」
「きっと私が強くなってるから大丈夫」

二人の心配事は尽くこと無く、深夜になろうと碧い場所
「誰も死んだりしないよね?」
「大丈夫だと、思う・・・でも、もしもの時は私がなんとかしてみせるよ」
「本当、お姉ちゃん?」
「ええ、本当よ、だからもうお休みなさい」
「うん、お休みなさい」
「お休みなさい」

広くて碧くて狭い場所、いつまでたっても二人きり、解放されるのはもうまもなく、龍人の女性とシーマンの少女
いつまでたっても二人きり。



79 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/12/14(木) 20:52:42
「嘘だよね・・・?どうして君が?」
剣をカランと落としちゃったパルちゃん、まるで信じられないものを見たって感じだよぅ。
もしかして知り合いなのかな?
でもあのハインツェルって人、なんだか悪い奴っぽい!
こんな時、ラヴィはどうすんのーッ!!

ラヴィがオロオロしてる間にハインツェルがアクア姉さんの頭を鷲掴みにしたよ。
記憶がどうのこうのとか、よくわかんないけど・・・これだけは分かる!
「このーッ!!アクア姉さんを離せッ!!」
猟理人は包丁を人に向けてはならない、この掟を破らずに済む方法・・・それは素手で殴るッ!!
十六夜をその場に放り捨てて、一気にダッシュ!くらえラヴィパ〜ンチ!!
「邪魔だ!!」
「えっ!?」
トップスピードに乗ったラヴィの攻撃を、ちらっと見ただけで避けた!?
すかさず反撃がくるけど、ラヴィもギリギリで避けるよ。・・・強い!この悪者、強いよ!?
「アスラ・・・始末しろ。僕達の楽園を乱す侵入者に裁きを下せ。」
その一言におとなしくなってたガーディアンが、またまた動き始める!?

でもこのガーディアンは・・・ハッちゃんの友達なんだよね?じゃあ倒せないよ!!
さっきのパルちゃんの攻撃で、火が弱点なのは分かってる。唐紅なら簡単に倒せると思う。
けど、ホントに倒しちゃったら・・・きっとハッちゃんは悲しむよぅ。友達がいなくなるのは辛いもん・・・・。

   ***************10年前***************

「よーし二人共、今日はここまでだ。よく頑張ったな。」
ドラッドの声に、ラヴィとアンナは安堵の溜息をつき、その場に座り込む。
修行は厳しく、二人は毎日限界まで疲れ果てていた。
それでも決して諦めず、切磋琢磨を続ける二人をドラッドは誇りに思っていたのだ。
しかし黒包丁を受け継ぐことができるのはたった一人。
ドラッドは全く異なる特徴の二人を交互に見比べ、思案する。
総合的な技術・能力共にアンナの方が上だったが、少々プライドが高く熱くなりやすい。
冷静な判断ができなければ、猟理人としてはやっていく事は不可能だ。
それにアンナは上流階級の出自のため、どこと無く人を見下した感があるのも問題だった。
それは猟理人に依頼する者は傭兵を雇う金の無い貧しい者達が多い事に由来する。

80 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/12/14(木) 20:53:38
そんなエリート気質のアンナと、正反対に位置するのがラヴィだった。
技術的には既に並の猟理人を遥かに上回るが、性格が呑気過ぎる上に争いを好まない。
危険なモンスターとの戦闘が猟理人の仕事だ。
穏やかな性格では基本的に長続きはしない。というよりも、途中で命を落とすだろう。
ラヴィがドラッドの弟子になってから早4年、そろそろ一人前のお墨付きを貰う頃だ。

ドラッドは悩んでいた。どちらも猟理の腕前は達人級だが、精神面で少々不安が残る。
猟神とまで称された伝説の猟理人も、老いには勝てない。
まだドラッド自らが教える事ができる内に、全ての技と包丁を引き継がせたかった。
そして遂に叶わなかった生涯を懸けた夢、『究極の猟理』を自分の技と包丁で叶えてほしいと。
その最終候補こそが、アンナとラヴィなのであった。

このように後継者を決められないまま、時は流れ・・・運命の日が訪れた。
その日はアンナとラヴィ、二人にとって忘れる事の無い最悪の一日だった・・・・。

   ***************再び現在***************

友達がいなくなるのは嫌・・・・。
友達が死ぬのはもっと嫌・・・・。
だからラヴィには斬れないよぅ、これ以上ハッちゃんが悲しそうなのは嫌だよぅ!!
いつもヘラヘラ笑ってて、みんなに弄られてるハッちゃんの方がホントのハッちゃんなんだお!

ラヴィは疲れて立ってるのもキツイよ、全速はあんまり何回も使えないのに無理したから・・・・。
でもなんとか踏ん張ってもう一度チャレンジ!!アクア姉さんを助けるッ!!
「え!?何?動いてるの!?」
レベッカ姉ちゃんの声がして、突然床がラヴィを押したような感じがしたよぅ!!
この感じって・・・ものすごい勢いでこの部屋が上に向かって動いてるんだ!!
「ジャジャラが真の姿を取り戻すんだよ。運が良い、記念すべき瞬間に立ち会えるなんてね。」
「止めろハインツェル!今ならまだ間に合う!」
ハッちゃんが叫ぶけど、ハインツェルはそんなの全然聞いてないっぽいよぅ。


ラヴィ達はどうなっちゃうのーッ!?

81 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/14(木) 22:22:05
あれは私の管轄外だ。あれはゴレムではない、動く一城だ。
レジスタンスが計画を焦ったのも無理はない。
砲塔を背負った鋼鉄の巨人が、撃ち崩された山肌に立ち上がり彼方を向く。
巨人はその全長からして、一歩歩けば砦のひとつも易々と踏み潰せるであろう。

私とシャミィ、レニーは、雪に埋もれた王国騎士を掘り起こす。
乗ってきたゴレムは最初の砲撃で生じた雪崩に巻き込まれ、斜面の下のほうで横転したままだ。
私ら三人、五体満足で生きているのが不思議なくらいの転がり方をしたもので
シャミィは運良くも「霜乃武」を失くさずに済んだ事を喜んでいた。

一方のレニーは顔色が悪い。
「白い牙」の安否が気懸かりなのだろうが、山に登った筈の彼と、もうひとりの王国騎士は見当たらない。
あの様子からして、もし彼らが爆心地近くで巻き込まれたのなら生存の見込みすら薄い。
「息はしてるわ。大丈夫、気絶してるだけね」
彼女は騎士と、顔と顔とを間近に近付けその呼吸を確かめた。
半身を掘り起こされた騎士は大男で、
彼が意識を失いながらも片手にしっかと握りしめたままのハンマーはこれまた大きい。
男こそは騎士団の古強者ジーコ・ブロンディだと、レニーが教えてくれた。
「あの雪崩だ、骨折くらいはしていてもおかしくないわ。ゆっくり上げたほうが良さそうね」
「骨は牛より太そうだがの」
男の脚を埋める雪を崩しながら、三人がかりで慎重に引きずり上げるが恐ろしく重い。
どうにか斜面に踏ん張って悪戦苦闘しつつも、数分の後に彼を救い出す事が出来た。
すぐにその場へ横たえ、レニーの躊躇いがちなビンタ数発がその頬を張ると、
ジーコは起動したグレナディアの咆哮に勝るとも劣らない、盛大なくしゃみとともに目を覚ました。
「お、おう……かあちゃん!? あ、いや、レニーか」
騎士は身体を起こして、キョロキョロと辺りを見回す。
「ジーコさん、お怪我は!? それと他の二人は……団長補佐と、リッツは!?」
「不思議と怪我はねぇ、ちょいとフラつくくれぇだ。
リッツ達の事は……教えてやりてぇのはやまやまだけどよ」
「俺が生きてンのも不思議なくれぇの雪崩でよ。生憎と、見失っちまった……情けねぇ体たらくだ」
「そんな、ジーコさんが無事で何よりです。しかし何故? どうしてこんな無茶を?」
「ああ」
レニーの詰問に顔を背けたままジーコは自分の頭頂へ手を伸ばし、凍りかけのモヒカンを指でほぐしていた。
なおもレニーが顔を寄せると、男はばつの悪そうな顔をして、答える。

「昨日言った通りよ、俺ら三人で連中をブッ潰すってな。
他の奴らはレオルとあの団長殿が、上手い事逃がしてくれたからな。
ついて来ちまったのも大分居たが、みんな麓に置いてきた。どっかに隠れてる筈だ。
結局登ったのは俺らと他に二人、赤毛の女とチビだ。ロイトンから来たとか言ってやがったな」

82 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/14(木) 22:23:15
そこへシャミィが、不機嫌そうに口を挟む。
「まず何故に三人で攻め入るなどという酔狂を?」
「何だオメェ、獣人か?」
ジーコは怪訝そうにシャミィを見る。
掘り出された直後の彼のぼんやりとした目付きは、いつしかぐっと眼光鋭くに変わっていた。
「ニャンクスだ。シャムウェル・アルフェミィ、傭兵だの」
「この二人は傭兵です。『ゴレム狩り』ギルビーズさんとシャミィさん」
「違う、我が名はシャムウェル・アル――」
私がシャミィの横腹を肘で小突いた。戦士ジーコはしばしの間、私と彼女を眺め回すと、おもむろに口を割る。
「ニャンクスの嬢ちゃんよ。漢の言葉ってなぁ、一度口に出したら引っ込めらんねぇモンなのよ。
俺とリッツとレオルってのは昨日、団長さんの前で『三人で公国の基地にカチ込む』っつったんだ。三人だけでな」
「全く、死人が三人で済めば良いがの」
「喧嘩は止して。二人を探さなきゃ」
レニーが言う。当初の目的を思い出し皆は一瞬、山頂の怪物に目を遣った。
公国軍駐屯部隊の発動とは違うと見たが、兎に角事情も分からずに、あれの足下に近付くのは危険極まりない。
「レニーさん、御一緒します」
傍の木に立てかけておいた槍を取り、逸って斜面を登り始めるレニーに続こうとした。
しかし彼女は振り返ると、
「いいえ、私が一人で行くから、貴方たちはゴレムを起こしに戻って」
「そうは言っても私、給料分働かないと気が済みませんので」

「車がコケたのか?」
「私は提案する、こやつに車を牽かせれば良かろうと。動けるのであろう?」
「あたぼうよ」
シャミィに指差されたジーコはハンマーを担ぎ上げると、それを振るって見せた。
軽々と振り回しているようでも、風を切る低い唸りがハンマーの重量感を十分に感じさせる。
彼の腕力なら、ゴレムの一台などすぐに引っ繰り返せそうだった。
「しかしレニー、奴らをこんな目にあわしちまったのは俺の責任もある。こんなザマで良いのか?」
「騎士団員として、ここで貴方を失う訳にはいきません。先に逃げて」
「分かった。今日の事は本当に済まねぇ、必ず戦場で埋め合わせをする。
それとだ、レニー。白髪小僧は……リッツは、こんな所でくたばるようなタマじゃねぇ。きっと生きてる。任せたぜ」
「勿論、私は信じています」
そう言い残すと、彼女は駆け上がっていった。後を追う私に彼女は気付いただろうが、今度は断らなかった。
シャミィはやはり機嫌を損ねた様子だったが、特に文句も言わずジーコと残った。

83 :とある女の道程:2006/12/16(土) 10:03:15
白い津波が全てを押し流し、王国軍の野営地は見るも無惨な状態となっていた。
幸いにも死者の数は少ない。事前に避難していた事が功を成した為だ。
朝日に照らされ、白銀に煌めく雪原を無心に掻き分け赤毛の女は呼び続ける。
殺し、奪う事しか知らなかった彼女に、新しい生き方を教えてくれた男の名を。

「リッツ!!どこまで埋まってんだい!!リーッツ!!」

仮面の少年が示した場所を懸命に掘り返し、その指は凍傷で赤黒く変色していた。
けれども彼女は止めようとはしない。
嫌なのだ。失いたくないのだ。その男は彼女にとって辿り着くべき場所だから。

          † † † † † † †

彼女は4人兄妹の末っ子だった。何をするにも兄や姉の後で、彼女は何時も不満だった。
初めて父親から槍の稽古をつけて貰ったのも、兄や姉達が『仕事』を覚えた後だった。
不満はいつしか怒りに変わり、その怒りは彼女を支える強さに変わった。
歳が10に届くと、彼女は人を殺した。それは1番上の兄だった。

『アタシはコイツよりも強い。だからアタシに仕事をちょうだい。』

切り落とした兄の首を父親に向けて放り投げ、次の日から彼女は山賊となった。
彼女はそれからも己に磨きをかけて、槍の腕前は歴戦の兵すらもたやすく倒す程だった。
それでもまだ足りなかった、彼女は満足出来なかったのだ。
世界は広い。無情なまでに。
とある仕事でバニーガールとの戦いに敗れ、彼女は更なる『力』を求めた。
《メダリオン》の力を手に入れてからも、敗北への不安は消えずに彼女の中で燻り続けた。

世界を滅ぼす獣を見た時、その燻りは吹き飛んだ。
所詮は人間、限界という名の壁を知った。
そして、その壁を越えた男と出会い、彼女の世界はがらりと変わった。
胸が熱くなった。自分がとてもちっぽけな存在に感じた。
そこが彼女の新たな人生の出発地点だった。
彼女は歩き出した。ちっぽけな自分を、再び強い自分へと鍛え直していく為に・・・。

          † † † † † † †

グナード山から朝日が射し、半刻の時間が過ぎた頃ようやく彼女は男を見つけ出せた。
既に両手はひび割れ、血が滲んでいたが構う事なく抱き起こす。

「死んじゃ駄目だからな!アタシを置いて逝くなよクソ白髪!!」

84 :遺跡慟哭 ◆d7HtC3Odxw :2006/12/16(土) 23:30:50
巨大な軋みとうねりをあげ、森が崩れ去る。そして、過去の都市がその姿を再び現すのだった。
ギ・・・ギ・・・・ギギッギギイイイイイ
安息の地の突然の崩壊にやり場の無い怒りを吼え狂うモノ共がいた。
ーーーー遺跡内部ーーーーー
「アスラ・・・どうした?早く侵入者を・・・」
そこまで言いハインツェルの言葉は遮られた。
「ハインツェル、そこのスライムのお姉さんのお陰で僕の封印は解かれたよ。」
予想していなかった反応にハインツェルは戸惑った。
「な、何を言ってるんだ?」
白のガーディアンは真っ直ぐハインツェルとハイアット二人を見つめて変化を始めた。
その姿は、天使の羽を持った、髪の短い
「アーシェラ!?なんで?」
ハイアットが叫ぶ
「僕はアーシェラじゃない、アーシェラの姿をモチーフに作られたガーディヴァルキリエ 「アスラ」だ。」
アスラはハイアットを、ハインツェルを、そして、驚きの連続に唖然としてるパルス、レベッカ、ラヴィを見て最後に
まったくあらぬ方向を見た。
「僕の本当の任務は都市内部全ての命を守る事だ。そして今、この場所に脅威が迫ってる。」

暗き空に一閃の煌き、その光禍々しく一点を目指す。
「これを見て・・・・私が感じ取った脅威だよ。」
アスラは魔方陣の中に映像を映し出した。それは巨大な光の矢
「このままだとジャジャラ直撃だ 僕はコレを止める。でも一人じゃ無理だ、そこの二人に出来れば手伝って欲しい。」
そう言って、パルスとレベッカを指差した。
「か、かってな事をするな!!」
ハインツェルが叫んで踊りかかる・・・・が途中でその動きを止めた。
「か、体が動かない?」
アスラはにっこり微笑むとハインツェルの頬を撫でた。
「僕の遺伝子コードにはアーシェラの遺伝子が使われてるんだ。つまり、5番目のアーシェラとも言える。君たちは
 アーシェラには攻撃できないようにされてるだろ?だからこの姿の僕には逆らえないんだ。」
さらにアスラは二つの楽器に手をかざした。
「今、魂をここに戻すよ。」
「やめろおおおおおおお!!」
ハインツェルの叫びが木霊した。

ーーーーリザードマン集落ーーーーー
「族長!!大変ダ!!」
物見の戦士が族長の家に息を切らしながら転がりこんだきた。
「ドウシタ?地震デ何カアッタノカ?」
「メガニュームノ大群ガコッチムカッテル!!」
「何ダト!?」
ギイイイイイイイイイ!!
人間の大人よりも巨大な蜻蛉の大群が黒い波の如く押し迫ろうとしていた。
「女、子供ハ安全ナ場所二!!戦士ハ武器ヲ摂レ!!」
酋長の言葉にリザードマンが迅速に動く、
「ググ、必ず戻ってね。」
「安心シロ、オレハオ前ヲ悲シマセナイ」
新婚の二人が熱く抱き合う。
「ミセツケルナ、イクゾ!!」
「ゴゴノアニキ、マッテクレヨ」
騒ぎの中キャメロンの持つ宝珠が淡い光を放ってるのに気がつく物はいなかった。

85 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/12/17(日) 16:20:16
「どうして!?君はここを守り抜きたいはずだよ!?ここまでして……甦らせたかったんでしょ!」
「違う!アーシェラが復活しなければ……彼女がいなければ僕は存在する意味がないんだ!」
「そんなこと無い!どうしてそんなこと言うの!?」
その問いに答えたのは、未だ拘束されたままのハイアットくんだった。
「僕達は……どんなにあがいたって……作られた人形だから……
女王を護るために作られた忠実なる人形……」
哀しみを通り越した無表情……その頬を静かに一筋の涙が伝っていく。
剣を拾い上げて叫びながらハイアットくんの拘束具をぶった切る。
「例え作られた存在だとしても……人形なんかじゃないよ!人形は泣かないし!
バナナ食べないしっ!しょうもない事しないよっ!」
ハインツェルくんは狂ったように笑い出した。
「フフ……ハハハハ!! また僕達は人形じゃないっていうのかと思ったら……
よく分かってるじゃないか、ハイアット。そうだ、我らは女王の忠実なる人形!」
ハインツェルくんはよく分からない機械から異形の剣を取り出した。
「何を……?」
「アーシェラが甦らないのなら……この都市と共に死ぬ!ジルヴェスタン、こいつの生命を奪え!!」
剣を構え、跳躍するのが見えた。狙いは見なくても分かっている。
「させない!」
レベッカちゃんの前に走り込み、左腕の盾を掲げる!
一瞬後、剣を受け止める鋭い金属音が響く。埋め込まれた六つの魔石による特殊強化が施されているから
防ぎきれたものの普通の盾なら粉々になるほどの衝撃だ。
「何?何なのーッ!?」
「レベッカちゃん……逃げて!」
レベッカちゃんか僕のどちらかでも殺せば、この都市は破壊されることになる。
それならより殺すのが簡単なほうを狙うのは目に見えている。
「ふふ……ならばお前を先に殺してやる!どうせどっちが先に死ぬかの違いだからな!」
矢継ぎ早に斬撃が閃く。あのラヴィちゃんの攻撃を軽々とよけたぐらいだ、話にならない程強い。
でも殺されるわけにはいかない……彼が正気を取り戻すまで!やっとの思いでその一撃一撃を弾く。
「お願い……目を覚ましてよ!」
やがて壁際まで追いつめられた。
わずか数秒だったかもしれないけど、ここまで防ぎ続けたのが不思議なぐらいだ。
「残念だがこれが正気だ」
とどめとばかりに最後の一振りが振り下ろされた!!
……もう防ぎきれない!ここでみんなこの都市と一緒に心中なんて絶対いやだ……!!

でも、そうはならなかった!僕はこういう時に限ってやたらと運がいいのだ。
閃くは、純白の光! 直視するには眩しすぎるぐらいの目映い光。
そして、振り下ろされようとした剣が弾き飛んだ!!
「俺のバナナ友達に手を出すなんて百万年早いぜ!」
ハインツェルくんは振り下ろしたはずの剣が手の中に無いことにしばし呆然とし、その表情を怒りにゆがめた。
「貴様……!訳の分からないことを抜かすな!」
颯爽と銃を構えているのは……他でもない、僕のバナナメイトでした!
「ハインツェルは俺が止めてみせる。君とレベッカちゃんはアスラと一緒にこの都市を護ってくれ!」
あの乱戦にも関わらず、振り下ろされた剣を正確に撃ったのだ!
繊細で大胆で、何があっても惑わされず真っ直ぐに前を見つめる目。
その瞳に宿るのは、どんな時だって、決して狙いを外さないだけの心の強さ。
彼は……本当に……過去から来た最強コマンダーだったんだ!

86 :ジーコ ◆ZE6oTtzfqk :2006/12/17(日) 17:11:35
とんでもねぇな・・・ありゃ人間がどうこう出来る代物と状況じゃねぇぞ?
空に飛び上がり、不気味な咆哮を轟かす巨人を見て俺は口をあんぐり開けたまま固まった。
さらに空には何やらヤバそうな裂け目が広がってやがる。
正直言うと、今すぐにでも逃げ出したかった。たが身体がちっとも動きやしねぇ。
本能レベルの恐怖に麻痺してやがるんだ、なのにレニーとギルビーズは行った。
死ぬかもしれねぇのに、山に向かって行ったんだ。正気か!?
「逃げんのかの?」
隣のチビ猫が真ん丸の目で俺を見上げ、ニヤニヤと笑っていた。
コイツはなんでこんなにも平気そうなんだ?

俺は18の時に冒険者になった。家を飛び出して、まだ見ぬ冒険に胸を高鳴らせてたよ。
運よく気の合う仲間にも恵まれて、何もかもが順調だったさ。
デカイ稼ぎも何度かあって、金には不自由しなくなった時、仲間の一人が引退した。
商売を始めるとか言ってな、俺もその頃から傭兵の仕事が多くなってパーティーは解散した。
今思えば、あの頃が俺の人生の分かれ道だったんだな・・・。
稼いだ金で特注のバトルハンマーこさえて、傭兵稼業一本に絞ってからは災難続きだったよ。
まあそれでも俺は不満なんざ無かった。なんだかんだで生き残って来れたんだからな。
いつの間にやら『不動の砦』なんて大層な名まで付いてよ、天狗になってたのかもな。
今じゃガタガタ震えるしか出来ねぇ、唯の腰抜けだってのによ。ハハハ、笑えるだろ?

なんでかは分からんが、俺は自分の身の上話をしていた。恐さを紛らすためだろうか?
「・・・笑えんの」
ぽそりとチビ猫が呟く。相変わらず笑ったままだ。
「いかなる時も己の命を秤に掛けられる者だけが、生きて残るからの。お前は正しい」
俺はチビ猫をまじまじと見つめ直し、続く言葉を待った。
「秤に掛けれても、それを無視する輩もおるがの。さて・・・ジンは無事じゃろうかの」
何かを期待するような目で俺を見上げて笑うチビ猫に、俺はヤレヤレと肩をすくめた。
あぁ馬鹿だ。俺ってばマジで大馬鹿野郎だぜ。
オンスロートを背負い直して、巨人を睨む。やっぱり怖ぇ、だがもう退けねぇ!!

「自慢だがな、俺は敵から逃げたトキはねぇんだよ。だからよォ・・・、
ちょいとばかり無茶苦茶だが、やってやろうじゃねーかよバカヤロウ!!!!!」

87 :ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2006/12/17(日) 21:51:00
「ここは任せて、君は君のことに集中するんだよ?最初はちょっとうるさいだろうけど我慢してくれ」
パルスにそう言い聞かせてアスラの元に送り出して、ハインツェルとお互いに黙り向き合う、
彼と向き合った瞬間に空気が変わっていくのを感じる。僕達全員に対する明らかな殺意だ。
そして落ちていた剣がハインツェルの手に吸い付かれるように戻っていく
張り詰めた空気、僕とハインツェルのたった数mの間の空間には誰一人として入れないだろう。
外界から隔絶されていくのを感じる、時が止まっているようだ。
この中で動いているものはハインツェルの持つ剣だけ、剣先だけがまるで生きているように蠢き伸びていき、
刃は何十にも分かれる。その姿はもう剣なんて言葉は不適切だ、ただ全てを切り刻むだけの物になっていく。
「…………ハインツェル、本気≠ネんだな?」
聞くが返事はない、本気なんだ。そして一つの声が戦いの火蓋を切って落とした。

     刻め!!!<Wルヴェスタン!!

「くっ!!」
地面を、壁を、天井を、全てを凄い勢いで斬り付けていく!ただ暴れるだけに見える。
だけどそうじゃない、彼だって僕だってホムンクルスだ、演算を目的に造られている。
しかし、おかしい、刃は僕のほうに全く到達しないどころか、すり抜けていってる?
「ハハハハハハッ!!!何もお前と戦う必要はない!!あの二人ともこれで切り刻んでミンチにしてやる!その方が早い!!」
そうだった!何も俺の相手をする必要なんてなかった!刃を自由自在にできるんだったらだれだって切り刻める。
こんなことに気付かなかった俺は馬鹿だ!!
「ハインツェル!場所を移そうか!?」
僕は力を込めローヴェスタンをハインツェルの足元に向ける、トリガーに指を掛ける、
あたりが眩い光りで満たされていき。足元にはかなりの大穴が空き、ハインツェルが落下していく。
「き、貴様!!いい加減に!!」
「それはこっちの台詞だぜ?ハインツェル、いい加減にしておけっ!!」
そして僕もハインツェルが落ちた穴に飛び入りその後を追う。この下は中庭だった……

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「ハイアット君が!!」
「落ち着いて!パル!あの馬鹿は大丈夫だって!」
落ちていったハイアットに動揺するパルスをレベッカがなだめ、アスラに話しかける。
「アスラ……だっけ?アンタはこの都市内全ての命を守るのが役目なんでしょ?」
「そうだよ、なんで?」
「だったら今すぐあの二人を助けるべきなんじゃないの?」
至極最もな質問だ、確かに全ての生命を守るのが目的ならあの二人のどちらも殺させるわけにはいかない。
しかし、かえってきた答えは機械のように残酷だった。
「あの二人は命あるものじゃない、あれは消耗品じゃないか、もっと適切にいうと自立型管理用ユニット、生命には入らない、守る必要性はないよ」

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88 :ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2006/12/17(日) 21:51:32
着地したのは中庭、そう、アーシェラとハインツェルと、三人でよく遊びにきていた思い出の場所。
「……相変わらずここは綺麗だな、ハイアット、アーシェラもここにもう一度来たかっただろうに。」
綺麗なんかじゃなかった、年月はどんなものも消し去っていく、荒れ果て、ボロボロになった中庭。
それでも、それでも俺達にはここは変わらない場所に映った、聖地のように、いや、俺達にはここは聖地そのものだった。

「……ハインツェル、そうだね、綺麗だ、だけどアーシェラはもういない。」
「抜かすな!!お前は僕を裏切った!アーシェラの復活を拒んだ時点で、僕の知っているお前は死んでしまった!」
「アーシェラは……俺達に命は二度はない≠ニ教えた、憶えているよねハインツェル?」
「………………」
俯き返事を返さないハインツェルを待たずに俺は話しを進める。
「アーシェラは命を大事にしていたよ……俺達の命だって、大事にしてくれた、一度だけの命だと、そうだったよね?」
「黙れ!!死んではなんの意味もなくなるんだ!!」
そう叫んだあと、ハインツェルは涙を拭い、さっきまでの涙でぬれてくしゃくしゃになっていた顔が嘘のように鋭くなる。
俺は理解した、ハインツェルは今俺を殺す決意≠した。僕は銃を構え、ハインツェルは剣をさっきの形状に戻す。
「ハイアット、悪いが圧倒的にお前を破壊させてもらうぞ、時間がもうないんだ!」
そして刃の波が押し寄せてくる、躊躇いも何も無い、俺を殺すための刃。
「うお"ぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
飛んでくる刃をできるかぎり撃ち弾くが、何百と折り重ねられた刃は俺を正確無比に切り刻んでいく、
分かっているんだ、ハインツェルとまともにやっても俺は勝てない。それぐらい圧倒的に力が違うんだ。
だけど、引く気は無い!ここで出来る限り食い止める!死んで構わない!いや、死んでも行かすわけにはいかない!

――これでいいんだよね?アーシェラ

89 :現れた少女 ◆F/GsQfjb4. :2006/12/18(月) 01:24:27
ソーニャはリッツを抱きしめるが、ぴくりとも動かない。脈拍も弱く、危険な状態だった。
《修羅》は発動の際に大量のマナを消費する。
本来ならば、自身のマナと周囲のマナを同化させる事によって発動させる術である。
それ故に《修羅》はマナの扱いに長けた、ニャンクス族とコボルト族にしか使い熟せない。
マナを無尽に吸収し続けるリッツの《修羅》は、周囲のマナが枯渇した場合自身の生命力をも根こそぎ奪う。

「くそ…体温が下がり過ぎてる。このままじゃあ…助からない!」
ソーニャは腰にぶら下げたランタンに火を燈した。その火は瞬く間に吸い取られていく。
《火炎魔人(フレイムマイスター)》と名付けたこの能力は、炎を取り込み自在に操る。
「死なせないよ…アンタだけは絶対に死なせないよッ!!」
革鎧を外し上着を脱ぎ捨てると、上半身を裸になって力いっぱいに抱きしめた。
人を越えた体温となったソーニャは、リッツを暖めて体温の低下を防ごうとしているのだ。
しかし弱り果てたリッツの身体から、命の輝きが消えていく…間に合わなかったのだ。

腕が力無くだらりと垂れ下がり、もう二度と動く事はなかった。
冷たくなった体を必死に揺さ振り、言葉にならない叫びとともにソーニャは泣き崩れた。


ここは十字街道の東の果て、ベルバッツの街。
黎明の静けさが街を包み、徐々に昇る朝日が惨劇の痕を照らし始める。
生きている者は誰1人として存在しなかった。人間だけでなく、あらゆる生物が死に絶えていた。
たった1人の殺戮者を除いて、だが。
八翼将が1人、昆虫族クラックオンの戦士。黒殻の武神、煉獄の志士スターグ。
僅か数時間の間に、人口14000人の街は廃墟へと変えた破壊と殺戮の権化である。

じゃり、と土を踏む音にスターグは振り返ると、そこには少女が立っていた。
少女の格好は見慣れぬ衣装。まるで見た事の無い素材で編まれた物に見える。
そして細い腰には、不釣り合いな2振りのカタナを提げていた。
「あのぉ〜すいませ〜ん♪グラールロックっていう所に行きたいんですけどぉ♪」
スターグの姿や足元に広がる屍の数々に、全く怯える様子もなく、少女は声をかけた。
無論、スターグは答えない。

完全に少女の方へ向き直ると、ゆっくりと大斧を突き付けた。死の宣告である。

90 :現れた少女 ◆F/GsQfjb4. :2006/12/18(月) 01:27:19
「ん〜?人の話聞いてます〜?もしかして言葉通じないのかなぁ…」
頭をポリポリ掻きながら困ったような笑みを浮かべる少女だったが、次の瞬間には笑みが消えた。
スターグが巨大に似合わぬ速度で瞬時に間合いを詰め、斧による横薙ぎの一撃を繰り出したからだ。
その一撃は空を裂き、衝撃波は刃の延長となって周囲の家屋を横一文字に切り裂いた。
当然の如く少女も胴が上下に泣き別れとなるはずだったが、その姿は何処にも見当たらない。
「異文化コミュニケーションて難しいなぁ。携帯圏外だしGPSナビ使えないしぃ」
隣でへらへらと緩い笑顔で、スターグを見上げながら何やら小さな四角い物を弄っている。
「ここは暴力反対の方向でどうかひとつ……ってダメ?」
スターグは無言のまま、次々と少女に向けて攻撃を繰り返すが、やはり当たる事はなかった。
400年もの間、数多の敵を葬り去ってきたスターグの腕は、決して鈍い訳ではない。
だがしかし目の前の少女には傷1つ付けられないでいた。
明らかに異質な少女に、スターグは自分の対峙している存在が人外のモノであると悟る。
もう既に手遅れではあったが。

パシャッ。軽い音が鳴る。その直後ベルバッツの街を壊滅させた殺戮者が、膝を折って崩れた。
スターグの胴から上は綺麗に“無くなって”おり、腰の断面は鮮やかな曲線を描いている。
「あちゃー、まだダメでしょうが。フライングしちゃったら私が斬れないじゃん」
少女は腰のカタナに話し掛けた。勿論だがカタナが返事をするはずがない。
だが少女は1人で会話を続ける。まるでカタナの声は少女にしか聞こえないかのように。
「せっかくの道案内がこれじゃ、意味無いし。アカマガ、今度やったらご飯抜きだよ?」
不満そうな顔で少女はカタナを抜くと、残るスターグの死骸を切り刻んだ。
後に残ったのは、クラックオンの体液のみ。
何故なら刻まれた身体は全てカタナに…十剣者の剣、《アカマガ》に“消し去られ”たからだ。
「動かない的なんか斬ってもつまんない。あ〜あ、早く“奴”を捜さなきゃ」
遠く西の空に渦巻く“門”を見て、少女はちろりと舌なめずりする。その眼は狩人そのもの。
「冬休み返上した分は楽しまなきゃ損だもんね、アカマガ」
そう言うと、異なるセフィラから来た少女は“獲物”を目指して歩きだす。西へ西へと……

91 :ゴウガ スターグ ザルカシュ ◆9VfoiJpNCo :2006/12/18(月) 13:58:24
もはや流す涙は枯れ果て、嗚咽の声も尽き果てた。
うずくまるソーニャの背後に、突如として雪を固める重量感が発生する。
自分達を見つけた誰かが近づいてきたという気配ではない。明らかに今この瞬間、出現したものだ。
取り乱したりとはいえソーニャは戦士である。
本能的に振り向いて身構えようとし、
「…………っ!?」
更に根深い、根源的本能に基づいて硬直する。
……振り向けば死ぬ。動けば死ぬ。声を出せば死ぬ。
一種、悟りにも近い思いが渦となり、ソーニャの体を凍てつかせたのだ。
重量感が動いた。横たわるリッツの横に並ぶように、それもまた力なく雪に崩れ落ち、倒れ伏す。
……え?
それは、先程リッツと戦ったコボルドの死体であった。
死体で間違いない。かっと見開かれた瞳が、死の衝撃ですら揺るぎもしない彼の勇ましさを如実に表していた。
気配はこの死体? 何故、死体が?
零下にあって流れ落ちたソーニャの冷や汗が、雪に染み込む。
そして、
『連れ行かん』
暗い、深淵の淵を覗かせるような声が淡々と響いた。
『良き戦士を連れ、赴かん』
…………死神? まさかそんな!?
並ぶリッツとコボルドに、暗い暗い影が差す。
『いざ、決戦の地へと、聖戦の時へと……いざやいざいざ赴かん』
影に取り込まれるように沈み始めた二人を見て、声にならぬ叫びが火の如く、ソーニャの全身を巡って焼いた。
『その時までのしばしの間、ゴウガの影に抱かれよ』

「死んでなんかいない!!」

ソーニャの炎が弾け、激昂はそのまま熱波となって辺りの白きを歪ませる。
「死んでなんかいるもんかあああああああああああああああ!!!!!」
紅蓮の髪の盛り虚しく、燃ゆる瞳の熱き虚しく、命亡き者消え逝かん。
深淵の暗き声が去り、彼女の炎が周囲の雪を溶かし尽くした後の事。
並ぶ両者の骸は、何処へなりと消え去っていた。

92 :ゴウガ スターグ ザルカシュ ◆9VfoiJpNCo :2006/12/18(月) 14:36:36
東方大陸、スメラギ・アウグスタ皇城の一室にて。

スターグは相変わらずの読めぬ表情で、身じろぎする事もなく、その一部始終を見つめていた。
自らの映し身が無残に散る様を見ても、彼の触覚は震えもしない。
死は、クラックオンにとって恐怖の対象足りえないのだ。
種族の特性として、恐怖を感じぬクラックオン。
それすら塗り潰す超恐怖をも乗り越えたこの男にあるのは、静かに輝く超新星の魂であった。
「どや? 上手いこと行きはりましたやろ?」
傍らにて、飄々とした観のリザードマンがせわしなく杖を振り、言う。
「クダラナイナ」
スターグは、彼の企みを一言の元に断じた。
「いや、確かにアンさんのコピーを勝手にこしらえてエサにしたんは悪い思うてますよ? ほれこの通り、えろうすんまへんでした」
「…………」
「そんな怖い顔しなさんな――って、元からやったか。こりゃまた失礼。堪忍してえな。
とにかく、必要やったんよ。なんせ再集結する十剣者は全セフィラを通じて最強の連中やさかいな。多分やけど。
いや、多分言うても間違いないで。選考基準は力のみっちゅうことやったさかいな多分。……ワイ、また多分言うた?」
彼の名は、大祭司ザルカシュ。
こう見えても、このセフィラにおける最高の術者の一人である。
それは疑いようもない。
でなければ、星辰を読み、新たなる十剣者の出現地点を推測することなど到底不可能。
ましてや、その場に大胆な仕掛けを置いておく事など……。

「ほら、最強も最強や。前にバチき回したようなヘタレどもとはてんでちゃうねん。アンさんやったらわかるやろ?
無傷では済まへん。痛い目見ぃひんためにも、根回しはちゃんとしとかんとな」
「…………」
「なに!? 屁でもないってか!? カーッ! 吐いた唾飲まんとけよ! このバケモン!!」
シュルシュルと舌を伸ばし、珍妙に巻くザルカシュ。驚きや呆れを表す仕草なのだろうが、よくわからない。
「ゲコ! ……ま、そんなこと言うても、もうアンさんのコピーを通じてあの娘はんの剣に仕込ませてもろたし〜。
フッシュッシュ。これが後々効いてくるんよ。ジワジワとボディーブローみたいに? それとも劇的クロスカウンター?」
楽しげに紡ぎ出される言葉の奔流を意識の外に追いやり、スターグは物見の鏡の向こうを眺めた。
遥か西に広がる、ゼアド大陸の光景を。

彼は、ただ誓いを果たすのみ。
彼はただ、己が生を全うするのみ。

それこそが、それこそのみが、戦うクラックオンの前に続く他ならぬ道であった。

93 :運命の出会い ◆F/GsQfjb4. :2006/12/18(月) 19:26:46
どのくらいの間、抱き抱えたままの姿勢だっただろうか。涙は涸れ、呆然と空を見ていた。
リッツは死んだ。この事実を受け入れたくなかったが、どうする事も出来ない。
「ねぇ…これからアタシはどうすりゃいい?」
呟くソーニャは山頂付近に突如発生した時空の渦に顔を向け、ぼんやりとそれを眺めた。
渦は更に巨大な裂け目に変わり、世界の外へと完全に繋がったようだ。
「返事くらいしなよ…バカ…」
白髪を優しく撫で下ろし、慈愛に満ちた母のような表情でソーニャはそっと唇を重ねた。


3ヵ月前、メロメーロの街
去っていく黒騎士を見送り、拳を握り締める。『次は決着をつける』奴はそう言った。
確かに協力してアグネアストラと戦いはしたが、本来ならば敵同士だったのだ。
それをすっかり忘れてた自分に、少し腹が立った。
「…上等だよ、必ずケリ着けてやるからな。テメーこそ死ぬんじゃねーぞ?黒騎士」

鼻を擦り、苦笑いすると壊れた町並みを見渡して「あ〜あ」と溜息をひとつ。
「収穫祭ってレベルじゃねーな、こりゃ復興するのに時間かかるぞ…」
「ねぇねぇ、君はこれからどうするの?」
話し掛けてきたのはパルス、先程まで共に戦った仲間だ。泣いていたのだろうか目が赤い。
「んあ?俺か…そうだな、またレジスタンスに戻るつもりだよ。あんた達は?」
パルスの傍にはリュートを抱えた少女レベッカと、髭を生やした無愛想な男エドワード。
「うん、僕達はしばらくこの街の人の手伝いとかする予定」
「そっかぁ、頑張れよ。それじゃ俺は行くぜ」
小さく手を振り、その場を後にする。そうだ、まだやらなければならない事があるのだ。
公国を叩き潰すという目的が残っているのだ。

崩れ落ちた街門を出ようとした時、後方からリッツを呼び止める声。
雪のように白い髪のリッツとは対象的な、炎のような赤い髪。声の主はソーニャだった。
「な…なぁ、聞きたい事があるんだけどさ…ちょっとだけいいか?」
心なしか頭髪のように頬が淡く赤い。
「んあ?誰だ、お前?」
怪訝な顔でソーニャを上から下まで眺め回し、率直な疑問で応えるリッツ。
これが後に『牙』と『爪』、最強のレジスタンスと呼ばれる2人の出会いであった。

そしてそれは…世界を滅ぼす魔獣と、世界を救う炎の英雄との、最初の出会いでもあった……

94 :アクア・ウーズ(今だ目覚めず) ◆d7HtC3Odxw :2006/12/19(火) 01:12:42
パシ・・・・と乾いた音が遺跡に響いた
「あんた!!同じ仲間じゃない・・・・!!」
レベッカはそこまで言ってハッとアスラの顔を見た。そこには今にも泣きじゃくりそうな情け無い顔があった。
「だって!!僕にはあの二人を止めれる程の力なんか無いんだもん!!あの最強の二人を完全に
 止めれるとしたらアーシェラだけだよ!!僕はアーシェラに近いだけでアーシェラじゃないんだ!!だから・・・・」
ただ強がってただけでせき止められてた言葉が溢れ出てくる。
「アーシェラの魂が戻るまでここを守るんだ。」

遺跡外周に出た時、その光はもう迫って来ていた。
「手伝うってどうすればいいの!?」パルスが大声で叫ぶ。
「簡単だよ!!心のおもむくままに奏でて!!そうすれば弾き方は楽器が教えてくれる。」
そう言ってアスラは翼を展開させて空中に浮遊し、少し前に進んだ。そのすぐ後ろに巨大な魔方陣が展開される。
「いくよ・・・・・僕はジャジャラのガーディヴァルキリエだ。必ず守り抜く!!」
一度軽くアスラが手を叩くとその手には不可思議な形のギターが握られていた。


If you surely ..the birth.. are exposed unjustly and dangerously by 
me to defend an escutcheon Eges invincibility your person, everything 
is bet and defended by me. 
For me, in Eges me, Eges I am Eges. 

Even if what kind of thing exists to defend you surely, having given 
birth to defend an escutcheon Eges invincibility your person : you to 
me even if it defends, the body of fritters, and it scatters. 
For me, in Eges me, Eges I am Eges. 

歌声に合わせて巨大なシールドが成型されていった。

ーーー碧くて狭くて広い場所ーーーーー
「お姉ちゃん・・・・お外が大変みたいだよ?」
「そうね、ここで待ってるなんて言ってられないかも」
「どうしよう?お姉ちゃんのお友達も大暴れしてるよ?」
「ねえ、ちょっと力かしてくれる?」
「ここから出るの?」
「うん、ごめんね、早くしないと二人とも死んじゃうかも」
「わかった、お外に行ったらあたしによろしくっていってね。」
「解ったわ、じゃあ手を私と合わせて。」
「こう?」
「そう、そして、外に出るイメージを、外の体に飛んでくイメージ・・・」
二人の体が青白く光始めた。

ーーーー遺跡内部ーーーーーー
「どうしよぉ・・・・おきないよぉ・・・・」
鳴動する遺跡の中、ラヴィは倒れこんだアクアを心配そうに覗き込んでいた。
「パルちゃんたちは、大丈夫かな・・・」
三人が出て行った階段に目を向けてた時、かすかにアクアの指が動いた様な気がした。

95 :リーザードマン集落 ◆d7HtC3Odxw :2006/12/19(火) 01:14:31
「弓ヲ撃テ!!」
ボボガ酋長の号令で一斉に弓が空を舞う。その第一波が先頭のメガニュームの集団を貫いた。
ギギャアアア!!
痛みと苦痛と怒りと狂気、尚も大群は止まる気配無し。

「来ルゾ!!」
誰かの一言と同時にメガニュームが突っ込んできた!!
「ゼリャアア!!」
ゴゴが自慢の双斧を振り回して次々と蜻蛉の羽を、体を切り刻む。
「兄弟タチ!!無事カ!?」
戦闘槌を振り回しながらググが叫んだ。
「ググ!!オレヲ空マデウチアゲロ!!」
「オーライ!!兄貴!」
ググの戦闘槌にひょいっとゴゴは乗りググはおもいっきり空に向けて打ち上げる。
「ウーーーラララララ」
回転しながら上昇し、一匹、二匹、と切り刻む。また降下しながらも新たな敵を切り刻む。
しかし、数はまだまだ増えていた

「きゃあああ!!」
非難していた女、子供達の所にもメガニュームは入り込んできた。 今まさにその恐怖の顎が獲物を捕らえようとした
その時、一本の鉄棒がメガニュームの体を貫いていた。
「殺生は好みませんが、お許し下さい」
シスター・キリアがその鉄棒を引き抜くと体中の体液を噴出してメガニュームは動かなくなった。
「ふぅ、アクア程では無いですが、少しは武の心得も御座いますので」
ほっとしたのもつかの間、新たなメガニュームがキリアの背後を・・・・つこうとして、強力な衝撃に吹っ飛んだ。
「あぶねぇなぁ、油断しすぎですよ、シスター」
キャメロンはにっこり笑うと吹っ飛ばしたメガニュームに向き直り、体勢を立て直そうとするそいつに容赦なくしかも
的確に急所に豪腕を当てていった。その手には鋲が打たれた手袋がされている。数十秒後には、そのメガニュームはまったく動かなくなっていた。
「久々に暴れてやるか。・・・・・・・あいつは、今も傭兵してるんだろうかな・・・」
なんとなくキャメロンは昔の冒険仲間を思い出していた。

96 :パルス ◆iK.u15.ezs :2006/12/19(火) 11:28:25
暁の瞳を見て驚いた。形が変化していたのだ。
それは別にいいんだが天使の羽なんか着いちゃってる!
―さっき魂を戻されたときに何かされたみたいだ―
と、本人は言っている。きっと長い年月のうちに忘れていた古代の曲の数々を
アーシェラの遺伝子に触れることによって思い出したのだろう。

気がつくと、何かに操られるように聞いたことも無いような曲を演奏していた。
これは呪歌ではない。魔方陣を展開するのはマナに干渉する魔法の特徴だ。
古代文明の繁栄の一翼を担ったと伝えられる、今は失われた術……《魔術唱歌》!
レベッカちゃんが、こいつだけに任せておけないとばかりに声をあわせて歌い始める。
彼女の知るはずの無い言葉の歌を。

〜♪〜
Because I promised you to be defended
from all suffering to defend an escutcheon
Eges invincibility your person,
Eges I am Eges in Eges me in me who can
strengthen more than anyone in me.
〜♪〜

シールドが完成した時、破壊の化身はもう目前までせまっていた。
レベッカちゃんと目配せして頷きあう。その瞳に宿るのは少しの迷いも無い決意。
レベッカちゃん、僕は……少しだけ、怖いよ。
だからこそ、目をそらしたりしない。睨みすえて、迎えうって見せる!!

全てを貫く破壊の槍と、全てを守り抜く無敵の盾が今、激突する!!

97 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/19(火) 22:37:47

あまり正気ではない。朝から。
「リッツがたった一人で真っ向から、公国の機甲部隊に突っ込んでいくのを見たわ。
私たちが遅れて街に入ったその時点で、既に駐屯隊は壊滅状態。先鋒を切ったのはやはりリッツだったって」
「白い牙」の俄かには信じ難い武勇伝について話しながら、レニーは足早に斜面を上がっていく。
その後に私が続いて、振り返ってももうシャミィたちの姿も見えなくなった。
雪は雪崩れた直後で凍ってもおらず、しかし斜度が急で、木々は皆倒されているから手掛かりもない。
槍を杖にして地面に突き、時折指で雪を掻きながら登った。
それでも二人とも、ばてて息を切らすほどやわな作りではない。

人気のない山中を登る間、私たちは話しながらも、眼差しはずっと辺りの地面を調べていた。
グレナディアの巨体と、空の裂け目のお陰で日差しは弱い。
雪目の心配をせずに済んだが、それでも眼球が乾いて痛んだ。濡れた手袋の指で目を擦る。
消えた二人の居場所は依然として知れないが、一先ずは出来る限り、砲の発射地点へ近付こうとしていた。
今の所、飛竜や使い魔が哨戒している様子はない。やはり基地は通常業務外に在る。
グレナディアの砲撃目標は何処か、憶測すら覚束無い。
瞬間の強烈な光に、私の目は眩んでいたが
それでも、砲撃の角度がレジスタンスの野営地と合わない事くらいは見えた。
推理の上でも、始めからあれを使えば奇襲などという蛇足で標的を散らす意味など無かった筈だ。
あれを使わなければ破壊出来ない強力な基地や兵器を、レジスタンスが所持していたとも思えなかった。
「白い牙」がそれだとしたら、笑止だ。
真実なら真実と認めるまで、私は可能性を排除する。

「レジスタンスの皆が勝ち鬨を挙げてるその傍で彼はひとり、ゴレムの残骸と敵の死体の山に佇んでた。
そこで何をする訳でもなくただ、遠くを見つめてぼおっとしててね。彼の真白な髪が陽に透けて……」
「そして物憂げな横顔が」
気まぐれに入れた茶々でお互い少し笑って、それからまたレニーが続けた。
「そう、そんなもの。私は一目で彼に惹かれた。
でも不思議ね。私が好きになった男は強い男だったけれど、私、彼の強さに惚れた訳じゃなくてよ。
俗な物言いになってしまうけど、何だろう。こう、強さの内に秘めた脆さ、っていうのかしら?
まあ、それもきっと些末な一部ね。あまり理由付けしてしまうのも野暮でしょ?」
野営地で聞いた噂通りの色恋話を、彼女は楽しそうに語った。
生き死にも知れない男が相手の惚れた腫れたなんて縁起でもないけれど、私は黙って彼女の好きにさせる。
もし、リッツの武勇伝が真実なら、生きている彼に会ってみたいとも考えたが。

98 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/19(火) 22:38:29

私が、ひとり喋るレニーを見越す度、頂上の怪物と奇妙な黒い裂け目が嫌でも目に付いた。
曇天に空いた鋭い鉤裂きはグレナディア以上に得体の知れない不気味さを湛えている。
私は考えた。自分が馬鹿にした三人と、結局は同じ事をやろうとしている。目的こそ違えど――
「信じてる、なんて嘘ね。祈るような気分。
でも女としての自分より、王国騎士としての自分が大事だから」
しかし考え様によっては、この状況はチャンスだ。
グレナディアは起動してしまったが基地の装備はあれ一つでもない。盗んで儲けになる物は有形無形、沢山ある。
虎穴に入らずんば虎に喰われる心配もなし、とは言うが
虎を一度やり過ごせさえ出来れば逃げ場もあるだろうに、元より虎穴が私の財布なのだから同じ事、か。

精霊の消滅とグレナディア、古代遺跡の発現とは関係があるのだろうか。
ライン大河の一戦で精霊消滅が衆人の知る所となって以来、戦場を取り巻く空気が変わった。
誰が口にするともなしに、しかし誰もが訪れつつある「大局」の気配と緊張を感じ取っていた。
大陸全土を戦火で席巻したこの戦争でも、収まり切らないほどの「大局」の兆しだ。
浮き足立ってるのは戦争屋だけじゃない。国中がきりきり舞いになっている。
精霊消失が既に大事件で、本当なら戦争などしている場合でもないだろうに。
「騎士団も、レジスタンスにも私の気持ちに気付いてる人が何人も居て
いまいち分かってくれなかったのは当の本人くらいなものだわ。ありがちな話でしょ?」
「レニーさん、上を」
斜面の上方が一瞬だけ炎で煌いた。陽炎が立ち昇り、何者かの絶叫。女の声だ。
レニーは咄嗟に佩いていた剣を抜き、声のした場所まで駆け上がった。

99 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/19(火) 22:39:15

「炎の爪」が一人うずくまっていた。
歳も私とそう変わらない、燃えるように赤い髪色をした少女だ。
目は泣き腫らし、眼差しはあらぬ方向を見詰めている。
顔立ちはしゃんとすれば鋭く凛として見えたろうに、泣き疲れた目端は引きつり、頬も強張っていた。
彼女の身元が知れたのは、投げ出された槍斧と髪色の特徴からだ。私はレニーに教えた。
「ソーニャ・ダカッツ。『紅蓮の爪』」
「どうやら、そのようね」
ソーニャは私たちに気付いたらしく、相変わらず遠くを見詰めたままだが小さく、頷いた。
彼女の傍へは剣を収めたレニーが出向き、屈んで、顔を突き合わせる。
「ソーニャさん、リッツは……」
「逝っちまったよ」
レニーの表情が硬直する、息遣いまで。
「死んじまったんだ。助けられなかった、アタシ……」

「爪」がリッツの死と、その後の出来事について話す。
聞いた通りではレジスタンスの英雄リッツの死は確実で、彼を殺した敵と死体の行方はやはり予想もつかない。
話を聞き終えたレニーは後ろを向くと俯いて、しばらく頭を振ったり、目頭を指で押さえたりしていたが
それも僅かな間、すぐに詰問へ戻った。その声は震えていなかった。
「ジーコは下で私たちが見付けました、無事です。団長補佐……レオル・メギドを?」
ソーニャが指差して示した場所は、そう離れてはいなかった。
私たちが登って来た道から少しずれた辺りだ。しかしここからでは誰の姿も覗えない。
今度は私が尋ねた。
「傭兵仲間の『チビ』は?」
うずくまったままろくに身動きもしなかった少女が、突然ぴくん、と身体を震わせる。
虚ろな瞳にも生気が戻り始めた。「チビ」は彼女の仲間か。やや声を上ずらせながら
「そうだ、アビサル」
思い出したように呟くと、武器を拾って立ち上がった。

立ち姿で彼女の印象が変わった。
一見はレニーのように細身だが、鎧や毛皮の上からでもそれと分かるくらいに筋肉質だ。
立ち上がる際の、ほんの軽い足運びからも動作の滑らかさが見て取れた。
初め出会った時は前評判を疑ったが、まんざら嘘でもなかったらしい。
「アイツ、何処に!」
「何処に?」
尋ねるが、彼女はかぶりを振る。雪崩ではぐれたのかと訊いたが、そうではないと答えた。
「あの爆発はアタシらは逃げられたんだけど、またはぐれたんだよ。
何処へ行ったか分からない……でも! あのデカブツをえらく気にしてたから……まさか、アイツ一人で」

レニーはソーニャから離れ、私のほうに寄った。私たちはソーニャに背を向けて会話した。
「レニーさん?」
「私は……団長補佐を探します」
そう言って、レニーは教えられた団長補佐の居場所へ顔を向く。
表情は知らせを聞かされた時から固まったままで、口調も重く沈むようだったが
「『チビ』は放って置く、そういう事で?」
途端にレニーの顔が歪み、
「私の口から言わせたい?」
併せて言葉も激した。腰に当てていた手は下り、無意識にか剣の柄に当てられる。
言おうが言うまいがどうせ同じ、見殺しは当然の選択。
彼らにとって傭兵稼業など、給料は別としても、そいつが何処で犬死しようが知った事じゃないだろう。
「いいえ。団長補佐の救出に私は要りますか?」
「当然よ、その為に貴方を頼んだんでしょ? ゴレムを狩る仕事が無いのなら、それを手伝って貰うわ」
「了解しました」

100 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/19(火) 22:40:07
「待ちなよ! アンタら、アイツとリッツをこのままにしていく気かい!?」
振り返って見たものは、私たちに槍を突き付け構えるソーニャだった。
真っ赤な髪が逆立ち、頬は上気し、視線はレニーに据えられていて、何故だか私はシャミィを連想した。
私はそうっと後退りして槍の切っ先から逸れたが、レニーはソーニャと相対したまま、収めたばかりの剣をまた抜くと
突き付けられた槍に刃をぶつけて乱暴に払い、響く金属音より更に鋭い語勢でがなった。
「そうしない理由が私にあるっての!? 貴方が抱いてたそれは死体よ、言った通りに!」
突然の怒鳴り声に私もソーニャも目を丸くし、身体を固くした。
やがて、落ち着きを戻したソーニャが静かに口を開く。
「アンタ……も、か。そうだったんだろ?」
「そうよ、それが貴方に関係あって? 私たちに死人を助ける余裕なんてないわ」
「だから『チビ』は置いて行きます」
剣呑な目付きでレニーは私を見たけれど、彼女も怒鳴るだけ怒鳴って落ち着いたようだ。表立って声を荒げようとはしない。
「随分とはっきり言うのね」
「言ったのはレニーさんでしょう?」

「……やっぱり団長補佐は私一人で十分。
いえ、この斜面じゃ一人でも二人でも大差ないと思うから。それに……」
「でしょうね。それじゃお暇も頂けた事ですし、私は彼女とグレナディアの足下まで」
私の返事にレニーは驚いたようだったけれど、グレナディアへ接近する危険は今更な話だ。
どうせここまで登ったのだから、グレナディアの格納庫跡を調べてみたかった。
「貴方はもっと慎重な人だと思ってたけど。給料分はどうしたの?」
「時と場合によります」
「そのようね」
彼女は肩をすくめた。

レニーが団長補佐を探しに降りて行き、今度は私たちが残された。
空の裂け目はさっきよりも心無しか広がっているように見えるが、一方のグレナディアは歩きもしない。
踏まれる心配を除けば近付いてしまったほうが却って安全かも知れない。
「行きましょう。『炎の爪』とご一緒出来るとは、光栄です」
私の心変わりが不可解に思えたらしい、ソーニャが首を傾げる。
恋人に死なれた悲しみも、一旦は目先を変えて紛れさせたか。
「アタシに付き合うのかい? アンタだって、得はないって言ってたじゃないか」
「死体を掘りに行くのは面白くありません。ただ、その死体が金の宝物庫にあるとなれば話は別です」
少女の切れ長の目が、また一段と細まる。
「アビサルは死んじゃいないよ」
「レニーもリッツさんの事、そう言ってましたね」
「そりゃ軽口のつもりかい」
「一日に二人は多いんじゃないかって」
相手が一歩、前へ踏み出した。このまま続けても、距離が槍斧のリーチと合わないから斬られる事はなさそうだ。
「私の古い知り合いに、死体と寝るのが趣味の男が……」
案の定、殴られた。私は雪に倒れ込む。
繰り出された拳は鼻の頭を狙っていたけれど、私が素早く身を引いたため骨を折られずに済む。
喧嘩慣れした殴り方で助かった。ただ、鼻から滴る血は両手の甲で何度拭ってもなかなか止まらなかった。
雪の上に這いつくばる私を、ソーニャは何も言わずにただ見下ろすばかり。私は彼女へ笑いかけた。
「殴るなら一回1000ギコです。でも出来れば、二回目以降は顔から外して下さい。
鼻とか顎とか、歯とか折っちゃうとみっともないんで。それと、蹴りは1500ギコ……」
みぞおちを蹴り込まれた。
痛みで身体が折り曲がったが、どうにか吐き気には耐えられた。手加減してくれたらしい。

ソーニャの座っていた所からは、グレナディアの足ももう間近だ。
彼女の後姿が遠ざかるのを待ち、私も荷物を取って立ち上がった。距離を保ちつつ、彼女へ就いて行く。

101 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/12/20(水) 22:29:43
「やあ、お嬢さん。今暇かな?よければ一緒に紅茶でも」
突然背後から掛けられた声に、驚くそぶりもなく十剣者の少女は笑顔で振り向いた。
「もち奢りですよね?」
「当然」
少女と同じく十剣者のヒューアが、照れ臭そうに笑って答える。
「補填要員が貴女だったなんてね、予想外かな。はじめまして剣者メイフィム」
「こちらこそ。ビークセフィラから来ました五代 命(ごだいみこと)です。剣者名はゲプラー、
呼び方はメイでいいですよ♪学校の友達はみんなそう呼んでるから」
そう言うと人懐っこい笑顔でヒューアに手を差し出す。

《十剣者》、それは《世界樹》の葉であるセフィラにそれぞれ配置される防衛システム。
その名の通り剣を持ち、外敵からセフィラを護る事を主務とする《最深部》の創りし人形。
あらゆる法則から切り離された存在で、セフィラ内では無敵に近い戦闘能力を保有する。
物理・魔法共に遮断する絶対結界を始め、それぞれの剣に固有の特殊能力を持っている。

「でもどうして私が昔使ってた名前を知ってたの?」
不思議そうにヒューアに尋ねるメイに、腰の刀を指差して答える。
「二刀流の十剣者は3人しかいないからね。そして女性型はその中では1人しかいないし」
「あ〜、なるほどねぇ・・・そういえばそうだったっけ♪」
自分の頭に軽くゲンコツして、ぺろりと舌を出す様は普通の少女にしか見えない。
しかしメイは普通の少女ではないのだ。
その気になれば、1人でセフィラを崩壊させる事すら可能な力を持っている。
「ところでグレッグスに会いたいんだけどね、道がわかんなくて・・・」
「グレッグス?」
「え〜とね、あの子の剣者名はイェソドだったかな?」
うーんと唸り、懸命に思い出そうとしているメイに、ヒューアは驚きを隠せなかった。

イェソドを「あの子」なんて呼ぶ輩は、ケセドくらいしかいなかったからだ。
「もしかしてイェソドの知り合いなのか?」
「知り合いも何も、そりゃ可愛い後輩だもん。まぁ今回はお仕置きしに来たんだけどね〜♪」
途端に残虐な笑みを浮かべるメイ。ころころと表情を変える少女にヒューアは苦笑した。
「イェソドの奴、何かしたのかな?」
「はい、反逆罪で《最深部》から抹殺命令が出たんですよ〜」

その返事に、ヒューアの笑顔は固まってしまった。

102 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/12/20(水) 22:30:57
「・・・抹殺命令!?」
ヒューアは予想外の答えに、思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「そりゃ、《管理者》の剣を借りパクしちゃってるし。ただでは済まないでしょ?」
何故当たり前の事を尋ねるのかといった風に、メイは逆に聞き返した。

《管理者》、それは《十剣者》を束ねる《世界樹の使徒》を指す役職名である。
各セフィラに1人、担当の《管理者》が配属され、時を司る能力を持つ剣を所有する。
基本的に《十剣者》の1人として活動するが、セフィラによっては少し異なる場合もある。

ヒューアは背筋が凍る思いだった。
つい先日、イェソドとグラールから協力を頼まれ、それを引き受けていたのだ。
今自分の目の前にいるのは、数多の《十剣者》の中でも最古参にあたる実力者だ。
イェソドに荷担していると発覚した場合、確実に命は助からないといえる。
ヒューアが戦って勝つのは絶望的なまでに、戦闘能力差が開いているのである。
「どうしたの?なんだか顔色悪いけど」
下から覗き込むようにして、震えを必死に堪えるヒューアを心配そうに問い掛ける。
「い・・・いや何でもない。それよりあれは一体誰が?」
慌てて話題を変えようと、北西の空を指さす。そこには黒い染みが在った。
空を引き裂くように広がりつつある闇に、メイは不機嫌そうな顔になる。
「お仕置きはとりあえず後回し。“奴ら”が来たからね」
「な、何だって!?」
またもや驚きの声を上げるヒューア。近いうちに来るとは聞いていた、しかし今とは。

《十剣者》の存在理由はセフィラを外敵から護る事である。
ならばその“外敵”とは何か。それは“奴ら”と呼ばれる《大罪の魔物》の事だ。
《大罪の魔物》は《種(シード)》という種の形で発生する。
その《種》はセフィラに侵入した後、生物の感情を喰らいながら成長していく。
そして《種》は充分な量の感情を取り込んだ後、生物に寄生して《発芽》する。
この段階になって初めて《大罪の魔物》という存在として認識される姿となるのだ。

「それにね、あの子の事だから多分何か考えがあって借りパクしたと思うの」
先程までの軽い口調とは、まるで別人かの如く無感情な声でメイは小さく呟いた。

空を蝕む闇を。
そして・・・その闇から現れるであろう世界の天敵を、憎むように睨みながら・・・


103 :サブST ◆AankPiO8X. :2006/12/20(水) 22:32:31
メイとヒューアは廃墟と化したベルバッツの街を後にした。
セフィラを滅ぼす大いなる災厄の種が蒔かれたからだ。
「ここに来る途中で、3つは処理できたけどね。『姦淫』と『怠惰』と『飽食』かな」
ふとメイの表情が曇る。
「どっかの馬鹿があの穴開けたおかげで『業怒』を取り逃がしちゃった。マジ最悪」
忌ま忌ましげに悪態をつく。
「だが、まだ種の状態なら倒せるさ。発芽する前に何とか始末出来れば問題なしだよ」
「そう上手くはいかないって。そもそも奴らが一度に4つも同じセフィラに向かうとかさ、
ぶっちゃけありえないから。このセフィラには多分、アレがあるんだと思う・・・きっと」

《大罪の魔物》には全部で七つの種類が挙げられる。
『傲慢』『貪欲』『姦淫』『業怒』『飽食』『嫉妬』『怠惰』
これら七種類の欲望に分類される《大罪の魔物》は、その名に因んだ欲望を喰らう。
例えば『傲慢』の魔物ならば、人の驕りや歪んだプライドが《種》を育てる餌となるのだ。
通常、《大罪の魔物》は同じセフィラに複数で現れたりはしない。ある例外を除いては。
例外とは魔物にとって真の目的である《創世の果実》を喰らい、新たな《世界樹》となる事だ。
その為なら本来は互いに干渉しない魔物も、複数で連携して襲って来る。
つまり・・・このズィームセフィラは、今まさに未曾有の大災厄が迫りつつあるのだ。

凄まじい速度で街道を駆け抜ける2人、目指すは北西の空。
「まさか、ここは奴らに滅ぼされたセフィラからの難民受け入れ先として創られた場所ですよ?」
「でもほら、このセフィラは1番新しいでしょ?可能性は否定できないよ」

メイの言葉にヒューアは黙る。確かに可能性はある。
なによりも彼には心当たりがあった。獣人達が聖地と称する場所に納められたモノ・・・
龍人達が死に物狂いで封じたその存在こそが、そうなのではなかろうか。
ヒューアは黙り込んだまま、隣を駆ける少女をちらりと見た。
本当の事を正直に言うべきか言わざるべきか・・・一瞬ではあったが判断に迷う。
正直に全てを打ち明け、メイの協力を得られれば・・・イェソドの事も或いは・・・
そんな考えが頭の中をぐるぐると巡り、数秒後。ヒューアは結論を出した。

「メイ、貴女に力を借りたい。実は俺達は今・・・・・・」


104 :ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2006/12/20(水) 22:46:01
「え、今もしかして動いた・・・・・?」
心なしかどうか分からないが確かに動いたような気がしたラヴィは
アクアの肩を揺する、そして確かに反応したアクアに呼びかけようとする。
「ねぇ・・・起きてよぅ・・・」
そう言った瞬間、空気が裂けるような感覚が辺りに響き、そして、
近くの床が砂のように細切れになり上に巻き上がり、吹き上がる粉塵に紛れ一つの影が飛び上がってくる。

最早腕と一体化している剣は生き物のように蠢き辺りを這っている。
目は理性の中に確かに狂気を放ち、口元は歪な笑いを浮かべている、そう、ハインツェルだった。
「……なるほど、小娘と、あと使えなかったクズか、僕は急いでいる、どちらも今すぐに千切りにしてやる!!」
「ハ、ハッちゃんは!どうしたの!?」
「……ん?ああ、ハイアットのことかい……?」
ハインツェルは具合が悪くなったかのようによろめき、息を切らし始める。額は汗でまみれ。
自分でも信じてないかのように言葉を必死に口からひねり出す。
「ああ……殺したよ℃Eすしかなかった!なんでだ!僕のたった一人の兄弟!!」
ハイアットを殺したことで本当に自分の存在など意味がなくなってしまったかのように表情には虚無感が漂う。
「貴様達≠フせいだよ、全部そうだ、僕がハイアットを殺した状況に置かれているのも全部貴様達≠フせいだぁぁっ!!!」
そして絶叫する、なんともいえない絶叫を、剣がハインツェルの感情をあらわすかのようにあちこちを破壊していく、
「どうしてくれるんだ!?僕を本当の天涯孤独にしやがった!!ハイアットは良い奴だったさ!貴様達≠ノ誑かされる前まではなぁっ!!」

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

あたりが血で染まっていた、だれの血といえば自分としか言いようがない。僕の血だ。
斬り傷は骨にまで達しているものもあり、僕は痛みすらもう分からない、だけど僕はここで倒れるわけにはいかない。
「……ハイアット、口数が少なくなったな、どうした?」
「……そうかい?君が話しかけてこないだけだろ……兄弟。」
何気ない会話だ、当たり前の会話、街中でこんな会話があっても不思議じゃない。

―ガガガガガガガガガッ!!!

ただ、ぶつかりあい、はじけ飛びあっている弾丸と刃を除けば。実際話している時間なんてない。
秒間100はいくかという刃達をただ必死で撃ち落しているのだから。
そして一秒、一秒経つごとに確かに刃は僕の体を切り刻んでいっている。
そして、とうとう限界が来た!指に一瞬、ほんの一瞬力が抜け落ちたのだ、
その間に刃は僕の体に叩き込まれ続け、僕は膝をつき吐血をする。
「あがっ!!……はーっ……はーっ……」
「……狙わないからそうなる、君は相変わらず優しすぎる奴だね、一回も僕に撃とうとしない≠ネんて。」
あれだけギラついていた殺気が消え、なんともいえない忍びなさと哀れみの目が僕を見つめる。
「なに……言ってるんだ……?撃たせて……くれるような暇も……くれないくせに……」
「違う!最初の初撃!不意撃ちのとき!僕の頭を狙えば決着はついていた!他にも僕が気を抜いていたときなど山ほどある!!」
ハインツェルにそういわれて、僕は一つの答えしか言えなかった、とても単純な答えだ……

「殺したく……なかった、どうして、僕が君を殺すことができるんだい……」
僕の答えにハインツェルはとてもつらそうな目をして、提案をした……
「ハイアット……今ならば自分自身で決着を付けれる……僕だって殺したくない、」
そういいハインツェルは刃を戻す、自害しろといわれ、僕は自分の握っている銃を見る。
そして、ゆっくり銃を自分のこめかみにあてる、だけど、これでいいのか?僕は、まだ死んでいない……
「言うな!!……諦めはない!まだまだこれからだっ!!」
立ち上がろう!僕はまだ動ける、例え死に近いとも、まだ死んでいるわけじゃないんだ!!
足に力をいれてゆっくりと立ち上がる、骨が軋み血があちこちから流れ出るが、今は気にしない!

「さあ……こいよ…ハインツェル……」
「……切り刻めジルヴェスタン=v
そして、刃が伸びたかと思うと、床に付していた、だんだんと遠のく意識。
「……ハイアット、よく戦った、これまでの実力の差がありながら、よく最後まで戦ったな、ゆっくり眠れ……」
返したいのに、言葉が出ない、体に力が入らない……何も見えない、最後の言葉の後、ハインツェルの気配が消えたのは分かる。
きっと皆の方に行ったんだ……止めなくちゃ……駄目だ、力が……アーシェラ……皆。

―すまない。

105 :リザードマン集落 ◆d7HtC3Odxw :2006/12/21(木) 00:56:51
「フン、甘イ!!」
ボボガ酋長が杖をメガニュームに突き立てる。即座に反転、背後のもう一匹に骸を投げつけた。
「ゴゴ!!ググ!!被害ハドウナッテル!?」
「戦士達ハ重症5!!軽症18!!死人ハマダ出テナイ!!」
ググが肩で息しながら答えた。
「避難先ハキャメロン ト シスター ガ守ッテクレテル。」
ゴゴも満身創痍の状態だ。
「デモ敵マダフエテル!!」
空には黒雲の如くメガニュームの大群が控えていた。

「オリャアアアア!!月まで吹き飛びな!!」
キャメロンの豪腕が一匹また一匹と吹き飛ばす。
「セリャア!!ハイ!セイ!!」
シスター・キリアの鉄棒が叩き伏せる。
「こうして背中を預けれるってのも、」
「悪い事ではございませんね。」
こんな時なのにキャメロンは少し照れた笑いを浮かべた。
「もし、よかったら、これからも・・・・」
こんな環境の時にしかもついちょっとの間知り合ったばかりなのに俺は何を言い出そうとしてるのか、そんな感情が
ついつい頬を緩ませた・・・・が、それは無残にも一撃で引き裂かれた。
「こんなに安心して背中を任せれるのは夫以来だわ。」
「へ?」
ついつい間抜けな声が出てしまう。
「旦那って・・・・?」
「あら、私、結婚してますのよ。夫はスリダブ流のハイマスターをしてますわ。」
「あ、そ、そうなんですか・・・」
なんか体から力が抜けていくのをキャメロンは感じた。

キャメロンの胸ポケットに入れていた宝珠が更に強く輝き始めた
「な、なんだ!?」
その強い光にメガニュームが怯え逃げ出してゆく。
そして、強烈に碧く光ったかと思うと一条の碧い閃光が空に放たれた。
ギギャアアア
その閃光に驚いたのかメガニュームが逃げ出し始める。
「た、助かったのか?」
キャメロンは周りを見回し呟く。

あれだけいたメガニュームが去っていく。どうやら閃光に恐れをなしたようだ。
だが、まだ、脅威は去っていなかった。この惨状をこれ幸いと喜ぶ物がいたのだ。

106 :アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2006/12/21(木) 00:58:01
ーーーー碧くて狭くて広い場所ーーーー
「いくよ」
「いこう」
「「約束の出会いの場所へ」」

碧い閃光となった二人はついに表に出て、約束の場所へ進む。

ーーーー遺跡外部ーーーー
槍と盾 ついに衝突する。その衝撃にジャジャラが大きく揺れる。
禍々しいその力はついに盾を後退させ、それと同時にアスラの体にもヒビが入る。
「まさか、こんな!?」
アスラが絶叫する。
「まだまだぁ!!」
レベッカ、パルスが奏でる。
その時、別の場所より碧い閃光が向ってきた。
「別場所からも!?」
レベッカが驚愕した。しかし、
「やっと来た!!アーシェラが帰ってきた!!」
アスラが歓喜の声を上げる。
「あの碧い閃光がアーシェラ!?」
「そうだよ!!絶対落とすもんかぁーーーー!!」
力を振り絞ってアスラは盾を前進させた。」

ーーーー遺跡内部ーーーー
「さぁ、、、殺してやる」
ハインツェルの剣、ジルヴェスタンがラヴィとアクアに襲いかかった。ラヴィが思わず目をつぶる。
まるで長い時間が経った様な錯覚、自分が生きている事を理解したラヴィが恐る恐るハインツェルを見ると
「な、お前!!役立たずの癖に!!」
アクアが剣を受け止めて立っていた。
「アクアお・・・ねえ・・・ちゃん?」
しかし、アクアは振り返る事なく、いや、ハインツェルにも興味は無いといった感じで受け止めた剣を投げると
アーシェラの入ってる培養槽の前に進んでいった。
「お前!!アーシェラに近づくな!!この役立たずが!!」
激高したハインツェルがアクアに斬りかかる・・・・が何故か途中で止めてしまった。まるで本能がしてはいけないと
告げてる様だった。
培養槽の前まできたアクアはその培養槽に、手をかざして、呟く。
「これでいいの?お姉ちゃん」
その時、培養槽とアクアに碧い閃光が降り注いだ。それと同時に、培養槽の中のアーシェラの目が見開き、
轟音と共に培養槽が砕け散った。そして、辺りが見えなくなるほどの光が溢れた。
溢れた光が収まったその時、そこには二人の姿があった。
一人は龍人の女性、もう一人はシーマンの少女
龍人の女性は声高らかに宣言した。
「ハインツェル!!剣を収めなさい!!アーシェラ・ムゥ・セレティアスの名において命令します」
呆然とするハインツェルにアーシェラは歩み寄り、しっかりと抱いた。
「ただ今、ハインツェル、辛かったでしょう、ごめんなさい」
がくりとハインツェルは膝を落として泣き始めた。

107 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/12/22(金) 02:36:13
公国南部、王国方面へと続くとある街道上での事。
「へっへっへ、観念しなあ!!」
「かかか頭ぁ! オレっち右の金髪の娘がああああ!!」
「あ、じゃあオレ真ん中真ん中真ん中あああああああああああああああああ!!!」
流人と思わしき美しい女の三人連れを、強面の――どっから見ても人間のクズといった面相の男達が取り囲んでいた。
血走った目で鼻息の荒い連中。その数およそ三十弱。
いわゆる山賊団という類のアレであった。

「いやあ〜、しかし見事に引っ掛かるもんじゃのう」
「まあ、あの通りの美人ですからなあ。術者冥利に尽きますわ、本当に」
街道から少し外れた岩陰に潜み、高みの見物を決め込むイアルコとジョージ。メリーはといえば、お茶の支度の真っ最中。
一見まったく心ない人達に見えるが、別に彼女達の不幸を茶菓子に午後ティーを味わおうといわけではない。
山賊どもの不幸を茶菓子に味わってやろうという腹積もりなのである。
「今か! 今この瞬間で一網打尽か!?」
「いやいや若、頭目が飛びかかってからの方がよろしいかと!」
ご丁寧に起爆装置≠ニ銘打たれた箱に手をかけ、目を輝かせるイアルコ坊ちゃま。
ぶっちゃけて言えば、三人連れの女は山賊をおびき寄せる為にジョージが作った幻影であった。
その正体は、ただの火薬の詰まった樽である。

道中、女子供に年寄りだけでオゼゼもたんまり持っていそうという、絵に描いたような獲物然とした御三方を
狙う不逞の輩の数たるや、それはもう尋常では御座いませんでした。
そんな、メリー様の右フックだけで尽く壊滅していく殿方達を御覧になったイアルコ坊ちゃまが、
「つまらん!」
と、仰ったのが、今回の罪のないイタズラの始まりだったので御座います。
「フハハーッ! わけもわからず吹き飛ぶ連中の間抜け面が目に浮かぶわあああ!!」
鬼で御座います。

「フハァーッ!!! では、いったっだっきまああああああああああああっす」

――すわ、スイッチオン。
さようならお馬鹿様達、ご機嫌よう。
そうなる寸前、山賊の頭目が、かの有名なルパンダイヴの構えをとった瞬間に、その御方は
調べと共に颯爽と現れたので御座います。

「何だあ!? このギターの音はあああ!?」
「誰だ!? どこにいやがる!!?」「クソォ! なめやがって!」
「あそこだあっ!! あそこにいるぞお!!!」「なにぃ!?」「なんじゃあ!?」「何モンじゃあ!?」

街道並木の一際高い頂点に、ギターを奏でる影一つ。
その下半身、ピッタリとした下穿きは金糸銀糸を用いてパワフル華やか。
その上半身、厚手のマントを背に流し、逞しい逆三角形の赤銅色をあらわにしたるはエネルギッシュでベリー強か。
その顔、口元目元のみを露出した隼マスクの笑み――爽やか!!!

「ななな、何モンだテメェ!!?」
「フフッ、見てわからんか?」
「わからんから訊いてるんでぇあ!!!」

それは、今時流行らないヒーローの登場というやつで御座いました。

108 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/12/22(金) 04:10:09
ギターの曲調を男のカタルシス全開な弾き語りに変え、開口一番。その御方は仰いました。
「……愛と暴力は似ている……♪」
『『いや、似てねえよ』』
総ツッコミで御座います。

「……愛こそすべて。それ以外は何もいらない……♪」
『『お金も欲しいヨ!!!』』
「……愛で空が落ちてくる……♪」
『『ワケわかんねえよっ!!!!?』』
「……ああ♪ 何故♪ 人は暴力でしか愛を語れぬのか……♪」
『『決めつけんなよっ!!!!!!!!!』』
何やら滑稽な合唱が展開された事に大層お疲れな様子で、頭目様は肩で息をなさいつつ仰いました。
「だあああああっかっら誰だっつってんっだああああああああああああああ!!!!!???」
「貴様ら悪党に名乗る名などないわっ!!!」
「散々引っ張っといてうあだgしうgiuggjkaiuahiuahohoaufuhauegfoaoえおえおえ!!!!」
「愛と暴力に伝道師!! スカイ・トルメンタ四世!!! ラーナに代わりお裁きを申し渡す!!!!」
『『どっからツッコミゃいいんだよっっっ!!!??』』
「とおっ!!」
「とおっじゃねえって――ぎょわあ!?」
その飛び降りざまの顔面への膝爆弾が、宴の始まりで御座いました。

「スリダブ流! ミル・マスカラス!! ドス・マスカラス!! エル・マスカラス!!」
「ぐわおあ!?」「ぎゃああ!!」「あいだべほ!!?」
賊の方々の頭から頭へ、地に足をつける事なく様々なダイナミック技を披露するトルメンタ様。
華麗で御座います。力強う御座います。
そうやって、方々の半数程が半ば天に召された頃の事。
「こんの卑怯モンがあ!! バッタみたいに跳ね回ってんじゃねえぞ!? 地に足つけて男の勝負を――」
「よかろう!」「へっ?」
「マスクチェンジ!! グラン・トルメンタ三世!! ラーナに代わりて天誅を下す!!!」
なんと、トルメンタ様は顔の前で両腕を交差させ、瞬く間に鷲のマスクにお変わり遊ばされたのです。
その技の数々たるや、、まさしく剛≠フ一文字で御座いました。
「スリダブ流! 剛双満月輪!!」「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」
「スリダブ流! 悪漢大風輪!!」「やめやめてやめてやめてとめとめてとめおれやめとうわ!!!!」
「スリダブ流! 人間大火輪!!」「ぶえげろぐげうげおげおげおげおげおげろげろげろ!!!!」

「愛を忘れた子羊達よ。今はただ、心安らかに眠れ」
方々が全員お休みになられるまで、ものの五分といったところで御座いましょうか。
御自身が築き上げた屍の山を踏み越え、トルメンタ様は立ち尽くす流人の娘様方に手を差し伸べられ、仰ったのです。
「さあ、もう大丈夫だぞ君達。……ん? 我輩か? なあに、ただの旅の神父だ。愛と暴力の伝道師と人は――」
「変態にしか見えんわ!!!!」

――すわ、スイッチオン。
盛大に爆裂する街道。気絶したまま苦悶の表情で吹き飛ぶ山賊達。
その中にはもちろん、あの神父様のお姿も御座いました。
「いやはや、完全にタイミングを読み違えましたなあ」
「ううむ、勿体ないからとりあえず押してしまったのじゃが……見事に全員死んどらんな」
鬼で御座います。

「フハハハハハハハ!!!」
「ん? 爺、何じゃこのギターの音は?」「さあ、やけに男のカタルシスを感じさせる――」
「……愛と暴力は似ている……♪」
「全然似とらんわ――って、貴様いつの間にそこに!?」
「愛と暴力の伝道師!! スカイ・トルメンタ八世!! ラーナに代わってお涙頂戴!!」
「マスク戻っとる!?」「さっきと微妙に名前が違いますぞ!?」
「電流爆破とは、中々の不意打ち!! 実に見所のある子羊達だ!! ――とおっ!!!」
「ぎゃああええええええええ!?」「ひええええわあああああああっ!!?」
お二人が同じパターンでしこたま愛を解かれたのは、まあご愛嬌と言いましょうか、因果応報と言いましょうか。
兎にも角にも、心強い旅の道連れが加わったので御座います。

ああ、坊ちゃま、お茶の用意ができました。

109 :ラヴィ ◆P4yyuPbeoU :2006/12/22(金) 17:56:34

   ***************8年前***************

「「水竜グルムルを猟理する!?」」
ラヴィとアンナちゃんの声がピッタリに揃ったよぅ。
宿に帰って来た先生は、水竜グルムルを猟理する仕事を王様から引き受けたって教えてくれたお。
突然の大仕事に少し唖然としてるアンナちゃん、もちろんラヴィもポカーンだよぅ。

水竜種は龍の眷属、竜の中でもちょいと変わった種族なんだお。
竜種は空を飛べるのが普通だけど、水竜種は水中に適応した身体の作りなの。
どちらかと言ったら・・・竜ってよりも魚に近いかなぁ?
翼の代わりに鰭が発達してて、水の中を超すごい早さで泳ぎ回るんだよぅ。
それともうひとつ、その巨体もすごい!飛ばないで水の中で生活するからだって。
重力という枷に捕われない水中は、その身体をより強く大きくするって先生が言ってた。
グルムルはそんな水竜種の中でも特に大型で、凶暴な性格で、とんでもない奴らしい。
ラシャル湖近辺の町や村には、すでにたくさんの被害を出してるみたい。

ラヴィも随分とお仕事してきたけどぉ・・・こんな大物なんて初めてだよぅ。
「猟理はワシとお前達の3人でやる。この猟理がワシの引退猟理じゃ。」
「・・・え?」
今先生が何を言ったのか、よく分からなかったよぅ。
「そしてお前達のどちらかに黒包丁を継いで貰う。この猟理はそれを決める試験じゃの。」
うそ・・・やだよぅ!!ラヴィは先生からまだまだ教えてもらう事が残ってるよぅ!!
「分かりました。必ずや期待に応えます。」
「な!?アンナちゃんッ!?先生が引退しちゃうんだよ!?」
「ラヴィ、私はね・・・世界最高猟理人になるの。仲良し師弟ゴッコに興味無いから。」
そう言ってラヴィは突き飛ばされちゃった、あんなに怖いアンナちゃん見たの・・・初めて・・・・。



110 :レベッカ ◆F/GsQfjb4. :2006/12/22(金) 21:25:22

   今こそ奏でて、私の魂の謌を!

アタシの周りが真っ白になって…夢に出てきた少女がピアノの横に立ってた。
「あなたでしょ?ずっとアタシに何か伝えようとしてたのは」
アタシの問い掛けに、少女がニコッと笑って…その姿が大人の女の人に変わっていった。
   そう、貴女なら必ず私を…星晶の瞳の声を聞く事が出来ると信じていました

突然アタシの両手に星晶の瞳が現れる…んだけれども、形が変わってる!?
「これって、やっぱり星晶の瞳だよね?」

   はいそうです、本来の姿を取り戻した真の星晶の瞳です

今までに感じた事が無いくらいに、胸の鼓動が高鳴って…その鼓動は星晶の瞳に伝わる。
アタシは…やっと楽器に認めて貰えたんだ。
そう直感した。これまでとは比べものにならない程に、しっくりと手に馴染む。

身体と溶け合うような一体感、星晶の瞳とアタシの魂の鼓動が重なり合う時…
真っ白な世界はガラスのように砕け散り、再びジャジャラへと戻ってきた。
「いける…アタシは…アタシの夢は!何処までだって行けるッ!!!」

ギュビイィィィィィィイイイイン!!!!

思い切り掻き鳴らし、周りを見渡した。
空に浮かぶ古代都市!迫り来る破滅の矢!!それを防ぐ不滅の盾!!!
何これ!まるで絵本の中のお伽話みたいじゃない!!…これで燃えなきゃ嘘だよね!?
「パル…アタシね、今すっごいドキドキしてるッ!!もう最ッ高に熱くなってる!!!」
アスラの展開させた魔法陣の盾は、更に輝きを増しながら都市を覆っていく。
この盾を支えるのは、アスラとパルとアタシしかいない!!
「レベッカちゃん、やっぱり歌が好きなんだね!よぅし、僕だって負けないからーッ!!」

積もり積もる遥かな時の埃をアタシ達の魂の謌が残らず吹き飛ばして、輝きは光の爆発に変わった。
もう何も怖くなんかない。隣には最高の友達が居て、この手には最高のリュートがある!!!
これ以上を望むなら…後は、アタシ自身の成長しか残ってはいないわよね!!
だったら聴かせてあげる!破滅の矢が全てを滅ぼすなら、アタシの謌は全てを救ってみせる!!!

「いくわよ!パル!!」
「オッケィ!レベッカちゃん!!」

「「届け!燃える魂の旋律!! A Happy New World! 」」


111 :レベッカ ◆F/GsQfjb4. :2006/12/22(金) 21:26:19
       〜♪〜♪〜♪〜♪〜
それは永遠で それは思い出で それは煌めく夢…
眩し過ぎる太陽の輝きを 手の平に閉じ込めたら
果てしない道(未知)を行く 私を照らし、導き、支えてくれる!

ねぇ 君に届けたい 伝えたい これまでのありがとう!を
そう 私が選んできた 困難も 悔しさも悲しみの涙も
ずっとずっと一緒に もっともっと沢山 掴み切れなくなるまで…


これは幻で これは戸惑いで これは凍える風…
切な過ぎる記憶の扉を 思い切って蹴り開けたら
終わらない未知(道)を行く 私と笑い、泣いて、歩いて行ける!

さあ 君と分かち合いたい 喜びたい これからの旅路で
ほら 今まで選んできた 出会いも 別れも本物の輝きに変わる!

そっと瞳を閉じると…浮かぶのは 最高の冒険!!
そっと瞳を開けると…広がるのは 新しい世界!!

ねぇ 君に届けたい 伝えたい これまでのありがとう!を
そう 私が選んできた 困難も 悔しさも悲しみの涙も
ずっとずっと一緒に もっともっと沢山 掴み切れなくなるまで…

今こそ飛び出せ!遥かなる…Happy New World !!
       〜♪〜♪〜♪〜♪〜


テンションが限界突破!喉の奥底から響き渡る歌声が、世界を変えていく!!
光が全てを包み、何も見えなくなっていく中で、アタシとパルはしっかり手を繋いでる。
温もりが、優しさが、触れ合った手から流れ込んで来るのが分かる。
矛盾なんて言葉は嘘っぱちだったってコト。だってアタシ達は勝ったんだもん。
届かない歌なんか、絶対に無い。伝わらない想いなんて…絶対に無いんだから!!


「最ッ高に燃え尽きたーッ!」
疲労MAX100%で、テラスにへたりこむアタシ達の所へアスラが飛んで来るのが見えた。


112 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/24(日) 23:19:35
私を囲う天球。
黄道聖星術を行使する為の陣図であり、障壁である私の絶対領域。
そこに今、同じ天球・・・いや、私以上の天球が触れ、重なり合ってくる。
言いようのない異物感と喪失感が私を貫き、身動きする事すらできないでいた。
『・・・初の蝕なればこれも道理、か。』
重なった天球儀の中で黄金の仮面の人物が呟くが、その声から感情は読み取れず、私の『眼』を持ってしてもその姿は掴めない。
その言葉が何を意味するかすらわからなかった。
ただ、私にできる事と言えば、小さく呻き声を上げるだけ。
『蝕はもたらされた。発芽前なれどいい機会だ、己が手足の動かし方くらい教えておいてやろう。』
「や・・・やだっ・・・」
私の背後に立つ黄金の仮面の人物の言葉の意味は、すぐに身をもって知る事になる。
見えざる力によって左腕が持ち上げられ、天球の内壁へと導かれていく。
抗う事も虚しいほどあっさりと私の左腕は天球を突き破ることなく、内壁へと沈んでしまった。

直後、空間を侵食する虚空から巨大な腕が出現した。
否、それは腕の形をしたモノ。
巨大な液体状の紋様が集まり、一本の漆黒の腕を形作っている。
それは巨体を宙に浮かせるグレナディアの足首を掴むとそのまま握りつぶし、虚空に引きづり込もうとする。
「アッハッハッハ!こちらからアプローチするというのに積極的じゃぁないか!」
足を引っ張られガクンと身が沈むグレナディアから投げ出されながらベルファーはそれでも哺乳瓶を放さない。
「このまま終わると思ってけつかるなよ?」
まるでオーケストラの指揮者のように、優雅に、激しく身振りをするとグレナディアがそれに連動して出力を上げる。
引き合いによって虚空からの腕に握りつぶされ、引き摺られる足が付け根から引きちぎられていく。
ケーブルや様々な部品を撒き散らしながら自由を取り戻したグレナディアが飛ぶ。
引きちぎった足と大量に撒き散らされた部品類と共に虚空へと沈む腕。
「足なんて飾りですよ。僕様偉い人だけどそれがわかるの。」
片足をなくしながらも空中で体制を整えたグレナディアの各所が開き、無数の砲身が虚空へと向けられる。
近すぎるため肩に背負った二門の霊子砲は使えずとも、千に及ぶ重火器がいっせいに火を噴いた。

迫る無数の砲にも黄金の仮面には微塵も揺らぎが見られない。
『歪空間包護展開・・・』
術の展開と共に、虚空に沈んだ腕が再度顕われ私達を護るように掌を広げる。
無数の霊子砲、重火器はその掌を避けるかのように、不自然な軌道を描き虚空へと消えていった。
これは軌道を変えたわけではない。
霊子砲は確かにまっすぐに進んだ。
ただ、その空間が歪曲し、歪曲した空間をまっすぐ進んだので結果的に軌道を曲げたように見えたのだろう。
初めて知る術のはずなのに、私は予めそれを知っていた。
思い出しているといったほうが正確なのかもしれない。
『匂陳上宮!月妖日狂!極星天瀑剣召喚!!』
砲が途切れた瞬間、次なる術が展開される。
虚空からの腕に巨大な剣が握られ、瞬時にグレナディアの胸を貫き背中を突き抜ける。
『発芽もせぬ念体ではあるが、感覚を掴む程度にはなったであろう。
蝕はもたらされ、伊吹の刻は迫る。奈落の大聖堂よりその知らせを告げよ。
努々忘れるな、我は常に汝とともにある。』
私の背後で黄金の仮面の気配が消え、ようやく動けるようになった。
全身汗だくでひざが震える。
わからない事だらけだけど、はっきりしているのは上空に見える串刺しにされたグレナディアとその堅固と虚空へと沈もうとしている腕。
目的は果たされた・・・でも・・・

113 :アビサル・カセドラル ◆9..WsvGTOM :2006/12/24(日) 23:21:56
「もうちょい右、そーうそう、そこでよーっし!」
どこからかベルファーの声がする。
その次の瞬間、閃光と共に腕がはじけ飛んだ。
グレナディアの主砲が虚空ごと貫き、腕を弾き飛ばし、遥か遠くの目標物へと撃ちだされたのだ。
「こうもイフタフ扇の言うとおりだと面白みがないけどね、カール叔父さんとの約束もあるから仕方がない。時間だ。
いかがかな?龍を護るために生まれ、戦う事すら叶わなかった想念一万年分の一撃は?
プロトタイプとはこもっている思いの重さが違うだろう?」
高笑いと共にベルファーが現れる。グレナディアの上で仁王立ちしながら。
星辰を読み解きこうなる事はわかっていた。
グレナディアを公王暗殺と、対抗機体となりうるプロトタイプの破棄は予め計画されていたのだ。

「いつの時代も試作品は試金作だし〜。敢闘賞としてそれは差し上げよう!」
グレナディアは三機作られた。
プロトタイプ、一号機、二号機。
一号機はイルドゥームに破壊され、二号機と元々投入予定のなかったプロトタイプが破棄された。
串刺しにされているプロトタイプグレナディアより、僅かながらではあるがより重厚に、より洗練されたフォルムを持つグレナディア二号機。
空間すら貫く主砲に異形の腕は、空震を引き起こしながら周囲の空間を巻き込み消滅を始める。
腕も、剣も、それに貫かれているプロトタイプグレナディアも空間ごと消滅していく。
「敢闘賞をあげた代わりに、これだけの事をしたお前様を貰っておきたいのだけど・・・保護者の多い子だな。どなた様?」
おどけた顔のベルファーの視線の先には、虚空対消滅の煽りで宙に投げ出された私を抱きとめてくれたレオルさん。
対消滅する空間とそれによって巻き起こる空間振動をものともせずに空中に佇み対峙する。
「ドラグノフ公国十二貴族がギャンベル家当主ベルファー卿とお見受けします。
私は王国騎士団補佐官レオル・メギド。この者は我が軍所属、差し上げる事はできません。
それと、星霜の眠りから目覚めるなり主砲を放つなど。グレナディアを奪還するものとしてはこれ以上貴重なエネルギーの消耗は控えていただきたい。
運ぶのが手間ですからな。」
消耗して足がおぼつかない私を、後ろに控えて戸惑い気味な騎士の女の人に預けてレオルさんは堂々と宣言する。
レオルさんは知っていたんだ。
世界率が変わったことにより、想念の染み付いたグレナディアが起動するとどういう事態が起こるかわからない、と。
それ故、制御不能になった時、被害が最小限に抑えられるようにエネルギーも最低限しか入れていないことを。

114 :グレナデア消失 ◆9VfoiJpNCo :2006/12/25(月) 03:01:03
済ました顔で言うレオルとやらを見下ろし、ベルファーはますますもってご機嫌といった様子で哺乳瓶を仰いだ。
「そう! 君の読み通り! この二号機の燃料はギリちょんでね!! 実はこうやって浮いているのも辛いんだよ!」
徐々に、グレナデアの歪な人型が傾いていく。
下からその威容を見上げるすべての者は、有り難味のない絶望的な直感を共有した。
「――よって落ちるっ!!!」
急に手を離された錘のように、いきなりの大加速で自由落下に入るグレナデア。
その主砲の第一射、第二射を確実に上回るであろう衝撃に備え、ある者は毒舌とともに身を伏せ、
ある者は運を天に任せ不敵に笑った。
それは果たして誇るべき事か、それとも――いや、やはり誇るべきであろう。
誰一人として、祈った者はいなかった。

ジンレインは天を見上げたままのソーニャの手を取り、手近な洞へと引っ張り込んだ。
それでどうなる?
――とは思ったが、まあ、体が勝手に動いてしまったのだからしょうがない。職業病である。
逃げられぬのならば、せめて死の原因を最期まで睨み付けていてやろうと、落下するグレナデアの巨体へと顔を向ける。
今まさに、とんでもない物が、雪の景色を砕いて潰す。
まばたきは、もったいないのでやめといた。
「……なに?」
雪崩よりも早く迫ってくるであろう落着の衝撃が来ない事に呟き、眉をひそめる。
なんと、グレナデアの足元は潰れるどころか歪んですらいないではないか。
傍で見ていたソーニャの気配が変わった。焼け付くような、熱い情念に満ちたものになる。
何事かを叫びつつ、炎の爪が穂先を前に疾く駆け出す。
白を割って突き進むその後姿は、さながら火竜の舌の如し也。
思わず見入ってしまったジンレイン。素早く気を取り直してグレナデアを注視する。
……沈んでいる?
駆け出し、その足元を覗き込む。
「ワケ……わっかんない」
大地は、雪に埋もれた山岳地帯の色ではなく、井戸の底の如き無明の闇の暗きであった。

「さすがだ! 流石極まる影帝ゴウガ! まっさか自身の影にグレナデアまで収納できるとは……どうやって殺そう?」
巨大な影、まさしく巨影と言うべきそれに沈み行くグレナデア二号機の頂点で、真剣に頭を悩ますベルファー伯爵。
忍術、影劫空界。
本来、ただの日に落ちた二次元の存在でしかない影を、異空間を孕んだ闇とする術である。
その利便性に反し非常に制御が困難らしく、シバ程の使い手であっても収納規模はせいぜい一個小隊程度。
城一つに匹敵するグレナデアを呑み込まんとする、帝の影の暗く深きは果たしてなるや?
「次に目覚めた時、この眺めがラライアの山々になっている事を――って、やっぱ怖ええええええ!!」
『契約は守る』
足元まで来た影にガタガタブルブルするベルファーに、ゴウガの声がかけられる。
不可思議な響き故、まったく位置が割り出せない。
「……よぉ〜し、いつか分析してやる。――ん?」
密かに決意するベルファーの子供みたいに輝く瞳の端に、炎をまとって突っ込んでくる女の影が映った。

115 :グレナデア消失 ◆9VfoiJpNCo :2006/12/25(月) 04:07:17
全身是、怨敵目掛けた炎の槍の如き也。
ソーニャの雄叫びは明瞭ではあるものの、心に確かに響きはするものの、意味のある言葉にはなっていなかった。
影の上で待ち受ける形となったベルファーが、哺乳瓶を高々とかざす。
途端、炎の爪のすぐ傍で盛大な雪の花が咲いた。
高所からの砲撃である。
伏せ、雪上の獣のような鋭き眼でおおよその発射地点を見上げたジンレインは、その理不尽に大きく顔を歪ませた。
「新型ゴレム!? 空でも飛べるの!?」
思い思いに、周囲の山の頂から砲を向けるは重厚なりし人の型。
公国の次なる主力としてその名も高い、噂の新型ゴレムギガント≠ナあった。
その数、実に十四機。

荒天≠フエンラは、大の字に寝そべって真っ赤な舌をべろんと出した。
「疲れた〜〜死ぬ〜〜〜〜」
クソ重いギガントの一機一機を影に沈め、山頂まで運んだのは彼である。
まだまだ未熟な彼の影劫空界は一機を収納するのが限界なため、計十三回半もこの厳しい頂を往復して配置したのだ。
移動で肉体を酷使。術で精神を酷使。酷使酷使の二重奏に耐え切ったエンラ。今はただ、白い吐息を荒げるのみ。
「……休んでから帰ろっと」
毛足の長い犬種故か、生来の持ち味故か、この寒さの中にあって尚、呑気な寝息を立てられるコボルドであった。

「うん、配置は万全みたいだね。短時間でいい仕事だ。今度会ったら骨をやろう」
炎の髪の女を足止めする砲火の具合を見やり、満足顔のベルファー。
白衣に着替えたその姿は、すでに胸まで影に浸っている。
「断龍さんと天弓君は、一緒に行かないんだねえ? 君らの助けに来たのかと思ったんだけど」
『彼らには、彼らの思う所がある故に』
返すゴウガの響き。佇むシバは、黙して影へと呑まれ行く。
虚空より現れた腕との戦闘の際に、クロネとアオギリは何処かへと姿を消していた。
敵さんも、一枚岩ではないのかもしれない。
少し、考えに耽るベルファー。

ルフォンはこれで問題ない。
グレナデアが消えたとなれば、戦略的にほぼ無価値の地である。
わざわざ、駐屯部隊やギガントの相手までして占領しようとは思わないだろう。
王国軍とレジスタンスは、緩やかに撤退する。まともならする。アホでもする。○○だったら仕方ない。
問題は、これをガナンに運んでからだ。
カール叔父さんやミュラーなんかは、こいつと今までのメーヴェがあれば決戦兵器として事足りるとか思いそうだが、
自分は違う。こんな物では足りやしない。
……戦闘データが欲しい。
東より虎視眈々とゼアドを狙う、史上かつてない脅威を思い、ベルファーの頭脳は途方もないスケールの数式を連ねていた。

ベルファーの、何故か親指を立てた右手を最後に、完全に闇へと沈むグレナデア。
後に残るは、砲の音色と女の叫び。
今はまだ、退くべきやと鳴り響く。

116 :イアルコ ◆neSxQUPsVE :2006/12/26(火) 17:17:15
「愛と暴力の伝道師! スカイ・トルメンタ六世!! ラーナが吹けば桶屋が儲かる!!」
「その一番弟子!! イアルコ仮面!! 世の中銭じゃ! 銭がすべてじゃ!!」
「同じく一番弟子!! マスクド・ジョージ!! ぎっくり腰とは無縁ですぞい!!」

『スリダブ流!! 愛と暴力のスリープラトォオオオオオオオオオオオンッッ!!!!』

隼、モグラ、アライグマのマスクを被った三人組は、セリフとは正反対のてんでバラバラな攻撃を繰り出し、
今日もまた、街道に巣くう賊の一団にラーナの深き愛を解いたのであった。

終着点がほのかに霞んで見えてきた街道脇の木陰の下で、メリーの入れたお茶をお供に小休止。
「我が一番弟子達よ! 今日もご苦労であった! この分であれば、来るべき新団体の旗揚げ戦にも参加できるぞ!」
「んむ、まあスッキリするんで暇潰しには丁度良いの」
「若、次の決めポーズは如何致しましょうぞ?」
スクワットで汗を流すトルメンタの教えに完全に毒されたイアルコとジョージは、茶を飲みつつもそんな話をするばかり。
メリーは黙々と、後片付けをするばかり。
「イアルコ仮面よ。新団体の紅一点となるべきメリー嬢のスカウトの件は、その後如何かな?」
「いや、相変わらず『メリーはメイドで御座います』の一点張りでのう。引っ張り込むには難儀しそうじゃ」
「ふうむ、実に勿体ない。数多くの闘魂を指導してきた我輩の目から見ても、メリー嬢の実力は計り知れぬというのに」
本人を前にはばかる事なく会話する、トルメンタとイアルコ。
ちなみに、イアルコは素顔になっていたが、この神父様にとってはそれでも坊ちゃまはイアルコ仮面なのらしい。
「そういえば、メリーは2117年度の無差別級世界統一王者なのだとか言っとったのう……」
「なにっ!! 無差別級世界統一とな……っ!!!???」
イアルコの思い出しながらのセリフに、スクワットをやめて目を見開くトルメンタ。
「……超大型新人か……」
「なんのこっちゃ」
何の王者なのか聞きもせずに重々しく納得するのが、彼らしい――と、短い付き合いながら思うイアルコ坊ちゃまであった。


ゼアド大陸中央部。
東は一角獣の森の手前まで、西はメロメーロの街の手前まで、南北の端は時勢によって千変万化。
古くからの南北の緩衝地帯であり、ここ十数年の両大国の主戦場であり、龍人戦争においては様々な英雄の
活躍で知られる神話の舞台であった、大陸一の大平野。
人々からは俗に中原≠ニ呼ばれる地を眺め見て、イアルコはふんぞり返って難しい顔を作った。
「前に見学に来た時は、戦線はもっと南の方じゃったんじゃがのう……公国騎士団も地に堕ちたもんじゃ」
「いやいや、ここは褒めるべきで御座いましょう。ゴレムもなしに寡兵で戦線を維持するとは、流石はリオネ様と」
「わかっとるわい。リオネの前で言ったら殺されるからの。今の内に言ってみただけじゃ」
現中原の一応の北端であるサリアの街。
王国軍主力とぶつかり合う公国騎士団の司令部が置かれた、領事館の一番高い塔の最上階で
イアルコ一行は軟禁状態の目に会っていた。
まあ、当然である。
ガナン司令部からは反逆者と認定されているのだから。地下牢にぶち込まれなかっただけマシだと思うしかないのだ。
「しかし、遠いところをわざわざ頼ってきた許婚を十日も閉じ込めおるとは……実に愛ある扱いじゃのう」
「このままではいかんぞ、イアルコ仮面。屋内でのトレーニングには限界があるからな」
何故か、一緒にメリーの茶を飲んで話に加わっているトルメンタ。
一緒くたにされてとっ捕まる義理もないのに、実に付き合いのいいオヤジであった。

「……む、一番弟子達よ、来客の気配だぞ」
「若! きっとリオネ様に違いありませんぞ!」「ようし、者ども!! 泣き落としの準備にかかるのじゃ!!」
そこはかとなく気品のあるノックの後、ゆっくりとドアが開かれる。
「おお、リオ姉様!! お久しぶりで御座います! イアルコはお会いしとう御座いました〜〜!!」
普段とは打って変わった歳相応の表情を浮かべて突進する坊ちゃま。その豹変ぶりにこけるジョージとトルメンタ。

今ここに、ようやくもって、イアルコ・パルモンテは許嫁リオネ・オルトルートとの対面を果たしたのである。

117 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/26(火) 21:24:37
―公国首都、霊峰都市ガナン政策ブロック
公王の居城ゴルテンイグースにて、公国12貴族が一堂に会する会議が開かれた。
集まったのは公国の中枢といえる重要人物ばかりで、警備も平時の数十倍の厳重さである。
城の地下に存在する会議室、シュバルツバルトはその名の通り黒い森の中を彷彿とさせ、
淡く照らす小さな照明は円卓を囲む8人と、周囲を固める護衛の影を揺らめかせていた。

時計の針は既に頂を回り、日付が変わった頃、
「さて、皆様お集まりになられましたので会議を始めさせていただきます」
と、起立して宣言するはミュラーだがその表情には何やら陰りがあった。
「おや?マリオラの嬢ちゃんが見当たらんが…?」
訝しげにミュラーへと尋ねるはイプタフ太老、と同時に室内に僅かなざわめき。
「マリオラ女大公は…体調が優れぬとの報を受けております。本日は欠席かと」
ほんの一瞬、苦虫を噛むように顔をしかめるが直ぐさま元に戻すとミュラーは着席。
「本日の議題は獣人達の動向に関して、我々の今後の対応を決議したいと考えております」


会議は凄惨たるものだった。
遺産の力を過信する古参貴族と、最前線で獣人の脅威を目の当たりにしたベルファーが
真っ正面から衝突し、会議は荒れに荒れた。こうなる事は予定通りだったのだが、それでもミュラーは悲しかった。
ギュンターの統一国家思想は、ミュラーが思っていた以上に深く根差していたのだ。
「間に合わないのは明らか…ならば、我々だけで成すべきだ。そうは思いませんか?」
誰もいない謁見の間に、ミュラーの独白は続く。
「新たなる秩序は我々こそが創らなければならない…」
「あれあれ〜?僕様が不機嫌な顔なら解るけど、君がそんな顔するのは不思議だなぁ」

王座の後ろからニコニコ顔で飴玉をしゃぶりながら現れるは、博乱狂気。
「ミュラー君さぁ、僕様にとって1番怖いものって何か、知ってるかい?」
頬張る飴玉をレロレロと玩び、ベルファーは珍妙なポーズを決める。
「『退屈』だよ。物を創りだす閃きを退屈はゆっくりと蝕み、静かに腐らせてゆく…」
ふざけたポーズのままだったが、その眼は狂気の彩りに煌々と輝いていた。
「猛毒のようなものなんだよ、ミュラー君」

狂気の眼差しにミュラーは僅かに微笑むと…ベルファーと共に闇に沈んだ。

118 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/26(火) 21:25:28
―ゴルテンイグース、会議室
皆が解散した後、静まり返る室内に1人。公国陸軍大将カールトンである。
彼は苛立ちを堪え、椅子に身を任せていた。
会議の内容を思い出す度に、額の龍角が熱く疼く。その身を焦がす程の怒り故に。
所詮は我が身可愛さに寝返った穏健派の腰抜けだと、猛り狂う自身に言い聞かせるが…
とても憤怒の焔は消せそうになかった。
現役を退いた事を悔やむがもう遅い。
「ミュラーはまだ分かっておらんようだな…あれでは、奴のやり方と同じに過ぎぬ…」
円卓の央に立つ燭台の灯が、弾けるように燃え上がり、“もう一人”の姿を照らし出す。
公国12貴族が1家、シュナイト家当主のアルフレーデ=シュナイトであった。
口元をヴェールで隠し、おおよその表情は読めないが、その瞳は確かに笑っている。
「そうは思わぬか?アルフレーデよ」
カールトンの呼び掛けに、少し頷くと優雅な手つきで1組のカードセットを取り出した。
鮮やかな手捌きで卓上に次々と置かれていくカードを無言で見つめるカールトン。

程無くして卓上にはカードにより、陣図の如き奇妙な模様が出来上がっていた。
「何と出た?」
尋ねるカールトンの声が、心なしか震えているようにも聞こえたが無言で首を横に振って応える。
「そうか…叶わぬか。せめて汚らわしい獣共に一矢報いるを有終の美としたかったが…」
深い溜息と共に立ち上がると、並べられたカードの1枚が勢いよく燃え始めた。
焼け焦げ、丸く折れ曲がるカードに描かれるは…黒き鎧と見紛うかの甲殻を持つ戦士。
「逝くので?」
アルフレーデの短い問いに、カールトンは威厳に満ちた面持ちで応えた。

「逝く。我が戦、見届けよ…そして心に刻むがよい。龍の誇りを…龍の誓いを!」


―ガナン動力ブロック、臨時格納庫
「馬鹿な!!リッツが死んだだと!!?」
黒騎士の叫びが格納庫内に響き渡る。ギルの語るルフォンでの出来事は黒騎士を震撼させた。
当然であると言える。黒騎士は暗殺未遂事件の意外な真相を呆けた顔で聞いていた。
なによりも黒騎士を打ちのめしたのは、生涯のライバルと思っていたリッツの死だった。
「あいつが…そう簡単に死ぬ筈が無い…必ず、必ず生きている!」
ギルの話では死体は発見されなかったそうだ。
黒騎士は僅かな希望に縋り付き、祈った。

119 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/26(火) 21:26:18
―ゼアド大陸北東部、ラタガン渓谷
12貴族会議から4日が過ぎた夕暮れ。カールトンは単身ガナンを発ち、敵を待つ。
敵、則ち煉獄の志士スターグ率いる甲殻兵団を。
カールトンが身に纏うは深紅の鎧。かの龍人戦争の際にも身に着けた物である。
「むぅ、要らぬ事を…」
遥か後方より響くゴレムの大部隊の行進曲に、照れたような怒ったような、難しい顔になる。

現れたゴレムの1個大隊は、12貴族が1家メルディウス家のオペラ率いる公国葬奏楽団だった。
戦場の敵兵を残らず葬る戦慄の旋律、美麗にて可憐、高貴にて荘厳、“旋律の魔女”推参。
「ずるい人…私の壮行を受ける事無く逝かれるとは」
透き通る鈴の音に似た声が、日も傾き闇が射す渓谷に染み込むように広がる。
しかしカールトンは振り向かず、唯々無言で前方を睨み据えたまま微動だにしない。
そんな彼に、オペラは何か言いかけたが…寸で言葉を呑んで止めた。
分かっていたのだ。もう手の届かぬ所に居るのだと。
だがそれでもオペラは手向けの壮行曲を、死地に赴くかつての夫に届けたかった。

一方でカールトンもまた、これまでを想い、これからを想い、かつての妻を想う。
恐らく自分は死ぬ。いや、確実に死ぬ。だからこそ、もう一度顔を見たかった。
かつてのように抱き締めてやりたかった。だがそうはいかないのだ。
置いて来た筈なのだから。
公国陸軍大将としての自分、公王の友としての自分、唯の龍人であった自分…
妻を愛し、我が子を愛し、家庭を愛し、国を愛した自分…

総てを置いて来たのだ。戰に赴くが為に!!

『聴かぬ』その一言すら、口には出来なかった。故に、歯を食い縛り堪える。
そんなカールトンを見て、オペラは可笑しくて思わず笑い始める。
「どうやら忘れ物は有りませんね。…武運を!」
溢れる涙もそのままに、オペラはタクトを振り部隊に指令を出した。帰還命令である。
向きを直し、来た道を返すゴレムのたてた地鳴りは、オペラの嗚咽を掻き消した。

そう、彼は忘れてなどいなかった。闘爵と称され、羅刹の路を歩んだ漢の生き様を…
その志を。これだけは置いては来なかったのだ。
日が落ち、松明の明かりが遠く前方より迫る“敵”を薄く照らし…
カールトンは立ち上がり一喝。

「獣達よ…紅蓮燃ゆ我が志、討ってみせよ!!!!!」

120 :ST ◆9.MISTRAL. :2006/12/26(火) 21:27:34
―暗い闇の中
「そんなに嫌かい?カール叔父さんを利用するのは」
ベルファーは相変わらず飴玉を舌で転がして遊ぶのに熱心のように見える。
今ベルファーとミュラーが立っているのは、ガナン最下層の封印施設。
そこはこの都市を制御するホムンクルスが眠る場所。
「気は進まないさ、焚き付けて戦場へ追いやるなど…平常では無理だっただろうな」
「だけど、適任者は叔父さんしかいなかった。そうだろう?」
「そう、彼しかいなかった。それが惜しい」
ミュラーが心底悔しそうに壁を殴り付け、じわりと血が滲み短い朱線を引く。
あの会議でのベルファーの言動は全て演技であった。
大幅に誇張した獣人の将達の力を訴えかけ、他の貴族に失笑を買ったのには目的があったからだ。
あの日以来、ベルファーの中で幾度となく繰り返された計算は、1つの結論を出した。

獣人に有って龍人に無いもの…それは、結束である。
案の定、彼の言葉に耳を傾けたのは、カールトン、そしてアルフレーデだけだった。
計画通りに会議は大荒れとなって、何も決まらぬ内に解散という結果が残ったのだ。
「確かに、我々の意志を揺るがぬものとするには、“贄”が必要だったが…」
ミュラーは荘厳な作りの扉を見上げ、扉に刻まれた紋章に手を翳す。
「これで手際良く死んじゃってくれたりしたら僕様的には超ハッピーだけどねぇ」
何も悪びれた様子も無く、さらりと言い放つベルファーをミュラーが睨む。
すると『怖い怖い』とでも言うかのように肩を竦め、おどけた調子でペロリと舌を出した。

 ∵ロック解除、立ち入りを許可します∵

無機質な機械音声に従い、開いた扉へと進む2人。
開く扉の隙間から溢れ出す光が、薄暗い最下層の廊下をゆっくりと照らしていく。
「さて、これからが忙しいぞ?我々には仕事が山積みだからな」
「ふぁ〜ふ…労働規準法の範囲内でヨロシク」
欠伸を噛み殺し、やる気の無い緩い返事を返すベルファー。



歴史が…そして世界が…静かに動き始めた
ほんの小さな流れも次第に寄り集まり…
やがては全てを飲み込む大河と化すだろう
その流れに身を委ねるか…
その流れに抗うか…
運命の物語は、新たな舞台へと移る……


121 :ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2006/12/26(火) 23:16:50
「アーシェラ、僕らは造られた人形なんだよね?」
机があり、三人が座っている……懐かしい光景が広がる。過去の光景が。
「そう言っている人の話し、聞いちゃったんだ、人形だから、使い捨てだって言ってた……」
悲しそうに言うハインツェル……僕も同じような表情だ、二人とも引き摺っている、造られた人形という事実を。
でも、そんな二人の言葉を真剣に聞き、目を逸らさずにいた人がいた、アーシェラ……
『ねぇハイアット、ハインツェル、生まれた形は問題じゃないのよ、ただ、どう生きるか≠ナ決まるの。』
「でも!みんなは人形だって、皆を守りたい、それもプログラミングに過ぎないって言うんだ……」
僕が泣いている、、全てが怖かったんだ、自分とは違うもの達がどうしようもなく怖かった。
そんな僕をアーシェラの暖かい手が包む。
『そんなことないわ、あなた達のその心はあなた達だけのものよ、胸を張って……』

これからどのくらい経った頃だろうか、病棟に、僕の姿があった。
隣には、アーシェラの姿があった、昔はハインツェルに比べ僕はかなりナイーブで、
終始周囲の目を気にしていた。これは、僕が周りの目に耐えられずに自殺を図り、未遂に終わった時のことだ。
「……生きている、なんで。」
そう言う僕の目はまるで死んだ魚のようで、生きることを望んでいる目じゃなかった。
『ハイアット、私ね……あなた達が生まれた時……』
「なんでこんなに僕を苦しめるんだよ、人形劇≠ヘもういいじゃないかぁっ!!」
悲痛な叫びを上げる僕をアーシェラは見てやりきれないように唇を噛む。
『一体、自分がなにをいっているのか分かっているの!?』
「分かってる、嫌だっ、もう嫌なんだよ、殺してくれ……殺してくれよっ!!」
その瞬間、アーシェラが僕の頬を叩いた、赤く腫れる頬が生きている℃魔伝えている。
『それが答え≠ネの!?そんなに簡単に生命を……全部を手放しちゃうのっ!?』
「………………」
『ハイアット……あなたは何にだってなれるし、どこにでもいける、なんでか分かる?』
「………………」
『生きているからよ、今暗闇にいても、太陽を見に行けるの……だから、殺してなんて言わないでっ!」
アーシェラから涙がこぼれる、このときを僕は忘れることができない。
凄く強くて明るくて、涙なんて流すような人じゃなかった……

―『私……あなた達を作って本当に良かったとおもっているわ』―


走馬灯が消え……意識が戻ってくる、無意識に手を顔の前に持ってくると、あの十字架が握られていた。
「ありがとう、また助けられたね、君の想いに……」
十字架を強く握り締め、落とした銃を拾い、ボロボロの体を引き釣りながら必死にハインツェルの後を追う。
「分かってるよアーシェラ……ハインツェルは助けるよ…」

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
                      
「さぁ、殺してやる」
ハインツェルの剣、ジルヴェスタンが鞭のようにしなる。
ラヴィは無意識に目をつぶる、わかっているのだ、避けようのない死が来ると。
その時、何かをはじくような音が辺りに響く、おそるおそる目を開けると。
そこには血で塗られ真っ赤になったハイアットがハインツェルの剣に弾を撃ち込んでいた。
「ハっちゃん!!」
「な、なんでお前が……死んだんじゃ、いや、死ななくてももう限界のはず……」
驚きを隠せないのはラヴィだけじゃなかった殺したと思っていたハインツェルも同じだった。
しかし、ハイアットはそこに立っていた、傷だらけで、今すぐにでも消え入りそうなほどの呼吸だが
確かにそこに居た。

122 :ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2006/12/26(火) 23:17:33
「ハインツェル……僕はね…結構…タフ…なんだぜ…」
嬉しさを隠せないような顔をハインツェルが一瞬だけ見せる、だがその後はさっきの通り殺気に満ちた表情だ。
「……なんでだ、なんでなんだ!!なぜお前はこいつらをそんなに庇う!!そんなになってまでこいつらを助けに来ようとする!!
 アーシェラを、アーシェラを忘れているのはお前の方じゃないか!
 いや、アーシェラだけじゃない!昔のこと全てを忘れたな!?」
「忘れられたら!!……忘れることができたら、どんなに楽だろう……」
目をつぶり顔を上に向けるハイアット、まるでなにかを思い出すかのように。
「忘れたい……僕が造られたってことも、皆のことも、昨日のことも、忘れられたらどんなに楽だろうか……」
ハインツェルから殺意が消え、ただ黙ってハイアットを見つめる、まるで何かに縛り付けられたように。
「僕はね、守れなかったんだよ、アーシェラも、皆も、全部から逃げ出してきてしまったんだ、できることなら忘れたい、自分の罪を」
全てから逃げ出した、時を越えたということが、今もハイアットを縛り付けている。
「でもね……無理≠セ」
そして、ハイアットはその真っ直ぐな目をハインツェルに向ける。なんの迷いもないその目を。
「あの時の後悔も、そして今持っている後悔も、もうどうすることもできないんだ、でもね、でも……」
拳を握り締め、自分の顔の前に持っていく、それは決して折れない決意の表れでもあった。
「今日、僕の腕は確かに動く、人の笑う顔を見るたび、だれかの悲しみを消すたび、だれかを救うたびに、」
言葉を続けながらゆっくりとハインツェルの方に歩いていく、しっかりと一歩一歩を踏みしめ、
十字架の真ん中にある光っている球を外し、銃に込める。

――「アーシェラがね、笑ってくれるような気がするんだ、皆がね、笑ってくれるような気がするんだよ」――
そして、ハインツェルにゆっくりと銃を向ける、初めてまともに向けた銃。トリガーに指をかけ、ハインツェルに魂の叫びを放つ。
「だからこそ、僕はお前を止める!アーシェラが笑っていられるように!!」
打ち出された弾丸、今までとは違い淡い光りを放っている弾丸、そして、それはハインツェルのこめかみに撃ち込まれる!
しかし、血が流れ出ない、それどころか傷一つ負っていない、だが、ハインツェルには明らかな変化があった。
その場にうずくまるハインツェル、頭を抱え苦しむ姿、明らかな異変だった。しかしハイアットはなぜこうなっているのか。全て理解していた。
「弾丸コードNo00『Memorys』 ハインツェル、アーシェラを、思い出せっ!!」
彼が放った弾丸、それは過去の柩を解き放つ、今ハインツェルの頭には様々な過去が思い出されている。
「……僕は、僕はアーシェラを……ただ甦らせたくて」
「…でも、君のやり方はアーシェラは望んでない…」
「僕は…………」
「アーシェラの願いを忘れ、彼女を悲しませるか……彼女の思いを受け取り、彼女と共に生きるのか、戦いはそこにあるんだっ!!!ハインツェルッ!!」
「でも、でも僕はアーシェラがいないと駄目なんだぁぁぁぁああっ!!!」
苦しみそうにハインツェルは絶叫し剣をハイアットに向け振り下ろそうとした時、高らかな声が響いた。

「ハインツェル!!剣を収めなさい!!」
聞き覚えのある声に、ハインツェルの体が止まる、アーシェラの声だ。
「……ア…アーシェラ……」
振り向くと、確かにアーシェラの姿があった。ハインツェルの腕から剣が滑り落ちる、
「久しぶり、ハインツェル」
「…………」
アーシェラの言葉にただ俯きなにも言わずに黙る。そんなハインツェルに歩み寄る。
「ハインツェル……?どうしたの?」
「……僕は、僕は……とんでもないことを……」
そういい目を逸らすハインツェルをアーシェラがしっかりと抱き締める。
「ごめんなさい、辛かったでしょう……ごめんなさい。」
それを見ていたハイアットも、ハインツェルの肩に手を置いて言う。
「ハインツェル、本当に、辛い思いさせて、すまなかった、お前ばっかりに……押し付けて。」
がくりと、ハインツェルは膝を落とし、顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。

123 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/28(木) 19:57:38
何者かの奇妙な術によって、グレナディアの巨体は影に沈んで消えた。
現場に唯一人の龍人も共に消え去り、残された私たちは山頂からの砲撃に晒されていた。
今の装備で、大型機を遠距離から相手取る事はどだい無理だ。
一向に姿を見ない公国軍駐屯隊も、この分ではどこに潜んでいたか知れたものではない。
「退け!」
叫んだ。離れた岩場に、王国騎士の軍服を着た男とレニーを見付けたからだ。
レニーはローブの少年を抱いており、あれがソーニャの言う「チビ」だとしたら人数が合う。
逃亡を躊躇する理由は何も無い。立ち竦んでいた「爪」が、はっと気を取り戻した。
「アビサル!」
「ひとまず降りて!」
ゴレムの砲撃は離れた三人へも及び、彼らは岩場から一目散に走り出した。
逃げる合間に団長補佐がレニーから「チビ」を預かって跳ぶと、空中浮遊で私たちを先導する。
私とソーニャは彼を追って斜面を駆け下りつつレニーに寄り、
「あの子がアビサル?」
「そうだよ、ソイツ無事かい!」
ソーニャに応えるように、団長補佐に抱きかかえられた少年が、か細い声で何かを話す。
砲声と着弾音に遮られ聞き取れないが、例え彼が死にかけていようと今は山を下りる事が先決だ。

山頂を見上げると、同じ峰に配置された一機が私たちを追って動き始めていた。幸いにして一機分の砲撃が止む。
しかし相当な距離を開いているにも関わらず敵影は、見る見る内に大きくなり、こちらへ近付いているように感じる。
感覚はまんざら嘘でもないようで、追跡者は遠く離れていても目に焼き付く、巨大な炎を背負っていた。
僚機や随伴兵は居ない。ルフォン基地の装備は、単独投入が可能なまでに高性能化されたマルチプレイヤーらしい。
「敵が追って来る! 早く走って!」
「そりゃアンタは飛べるから楽だろうけどさ!」
今回ばかりはソーニャに同感だった。
柔らかい雪を踏んでもつれそうになる足を、ぎりぎりで押さえられる程度で半ば滑り降りる。さすがに息が上がった。
剥き出しの頬が風に当たって、切れそうに痛む。槍は流石に邪魔になって捨てた。ソーニャもだ。
私たちの半歩後ろで、砲弾で掘り返されて落ちる雪の音がした。的の小さいせいか照準が甘くて助かる。
もしも砲台がグレナディアだったら、こうは行かなかっただろうが。

124 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/28(木) 19:59:41
下りるだけ下りると傾斜が緩くなった。
砲撃は次第に弱まっていったが、今度は件の一機が背面のバーニアで急加速、接近中だ。
二足歩行機らしいが尋常でない移動速度、多少の障害物は押し潰してしまえる重量が効いたか。
一方の私たちは、急に道が緩やかになると足運びのペース調節が追い着かず却って走り難い。
ソーニャが石に蹴つまづいたレニーを助け起こすのを待っていると、突然目の前にシャミィの運転するゴレムが着けた。

幌が上がると後部座席から、ハンマーを担いだジーコが降りて
「全員乗れるか?」
皆が口をつぐんだ。乗りたいのは山々だが、座席が少々足りなく思える。
互いの顔を見合わせているうちに、団長補佐レオルが一旦地面へ降り立った。
「私はこのままで構いません。アビサルさんは移したほうが良いでしょうか?」
「少しばかり席が足りんと思うがの」
車は四人乗りだ。彼を乗せてやろうとすると積み上げるしかない。
全員の目が「チビ」の保護者に行く。彼女は考えるまでもなく言った。
「アンタはそのまま飛んどけ。バカチビ頼むよ」
レオルは頷き、再び体を宙へ浮かせる。
過剰載積の憂慮が無くなると、私たちは一斉に、幌を開けたゴレムへ飛び乗った。
そうこうしている間にも敵は近付いてきているのだ。走る事を止めても、身体のテンションが収まらない。
「シャミィは後ろに! レニーさん、運転お願いします」
「分かったわ」
レニーがハンドルを握り、私は助手席へ就いた。後部は三人で少々手狭だ。
押し入るハンマーの巨漢にソーニャが悲鳴を上げる。
「狭い、狭いよちょっと! 何でアンタわざわざ乗ってくんの、流されたんならそのまま麓に降りてっちまえばいいんだよ!」
「オレがニャンクスの嬢ちゃん抱えてやっからよ」

125 :ジンレイン ◆LhXPPQ87OI :2006/12/28(木) 20:00:13
ジーコがシャミィを膝に乗せると、ソーニャはどうにか苦も無く座れるようになった。
すかさずレニーがゴレムを発進させる。窓から、アビサルを抱えて併走するレオルが見えた。そして背後。
バーニアの炎が機体に隠れて見えにくいが、敵の新型は目測約一キロまで差し迫っていた。
やがてゴレムは斜面の向こうに隠れてしまうが、あれが砲撃を再開すればカマを晒した私たちの車はいい的だ。
揺れる車の中で、シャミィが私に「霜乃武」を掲げてみせると
「後ろを向け」
「魔導銃? こっから撃つ気か」
「対ゴレム用の狙撃銃だ。何もせんよりは撃ったほうが逃げられる」
「そりゃもっともだ……ほれ、こんなもんか?」
ジーコが身体を捻って後ろを向き、銃を構えて身を乗り出そうとするシャミィの腰を持って支えた。
「低い」
「手前に似合わねえ、でっけえ武器使うからだ」
彼女の脚がジーコの肩に乗ると、シャミィの下半身が更に持ち上げられ、空中で寝そべる格好になる。
始終跳ね回る車でそんな姿勢を取って、安定は決して良くないが、
私は彼女が、今にも倒れそうな枯れ木によじ登って狙撃する様を見た事があった。
ニャンクスのバランス感覚なら、車上射撃などお手のものだろう。私は人間なので人間に分相応な道具を用意する。
「ソーニャさん? これ」
私はポーチから幾つかの手榴弾を取り出すと、ソーニャに手渡した。中身は発火装置と火薬、魔晶石の粉末だ。
安全ピンを抜いてから、信管をどこかに叩き付ければ発火する。発火後数秒で爆発。
「直接ぶつける必要は無いけど、嫌がらせ程度に」
「煙幕かい」
ついでに魔晶石も渡してやった。彼女なら、土壇場でも素早く着火して魔法を撃てる筈だ。

「見えてきた」
後部座席で、大型魔導銃を構えたシャミィが呟く。
と同時に、敵機からの機銃掃射が始まった。轍を追うように、銃弾に雪が散る。
「やっぱり機関銃積んでんのか、チキショウ!」
「慌てるな、当たらなければどうという事は」
数発の弾丸が車体をかすめる。装甲の一部が弾けて飛ぶ、甲高い音がした。
運転席のレニーが急ハンドルを切ると、車が大きく蛇行する。機銃の火線が逸れる。ソーニャが短く口笛を吹く。
「アンタ上手いね」
「私にあまり期待しないで!」
口振りとは裏腹に、レニーは巧みにゴレムを操り、木や岩や、続く敵の銃撃をかわしていった。
しかし蛇行が続いた分、敵との距離も縮まる。
バーニア噴射の轟音を伴奏に、避弾傾斜の丸みを帯びた黒い人型の機体が現れる。
シャミィが撃つ。轟く砲声の後、やはり金属音。反撃に警戒したか、敵は速度を緩めた。
その隙にソーニャも立ち上がって煙幕弾を放った。白煙が敵の姿を再び隠す。
「ギルビーズさん、あれが麓まで追って来たら?」
レニーが心配げに尋ねてきたが、敵ゴレムは現段階でどうこう出来た程度のものでもない。
頼もしい返事などとても出来ない、一言で返す。
「燃料の心配をしましょう」

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